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【食堂のおばちゃんの人生相談】39歳・派遣社員のお悩み

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2019.11.15 11:00 最終更新日:2019.11.15 11:00

「食堂のおばちゃん」として働きながら執筆活動をし、小説『月下上海』で松本清張賞を受賞した作家・山口恵以子。テレビでも活躍する山口先生が、世の迷える男性たちのお悩みに答える!

 

【お悩み/ああ損さん(39)派遣社員】

 

 寒くなってきて外に出る気がせず、ネットで買い物ばかりしている。届いた実物が画面とイメージが違っても、返品が面倒でそのままタンスの肥やしに。無駄遣いだと思うが、また違うものを買ってしまう。

 

 

【山口先生のお答え】

 

 お気持ちはよくわかります。私も松本清張賞を受賞するまで、洋服はもっぱら通販でした。今は、なるべくご近所の店で買うようにしていますが……ささやかな買い物でも喜んで下さるので。

 

 で、実物がイメージと違うことって、あるんですよ。一番多いのは素材の質感と色合いですね。そして、着てみたら似合わなかった。これは私が悪いのですが、以前なら似合ったはずの服が、似合わなくなっちゃった。頭の中のイメージを、実年齢が裏切るのですね。残酷だわ。

 

 私も実は、買ったけど着ない服があります。それでもやっぱり、あんまり代わり映えのしない服を買ってしまうのは何故でしょう? きっと私もあなたも、買っているのは品物ではなくて、精神的な満足なんですよ。品物ではなく、買うことに意義があるんです。

 

 これは代償行為といって「欲求を本来の対象とは別の対象に置き換えることで充足する」行動です。

 

 代償行為には転移(例:父への憎悪を抑圧してより攻撃しやすい教師に向ける)・補償(例:勉強が出来ないのでスポーツに打ち込む)・昇華(例:性欲をスポーツで発散する)と三種類あるのですが、私たちの場合は昇華ですね。

 

 映画やコンサートやゴルフの代わりに買い物するんです。満たされぬ欲求を買い物で埋めてるんです、きっと…………トホホ。

 

 でも、代償行為が上手くいかないと適応障害になってしまいます。だから安心して、堂々と胸張って買い物続けましょうね。

 

やまぐちえいこ

 

1958年、東京都生まれ。早稲田大学文学部卒。就職した宝飾会社が倒産し、派遣の仕事をしながら松竹シナリオ研究所基礎科修了。丸の内新聞事業協同組合(東京都千代田区)の社員食堂に12年間勤務し、2014年に退職。2013年6月に『月下上海』が松本清張賞を受賞。『食堂メッシタ』『食堂のおばちゃん』シリーズ、そして最新刊『夜の塩』(徳間書店)が発売中

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