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親が倒れてからでは遅い「介護保険の申請」必勝ポイントは…
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2020.03.09 20:00 最終更新日:2020.03.09 20:00
「現役世代の方に聞くと、95%が『将来の親の介護に不安がある』と答えます。でも知識はないし、自分で調べてみようとする人も少ない。皆さんにとって介護は、見て見ぬふりをしたいもの。でも、知ることを先延ばしにしてもなにも得しません」
「いつか直面することになる親の介護」に警鐘を鳴らしてくれたのは、「親ケア.com」の運営を通じて介護情報を発信する、介護アドバイザーの横井孝治氏だ。親が倒れてから慌てることがないよう、横井氏に親の介護の“キホンのキ”を解説してもらった。
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「まずは、介護の公的サービスを利用するまでの流れを知っておきましょう。相談の窓口となるのが、親が居住する各市区町村の『地域包括支援センター』です。ここでの相談は、すべて無料です」
地域包括支援センターとは、厚生労働省が決めた名称だが、もっとわかりやすい「高齢者あんしんセンター」など、各市区町村が独自に愛称をつけているところも多い。
「センターでは、25問のチェックリストが用意されていて、親の日常生活や認知症の状態を調べてくれます。そこで要介護認定をしたほうがいいと判断されれば、申請の手続きをすることになります。
あらかじめ親の主治医に、意見書を書いてもらえないか聞いておくと、話はスムーズです」
要介護まではいかなくとも、生活能力が低下していると判断されれば、訪問型や通所型の「総合事業」と呼ばれるサービスを使うことができる。
次は、いよいよ介護保険の出番となるのだが、介護保険を利用するには「要介護認定」が必要となる。これは、「親がどの程度介護サービスが必要な状態か」というランクづけで、それにより保険の支給限度額が変わってくる。
たとえば、「要介護1」と認定されると、支給限度額は月額16万7650円で、自己負担額はその1割(所得により2割、または3割負担の場合もある)となる。そして、もっとも重篤と判断された「要介護5」の場合、支給限度額が36万2170円となる。
この差を考えれば、要介護認定がどれほど大切なものか、わかるだろう。具体的な介護プランも、限度額をもとに作成される。
「申請をすると、後日、訪問調査がおこなわれます。要介護者への聞き取り調査ですが、その際、家族も立ち会うことが大事です。親だけで調査を受けると、『介護なんて必要ない』と言いだしたり、必要以上に元気に振る舞うなどして、正確な調査がおこなわれなくなるケースが多いのです」
要介護度が実際の状態よりも低く判定されれば、「本当に必要なサービスを受けられない」という事態もありうる。
「調査は1時間程度。そのあいだに50以上もの質問があるので、事前の準備は必須です。前もって、どんなことを聞かれるか調べ、必要事項はメモを作っておくことも大事です」
要介護認定のチェック項目は、インターネットなどで調べることが可能だ。「質問には、ありのままの状態を正確に伝えるべきだ」と、横井氏は言う。
「要介護度を実際よりも高く判定してもらったほうが、保険の限度額も上がり、得なような気もしますが、そんなことはありません。要介護度が上がると、同じようなサービスでも単価が上がるので、たんなる得にはならないのです」
要介護認定の申請をしてから、認定を受けるまで、1カ月ほどかかる。親が突然倒れ、手厚い介護が必要となってからでは遅すぎる。横井氏は、「元気なうちに親と距離を縮めておき、寝たきりになる前に申請を出せるようにしておくこと」が大切だという。
「親がどんな様子なのか知っていれば、突然倒れるのを防げるかもしれません。簡単な生活の手助けが必要になった段階で申請をしておくことで、適切な介護を受けられるようになります。
その後、重篤になったら、再度申請を出せば大丈夫。だから、週に1回・1分でいいので、電話で話す機会を作ってください。できれば、なんでも話せる関係性をつくっておきましょう」
介護は、“先手必勝”と心得るべし。次のページでは、要介護認定申請の流れと、その際の失敗&トラブル例を紹介する。