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『江戸前の旬』原作者が語る「イメージが変わる最高の養殖魚」
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2020.03.09 16:00 最終更新日:2020.03.09 16:00
マンガ雑誌『週刊漫画ゴラク』(日本文芸社)で、1999年から今も連載が続く、“老舗” の寿司漫画『江戸前の旬』。寿司の具である“タネ” のエピソードを中心に、すでに100巻が発売されている。原作者の九十九森先生が、「寿司ウンチク」を存分に語ってくれた。
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「成長段階によって違った味わいを楽しめるのが、出世魚。江戸前で一番メジャーなのは、シンコ→コハダ→ナカズミ→コノシロでしょう。ただ。江戸前で使うのは、シンコとコハダだけ。
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ナカズミになると、けっこうデカくて20cmぐらいあり、繊細な味わいがなくなってしまう。コノシロは、関西とか九州のほうでは、焼いたりして食べられています。小骨が多いので、東京では『好んで食べないけど、寿司にしかならない』と言われている」
しかし、コノシロが東京で食べられているケースもある。
「じつはスーパーに、コノシロが売られています。『コハダの酢漬け』と売られているものが、じつはコノシロなんですよ。理由は単純で、コハダは高くて、コノシロは安いから。
銀座の高級寿司『太一』の親方も、14~15年前に『逸喜優』(銀座)に勤めていた時代、コノシロを出していました。銀座・交詢ビルの店舗を任せられていたころ、1人前いくらの “お決まり” が5000円~7000円で、高級食材が使えなかった。だから、いちばん味がコハダに近い、コノシロの尾の部分だけを選んで使っていたんです。
親方は、知り合った当時から、『いかに安いコストで、一流のものを作るか』という工夫が面白い人でした。回転寿司ぐらいしか出していなかったサンマを使ってみたり、サバも燻製にしてみたり。それで、漫画にも登場させていましたね。
ただ蛇足ですが、私は燻製には否定的でした。いろいろ調べて試してみて、『燻製はご飯に合わない』ということがわかったから(笑)」
出世魚のなかには、なかなかお目にかかれない、幻の魚もある。
「カンパチは、ショッコ→シオゴ→カンパチ→アカバナ(80cm以上)と成長していきますが、天然ものだと2mを超えるアカバナは、ほとんど釣れません。ですから、東京ではほとんど知られていませんし、お店でお目にかかれるものは、ほとんどが養殖です。
ちなみに国産の魚の『天然か養殖か』は、味でわかります。養殖は、エサでよく与えているサバの味がするんですよ。それから、わずかに脂がくどくて、青魚っぽい匂いがします。
ところが先日、例外に出会いました。カンパチやアカバナを育てている鹿児島の『小浜水産』という会社を、寿司屋の親方から教えてもらいました。
そこの魚を、グループの飲食店で出してもらったんですが、サバ臭さがまったくなくて、しかも握りから肉汁がジュースみたいに吹き出てくる。『これが養殖が、すごいな!』と、びっくりしました。養殖への考え方がガラッと変わった、“運命の出会い”でしたね」
つくもしん
青森県出身 漫画原作者 作画担当のさとう輝先生とコンビで週刊漫画ゴラクで連載中『銀座「柳寿司」三代目 江戸前の旬』、スピンオフ作品の『寿司魂』『旬と大吾』『ウオバカ!!!』などを執筆。メディアへの出演は、連載20年で「ほとんどない」そう
(C)九十九森/さとう輝・日本文芸社
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