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排尿・性機能を温存する「前立腺ガン」驚異の最新治療法
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2019.04.22 20:00 最終更新日:2019.04.22 20:00
人間だれしも、ガンになるリスクを抱えている。「備えあれば憂いなし」とはいうものの、闘病経験のない者にとっては、未知の恐怖がある。そこで、「男性が罹りやすいガン」のひとつである前立腺ガンの専門家を訪ね、最新の治療法について聞いた。
前立腺ガンの疑いがある場合、まず、泌尿器科で「前立腺生検」を受ける。これは一般的に、前立腺から12カ所の細胞を採取し、ガン細胞の有無を診断する方法だ。
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「この検査方法が世界標準ですが、私たちはさらに『前立腺内部の三次元的がん局在診断法』を取り入れています。MRI画像と超音波によるデータをもとに、前立腺のどの部分に、どれくらいの大きさのガンがあるのか、特定して診断します。
悪性度もかなり正確にわかるようになりました。私たちのチームが、2013年に日本で初めて導入しました」
そう語るのは、東海大学医学部付属病院・泌尿器科の小路直准教授。検査の結果、ガンが大きければ、これまで同様、手術や放射線照射などの処置をする。
もし、前立腺を取るほどの大きさでない、と判断されれば、「高密度焦点式超音波療法」を用いた「前立腺部分治療」を受ける方法もある。
「体への影響が少ない、超音波で治療しようというものです。ガン組織を焼いて壊死させることで、ガン以外の部分は、正常のまま温存できます。
排尿機能や性機能をできるだけ残したい、と考えるのであれば、この治療法が最適と思います」(小路氏・以下同)
「高密度焦点式超音波療法」を用いた前立腺部分治療は、肛門から超音波の機械を挿入し、ガンの部分に超音波を照射。「超音波高エネルギー」が、コンピュータにより正確に誘導され、医師はその様子をモニターで確認しながら、治療を進めていく。
「この方法であれば、麻酔入院を含め、2泊3日で退院が可能。体への負担も、手術や放射線より少なくてすみます。副作用として一時的に1カ月程度、尿が出にくくなることはあります。しかし、おむつを使わなければいけないような、尿漏れはありません」
勃起力を保てる可能性は、治療前に勃起できていた患者の80%ほど。手術で前立腺を取ってしまうと射精はできないが、部分治療なら、治療前に射精できていた人の60%が、射精できる状態を保てるという。
勃起も射精も、比較的高い確率で残せるのがメリットだ。所要時間は1時間程度、2泊3日の費用は、総額で95万円ほど。
「これからは、70代でも仕事をする時代です。排尿機能や性機能が残っているだけでも、患者のアクティビティ(活気)が変わってくると思います」
現在、MRIによる診断と、超音波を組み合わせた治療は、日本では小路氏のチームだけがおこなっている。男性としては、覚えておいて損はない。
(週刊FLASH 2016年4月16日号)