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大阪勢が奮闘中「カレーチェーン戦争」勝つのはどこだ?

ライフ・マネー 投稿日:2019.10.04 16:00FLASH編集部

大阪勢が奮闘中「カレーチェーン戦争」勝つのはどこだ?

 

 いまや国内に1264、海外に180店舗と他の追随を許さない、外食カレーの王国「カレーハウスCoCo壱番屋(以下、ココイチ)」。競合チェーン店より2桁多い店舗数を誇り、その強さは明らかだ。

 

 カレー総合研究所代表の井上岳久氏が、ココイチについて解説する。

 

 

「普通なら、隠し味を足したりスパイスを効かせたりと足し算をしがちなのに、引き算を究めたのがココイチのカレーなのです」

 

 カレー研究家のスパイシー丸山氏が語る。

 

「ハウス(食品)のルーがベースだと思うのですが、スパイスの匙加減に秘訣があるのでしょう。僕はよく有名店のカレーの再現を試み、かなりいい線いくんですが、ココイチだけは、わかるようでわからない(笑)」

 

 日本人の最大公約数的な好みを追求するココイチ。であれば、他チェーンは多少は変化球を投じる必要がある。

 

「いま、ココイチの対抗馬を目指すチェーンの多くは、ご当地色を前面に出しています。特に、金沢カレー市場はたいへん大きい」(丸山氏)

 

 国内に72店舗を展開する業界2位の「ゴーゴーカレー」は、2004年開店。金沢カレーの代表選手で、すでにアメリカとブラジルに9店を展開。海外へのさらなる飛躍を視野に、着実に伸長している。黄色地にゴリラのトレードマークが配された看板からも、若者向けに “ガッツリ” を志向しているのは瞭然だ。

 

 ステンレス皿に控えめによそわれたチョコレートのようなルーは、きわめて濃厚な風味。むしろ中濃ソースが垂らされたカツに主役感があり、これをフォークか先割れスプーンで食べる。金沢カレーの代表選手だ。

 

 一方、金沢カレーの元祖である「カレーのチャンピオン」は1961年に誕生し、全国に35店を展開する。石川県内のスーパーや空港でもレトルトが販売され、ご当地密着感が強い。

 

「2チェーンを合わせれば、100店を優に超える一大勢力になっています」(丸山氏)

 

 金沢カレーの次にきているのが、大阪発の甘辛カレー。ひと口めは玉ねぎやフルーツ由来の甘さに驚くが、やがてじわじわ辛味が押し寄せるタイプで、1947年創業の老舗「インデアンカレー」の味が雛形とされる。

 

「カレーうどんの得正」が1995年に始め、大阪を中心に54店を展開する「上等カレー」が知られるが、オーナーが大阪出身の「日乃屋カレー」も勢いがある。

 

 日乃屋の創業はゴーゴーと同じ2004年で、すでに61店舗と規模でも肉薄する。大別すれば現在、この金沢カレーと大阪甘辛カレーがココイチを追う二大勢力だ。

 

 ただ、よく煮込んで甘さが先に立つという点では、「100時間カレーB&R」も近いポジション。2013年に東京・武蔵小山に1号店を出して以来、関東一円で着実に店舗を増やす。

 

「50店舗を超えられるかが、チェーン展開のひとつのカギです。しかし、そのハードルはかなり高いですね」(井上氏)

 

 実際、1983年より大阪を地盤に、東京でも1店を構える「サンマルコカレーハウス」は、一時期に比べれば、だいぶ店舗数を減らし、現在は24店舗。しかし、色とりどりの薬味も目に鮮やかな、おしゃれな欧風カレーはシニア層にもファンが多い。

 

 ご当地ブームに背を向けるのが、1968年開店の老舗「レストラン京王」の「curryshop C&C」。京王線沿線に限らず、20店あり、ココイチ以上に黄みがかった、見た目どおりの懐かしい味わいだ。

 

 俳優の筒井道隆や六角精児のように、「世の中でいちばんうまい」「侮れないうま味がある」という熱狂的なファンに支えられている。

 

 台風の目となっているのが、2002年から珍しくインドカレーをチェーン展開する「ターリー屋」だ。経営者は日本人で、FC店にはネパール人のスタッフごと派遣するシステムが受け、店数を30に増やした。

 

 群雄割拠のカレー業界だが、井上氏はこうも語る。

 

「これまでも食農のリトルスプーン、吉野家のPOT&POTなど、大手ファストフードや食品メーカーが挑んでは、“屍の山” と化しているのがカレーチェーン業態です」

 

 ココイチ一強のなか、2位争いは熾烈を極めているのだ。以下では、カレーチェーンを店舗数のランキング形式でまとめて紹介する。


【日本のカレーチェーン「店舗数ランキング」】
●1位:CoCo壱番屋/1444店(1号店:愛知・清須)
 iタウンページで国内のカレーショップを検索すると、約4700件ヒットするが、うちCoCo壱番屋のヒット数は約1260。じつに27%がココイチなのだ。

 

●2位:ゴーゴーカレー/81店(1号店:東京・新宿)
 オーナーは大の松井秀喜ファンだが、キャラクターは版権の関係でゴジラを使えず、ゴリラになった経緯がある。本社や1号店は東京で、2005年に金沢に出店を果たしている。

 

●3位:日乃屋カレー/61店(1号店:東京・湯島)
 社長の両親が大阪で経営していた町中華がルーツ。カレーライスは祖母の味を受け継いでおり、まったりした甘さの中に八角が香る。2018年に播磨店をオープンし、関西初進出。

 

●4位:上等カレー/54店(1号店:大阪・福島)
「大のカレー好き」という社長が、うどん専門店を振り出しに、カレーうどん、カレー専門店の順に出店。上等カレーのほか、「カレーライス専門店Tokumasa」の6店も含めた。

 

●5位:カレーのチャンピオン/35店(1号店:石川・金沢[閉店])
「洋食タナカ」として創業後、カレーに特化し、「カレーのタナカ」に。常連客の銀行員と共同で「ターバンカレー」を立ち上げるが、2年後に関係を解消。「チャンカレ」の略称で人気に。

 

●6位:ターリー屋/30店(1号店:東京・新宿)
「インド定食」を標榜し、本場よりややマイルドなカレーを提供。近年になって積極的にフランチャイズ展開。「ゴルゴンゾーラチーズナン」など、中味入りのナンが好評で、居酒屋利用も可能だ。

 

●7位:サンマルコカレーハウス/24店(1号店:大阪・梅田)
 関西ではCMも打つ、「KYK」が運営。日本に最初に伝来した、正統派ヨーロピアンカレーと銘打つが、多様な限定カレーも提供する。東京には池袋の東武百貨店のみに出店する。

 

●同8位/20店
・curryshop C&C(1号店:東京・新宿)
 真っ黄色なポークカレーがベースのベーシックなカレーだが、トッピングはかなりの種類がある。なにより安く、2種類をのせても600円程度で抑えられることもある。

 

・100時間カレーB&R(1号店:東京・武蔵小山[閉店])
 煮込みに煮込んだカレーで、「神田カレーグランプリ」でV2を達成。同グランプリで殿堂入りした日乃屋カレーに続き、注目を集める。欧風カレーに金沢カレーの濃度を持たせた印象だ。


※店舗数は国内、海外の合計。屋号が異なる場合でも、カレーライスをメインにした業態すべてを含みます

 

取材&文・鈴木隆祐
イラスト・まるはま

 

(週刊FLASH 2019年9月3日号)

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