そしていまや、新聞のコア読者層である団塊の世代は、全員が年金受給者になった。
「新聞が、『若者や将来世代が多額の損失を被らないように、高齢者世代は年金の一部をあきらめよう』などと書けるはずがありません。
また、読者に団塊の世代が多い、『週刊現代』や『週刊ポスト』、『週刊新潮』や『週刊文春』などの男性週刊誌も同じです。ただでさえ減っていく読者を、さらに減らすような記事は、いっさい書けなくなっているのが実態です。
本来、リベラルなメディアこそが、『こんな年金制度を放置してきた高齢者世代に責任がある』『貧困高齢者対策は高齢者世代内の再分配でやれ』と書くべきだと思うのです」
いまや多くのメディアで “タブー” と化した年金問題。「人生100年時代」といわれる現在、団塊の世代が90代になる2040年には、就職氷河期世代も前期高齢者(65歳以上75歳未満)となり、日本の高齢化率は35%に達する。
つまり、現役世代1.5人で、高齢者1人を支えることになる。
「社会保険料は、今後ますます上がっていくでしょう。給与明細を見ればわかるとおり、名目では賃金が増えても、手取りは減っています。社会保険料が増えれば会社負担分も重くなり、会社も利益を出せなくなっていきます。
国民年金や国民健康保険は天引きできませんから、保険料が上がると払えなくなって、『これなら生活保護のほうがマシ』と考える人が出てきます。
当然、ちゃんと保険料を払ってきた人は、『冗談じゃない』と怒り出して、世の中はますますギスギスしていくことになります。これが、令和の最初の20年で起きることでしょう。それでも、団塊の世代の年金だけは守られるでしょうが」
額に汗して働いても、割を食う将来が待つサラリーマンたち。どうすればいいのか。
「どのように計算しても、年金は受給開始を『70歳まで繰り下げて受け取る』のが有利です。これで年金額が65歳受給に比べて、42%も増えます。
平均余命から受給総額を計算すると、60歳に繰り上げて受け取ったら3300万円、70歳まで繰り下げれば4400万円で、1100万円も違います。
『年金は繰り上げてもらえ』と書く週刊誌もありますが、1000万円もの損失を正当化できる理屈などありません。『年金をすぐにもらえ』と書くほうが、読者受けがよかったのかもしれませんけどね」
さらに、こう続ける。
「平均寿命が急速に伸びるなかで、先進国はどこも『生涯現役』社会に向かっています。そう考えれば、『人生100年時代』の人生設計は、『長く働いて年金を繰り下げて受給する』以外にありません。
定年後もずっと働いて稼げるように、ネットワークやスキルを磨いておくことが大事なのではないでしょうか」
自分の身は、自分で守るしかない。
(週刊FLASH 2019年7月23・30日号)