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七分袖Tシャツに懺悔「吉田戦車」ユニクロでの再販を切望

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2019.06.05 11:00 最終更新日:2019.06.05 11:00

七分袖Tシャツに懺悔「吉田戦車」ユニクロでの再販を切望

 

 この連載で、冬に「パジャマ」をとりあげた時に、「七分袖Tシャツ」のことをディスった。

 

「まちがって買った七分袖」「なんでこんな半端な袖のシャツを買ったのか」などと、ひどいことを書いているが、今、反省している。5月下旬の今、2枚ある七分袖Tシャツを毎日のようにヘビロテしているからだ。

 

 寒くもなく暑くもないこの時期に、Tシャツの上に一枚着るものとして実にちょうどいい。調理関係のユニフォームに七分袖デザインが多いように、台所仕事にもばっちりだ。

 

 

 1年の一時期、あまりにも空気のように着ているので、冬にはそのありがたみをすっかり忘れていた、ということか。アホだ。

 

「七分袖っていいものだなあ」と、しみじみ思うのは、自転車に乗っている時である。気温22度から26度ぐらいの、まだリュックを背負っている背中もそれほど汗ばまない季節の自転車乗りの上衣として、七分袖Tシャツは最高だ。  

 

 軽くまくった二の腕に当たる風が実に気持ちよく、ずっとこの季節だといいのに、と思いながら、久しぶりに毎日のように自転車に乗っている。袖の長い長袖Tシャツだと、まくった袖が若干モコモコして、軽快感に欠けるのだった。

 

 このスポーティな気持ちよさには既視感があるな、としばし考えたら、思い当たることがあった。剣道の道着だ。

 

 私は中学と、高校の途中まで、剣道部だった。高校の頃は不真面目で、途中でリタイヤしてしまったが、中学生の頃はけっこうまじめにやっていた。

 

 あの道着の袖の長さに似ている。思い返せば確かに七分袖だった。あっちは籠手(こて)、こっちは自転車用のグローブという共通点もある……、かもしれない。

 

 40数年前の、心身がピチピチしていた頃の体の記憶恐るべし。などなどと、七分袖Tシャツに土下座をしたいような気持ちで自転車に乗っていたら、ユニクロの店舗が目に入った。

 

 おお、私が着回しているよれよれの2枚は、ユニクロで買ったものだ。新しいのを買い足してもいいんじゃないか。よし買おう。……と思ったが、店内に七分袖Tシャツは見当たらない。

 

 長袖Tシャツはある。あと、女性用の七分袖Tシャツはあった。公式オンラインストアで確認してみると、男性用七分袖は、もう販売していないようだった。

 

「お前が悪口を書いたからだよ」と、着ている七分袖に言われた気がした。さすがに私のせいではないと思うが、なんともいえず後味が悪い。

 

 帰宅後、ネットで1枚、七分袖Tシャツを注文した。気温が上がって、また七分袖への愛を忘れ「なんでこんなの買ったんだ?」などと言い出さないよう、さわやかな気候のうちに届くことを願うばかりだ。

 

 今ある2枚を大事にしつつ、ユニクロのTシャツの動向は注視して、またいつか七分袖が売り出されたら、買い逃さないようにしようと思う。

 


よしだせんしゃ
マンガ家 1963年生まれ 岩手県出身 「ビッグコミックオリジナル」で『出かけ親』を連載中。妻はマンガ家・伊藤理佐さん。本連載の単行本『ごめん買っちゃった』(光文社)、『出かけ親 1』、『忍風! 肉とめし 2』(ともに小学館)が好評発売中!

 

(週刊FLASH 2019年6月18日号)

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