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吉田戦車「家族でひっそり」七輪を楽しむも子供は無関心
連載FLASH編集部
記事投稿日:2018.07.04 07:00 最終更新日:2018.07.04 07:27
子供が小さいころは、子供のお友だち家族と家飲みをすることがけっこうあった。
子供たちを自由に遊ばせながら親が長時間飲み食いという、外食ではなかなかしづらいことができるからだ。よそにおじゃますることもあったし、うちでやることもあった。
ちなみに、最初は男親もまぜてもらえたが、次第に「女親だけで、微妙なあれこれを気兼ねなしにしゃべり合う会」へと変貌していき、大人の男は排除された。
しかし、うちでやる場合は私がいるので、基本、お父さんたち込みの宴会である。
せっかく庭的なスペースがあるんだし、肉でも焼こうと妻が買ったのがバーベキューグリル。1万3650円。ネット販売のページには「欧州から来た、本格的バーベキューコンロ」とあるが、欧州のどこ製かは不明。
これは、あたりまえなのだが、炭をガンガン放りこんで肉をどんどん焼くと、煙がもうもうと上がるのだった。
建て込んだ住宅地ではかなり異常な感じの白煙。ハラハラしておちついて楽しめない。おとなりさんなども巻きこんでなんとか2度ほど使ったが、その後出番はない。
しかし、炭火は楽しみたい。あたりが暗くなるにしたがい、赤みを増してゆく炭火の美しさは、何ものにも代えられない娯楽である。
そこで私が買ったのが、七輪だ。石川県の天然珪藻土の手づくり品。網と、網を乗せる高さ調整リングをつけて、数年前で1万2000円ぐらい。
煙が上がりすぎるのを防止するため、サンマ、カルビ、鶏もも肉などは禁止した。「なんのために買ったんだ!」という妻の声もあったが、スルメやエリンギや長芋を焼くだけでじゅうぶんじゃないか。
まあ、宴会となるとさすがにそうもいかず、シシャモやウインナーや、それほど脂っぽくない肉を焼いて、客にふるまった。
宴会場所のメインは室内なので、寒い時は私だけが「七輪番」となって、黙々と軒下で焼く。たまに子供たちやお父さんたちが炭火を見にきて、相手をしてくれた。
子供たちにはキャンプのバーベキューのように、串に刺したマシュマロをあぶって食べさせるのだが、焼きすぎて七輪の縁にベチョッと落とされたときは、「おれの七輪になんてことを!」と、大人げなく声をあげた。
そんな感じで毎年2、3回は七輪を稼働させていたが、子供が小学生になると、そういう宴会は減っていき、今ではほとんどなくなった。
今年も、まだ蚊が出ないGW中に、家族でひっそりと七輪を楽しんだ。ちょっと大きめのヒビが入ってしまっているが、金具でしっかりしめつけられているし、まだまだ使えるだろう。
子供は屋内で一人でマンガを読んだりしていて、締めのマシュマロ以外はどうでもいいようだった。妻とゆるゆる飲みながら、椎茸やラムチョップを焼いた。
よしだせんしゃ
マンガ家 1963年生まれ 岩手県出身 『伝染るんです。』『ぷりぷり県』『まんが親』『おかゆネコ』など著作多数。「ビッグコミックオリジナル」で『出かけ親』、「ビッグコミックスピリッツ」にて『忍風! 肉とめし』を連載中。妻はマンガ家・伊藤理佐さん
※本誌連載では、毎週Smart FLASH未公開のイラストも掲載
(週刊FLASH 2018年7月10日号)