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【食堂のおばちゃんの人生相談】58歳・自営業のお悩み
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2020.04.03 11:00 最終更新日:2020.04.03 11:00
「食堂のおばちゃん」として働きながら執筆活動をし、小説『月下上海』で松本清張賞を受賞した作家・山口恵以子。テレビでも活躍する山口先生が、世の迷える男性たちのお悩みに答える!
【お悩み/匿名希望さん(58)自営業】
実家の片づけをしていたら、学生時代に好きだった「ハイ・ファイ・セット」のレコード『フィーリング』が出てきました。初めてつき合った彼女と聴くために、人生で初めて買ったレコードで、聴いていて思わず涙が出ました。
そして年を取るにつれ、そんな思い入れのある歌がめっきり少なくなってしまったことに、ふと気がついて、哀しくなりました。
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【山口先生のお答え】
私もです。街中やお店で昔好きだった曲を耳にすると、その頃の自分の境遇や胸の思いが蘇ってきて、切なくなります。
以前布施明さんが雑誌で「歌には命が2回宿る。1回目はそれが流行した時。2回目はその歌を思い出した時」と語っていましたが、まさにその通りだと思います。
そして、私も年を取るにつれ、思い入れのある歌がめっきり少なくなりました。それは私の感性が古びたせいもあるでしょうが、それ以上に、歌そのものが変質したように思えるのです。
1990年代以降の歌には、ヒットしたのに聴き覚えのないものが沢山あります。そういう歌はほとんど、メロディが複雑で口ずさめない、歌詞の言葉数が多すぎて身も蓋もない、この二つの特徴があります。
この原因の一つは、楽器でなくコンピューターで作曲するからでしょう。これについてはいつか詳しく書きますが、流行歌は昭和と共に滅んだのだと思います。だからこそ、私もあなたも、好きな歌を思い出しましょう。
やまぐちえいこ
1958年、東京都生まれ。早稲田大学文学部卒。就職した宝飾会社が倒産し、派遣の仕事をしながら松竹シナリオ研究所基礎科修了。丸の内新聞事業協同組合(東京都千代田区)の社員食堂に12年間勤務し、2014年に退職。2013年6月に『月下上海』が松本清張賞を受賞。『食堂メッシタ』『食堂のおばちゃん』シリーズ、そして最新刊『夜の塩』(徳間書店)が発売中