繰り返すが、「長寿麺」の商品化は1958年春。「チキンラーメン」はその年の8月。「長寿麺」のほうが、先に商品化された即席麺だった。
張氏は、1958年12月に「味付乾麺の製法」で特許を出願。安藤氏側は1959年1月になって「即席ラーメンの製造法」で特許を出願している。
だが、張氏の特許が認められる直前の1961年8月16日、日清食品は、張氏が出願中の特許申請を2300万円(現在の貨幣価値で3億円ほど)という高額で買い取った。
「うちの親父は、乱立して争うのが嫌いやった。安藤さんは、たしかに商才はあったんやろな。『チキンラーメン』という名前は『長寿麺』よりうまい。子供心に『こりゃ勝てん』と思ったわ(笑)。
だからこそ、安藤さんは、自分で作ったなんて言わんほうがいいですよ。台湾に鶏糸麺というものがあったし、親父もそこからヒントをもらったと思う。NHKのドラマでみんなが、即席麺を安藤さんの発明と信じてしまうのは、悲しいわな」(同前)
清川氏の証言について、日清食品ホールディングス広報部に聞いた。
「弊社の創業者である安藤百福が、インスタントラーメンの発明者であることに間違いはありません。安藤が発明した『即席ラーメンの製造法』に特許が認められた事実で証明されています。
『長寿麺』にかかわる『味付乾麺の製法』が、特許権の登録を受けたことは事実ですが、安藤の『即席ラーメンの製造法』と登録日が同一であることからも明らかなように、安藤の発明した製法とはまったくの別物です」
安藤氏は市場環境を整備するために権利を買い取ったが、「長寿麺」に関わる「味付乾麺の製法」では、「チキンラーメン」のような即席麺は作れない。台湾の「鶏糸麺」についても同様、というのが同社の主張だった。
NHK大阪放送局広報部は、「『まんぷく』は実在の人物をモデルとしていますが、激動の時代を共に戦い生き抜いた夫婦の愛の物語として、登場人物や団体名は改称したうえで大胆に再構成したフィクションとして制作・放送しています」と話す。
2018年度はチキンラーメンの60周年。『まんぷく』効果もあり、売り上げは過去最高ペースだという。
写真提供・清川信治氏
(週刊FLASH 2019年3月19日号)