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「『パパ活』ブームはこうして作られた」仕掛け人が語る

ライフFLASH編集部
記事投稿日:2018.10.28 16:00 最終更新日:2018.10.28 16:00

「『パパ活』ブームはこうして作られた」仕掛け人が語る

 

 若い女性たちの間で「パパ活」が流行しているという。「パパ活」とは、「年上男性とデートして、その見返りに金銭的な援助を受ける」というものだ。肉体関係は必須ではない。

 

 舞台になっている「交際クラブ」とはいったいどのような組織で、どのような人たちが運営しているのだろうか。

 

 

 東京都内で届出を出して営業している交際クラブの数は、おおむね60〜100店舗の間だと言われている。届出を出さずに個人で活動している「手配師」と呼ばれる人は50名程度いるらしい。全国的に見れば、少なくとも数万人の男女がこの世界に足を踏み入れ、それぞれの本音や下心を隠しながら、日夜デートを重ねている計算になる。

 

 実は、「パパ活」という言葉は、交際クラブ最大手の『ユニバース倶楽部』(本社・東京)によって戦略的につくり出され、戦略的に広められた「パワーワード」である。『ユニバース倶楽部』の代表を務める木田聡さんに、「パパ活」という言葉が生まれた内幕を伺った。

 

 木田さんは都内の音大を卒業後、フリーのトランペット奏者として式場や遊園地、楽団で活動していた。その後、テーマパークのステージマネージャーを3年間務めた後、そろそろサラリーマンをやりたいなと考えて、営業職で仕事を探した。採用された会社は、AVのプロダクションだった。

 

「当時はテーマパークの建前の世界にうんざりしていました。その反動もあって、AVって面白いなと考えたんです。人間のハッピーにつながる点では同じだと思ったので」

 

 営業職として入社して、最終的にはウェブ広告の担当部門に入った。その時に社内で交際クラブを立ち上げる企画があったのだが、担当者が不祥事を起こして解雇されてしまい、宙ぶらりんになった事業を木田さんが買い取り、2011年11月に社内独立という形でスタートさせることになった。

 

 前任者の時点で60名の女性が登録していたのだが、オープンが延期になったことも影響して、木田さんに運営がバトンタッチされた後は、わずか1名しか残っていなかった。

 

「それまでの仕事の中で女性の求人が難しいということは知っていたので、まぁそういうものだろう、と腹をくくりました。新しく女性を集めるための手段としては、元々担当をしていて得意分野だったウェブ広告を使いました。アドワーズ(検索連動型広告)は当時まだどこの交際クラブもやっていなかったので、こっそり試してみたり。

 

 あとはスカウトマンとのつながりですね。当時はまだスカウトを規制する条例がなかったので、内心『怖いな』と思いながら、日々彼らとやりとりしていました。ただ、スカウトマンも交際クラブという業態自体を知らないんですよ。

 

 キャバクラだと、女の子が10日出勤すれば、スカウトに10万円入るというルールがある。でも交際クラブは、一人の男性に紹介したら1万円で終わり。利幅が薄いので、スカウト的にはうまみがない。

 

 それでも『風俗はやりたくないけど、キャバクラの人間関係の中で働くのは無理』という女性の層は確実に存在する。そういったスカウト的にはどうにもできない女性を、試しにこちらに紹介してもらえないかと提案しました。歯車がうまく回り始めた第一歩ですね」

 

「パパ活」という言葉は、スタッフとのマーケティング会議の中で生まれたという。

 

「スタッフ全員、『交際クラブ』という言葉が大嫌いだったんですよ。この言葉を使って女性求人を打っても、悪い意味で何でも知っているような女性しか来ない。僕たちが欲しいのは、もっとピュアな女性の層です。

 

 自分の夢に向かって頑張る女性が、クラブで出会った男性からサポートを受けて、夢を叶えていくといった世界にしたい。でも、そこに『交際クラブ』といういかがわしい言葉の壁が立ちはだかっている。

 

 だからこそ、新しい言葉を使うことで、これまでの交際クラブのイメージを切り替えようと思ったんです。そうした会議を重ねる中で生まれた言葉が『パパ活』でした」

 

「パパ活」という言葉は「婚活」や「就活」と同じような語感であり、口に出しやすいキャッチーな言葉だ。どことなくユーモラスな響きもある。

 

 しかし、一つの会社の会議室で生み出された言葉が、ここまで多くの人に検索されて話題になり、メディアに取り上げられ、人口に膾炙するようになるまでには、どのような仕掛けがあったのだろうか。

 

「パパ活という言葉がここまで広まったのは、僕のおかげ……と言いたいところですが、そうではありません(笑)。アフィリエーターの力です」と木田さんは断言する。

 

 アフィリエーターとは、自らが運営するホームページやブログなどに提携先企業(広告主)の商品広告を掲載し、それによって成果報酬を得る人を指す。

 

 ネットで商品名やサービス名を検索すると出てくる紹介記事や体験記事の多くは、アフィリエーターによって作成されたものだ。記事を読んだ人が文中のリンクやバナーをクリックし、それが商品の購入やサービスの成約に結びつくとアフィリエーターに報酬が支払われる、という仕組みになっている。

 

「彼らはある種の天才です。億単位のお金を稼ぐ人もいる。アフィリエイト(成果報酬型広告)でどのジャンルが稼げるかというと、クレジットカード、サプリメント、そして出会い系サイトのようなマッチング系サービスです。

 

 成果報酬はそこそこ高くて、1件の成果につき数千円もらえる。例えば出会い系サイトを紹介する質の高い記事を書いて、それを読んだ人が大勢そのサイトに登録した場合、かなりの収入になる。出会い系のアフィリエイトで稼いでいる人は大勢いました。

 

 でも『出会い』というワードでは、もはや誰も食いつかない。アフィリエーターが一番困っていたのは、まさにそこです。『出会い』という言葉以外で、多くの人の注目を集められるようなパワーワードはないかな……と、みんなが探している時期に出てきたのが『パパ活』というキャッチーな言葉だった。

 

 交際クラブに登録する女性たちは、それぞれの個人的な背景ももちろんありますが、お金に全く興味がないという人は絶対にいない。そうした女性たちを集めるフックとして、『誰でも簡単に楽して稼げる』『肉体関係なし』というイメージのある『パパ活』という言葉が、非常にうまく機能した」

 

 パパ活が流行した理由については、どうしても「男女間の経済格差」「中間層の没落」「若者の貧困」という社会学的な理由だけで分析・説明してしまいがちである。しかし現実的に見ると、流行の背景には、成果型報酬で稼ぐことに心血を注ぐアフィリエーターたちの存在があったのだ。

 

 

 以上、坂爪真吾氏の新刊『パパ活の社会学~援助交際、愛人契約と何が違う?』(光文社新書)を元に再構成しました。パパ活に関わる女性・男性へのインタビューを敢行し、自由恋愛の最果ての地「父なき時代」の現在を克明に描き出します。

 

●『パパ活の社会学』詳細はこちら

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