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ジャパンレッドの町並みで明治時代にタイムトリップ/女子アナ横井弘海の「エンタメ時間」

芸能・女子アナFLASH編集部
記事投稿日:2022.10.01 16:00 最終更新日:2022.10.01 16:00

ジャパンレッドの町並みで明治時代にタイムトリップ/女子アナ横井弘海の「エンタメ時間」

ボンネットバスの走る吹屋の町並み

 

 10月11日から12月下旬まで、全国旅行支援(全国旅行割)を実施すると観光庁が発表しました。何年も遠出をせず、家で我慢していた方も多いことでしょう。季節もよくなってきましたし、久しぶりにどこかに旅行しませんか?

 

 今、私のおすすめは「日本遺産」です。先週、開催された「ツーリズムEXPOジャパン2022」で、「日本遺産」という言葉を知りました。地域の歴史的魅力や特色を通じて、その文化や伝統を語る「ストーリー」を文化庁が認定するもので、2015年に創設。すでに全国100を超える日本遺産が認定されました。

 

 

 先日、そのひとつで、岡山県高梁市に残る「ジャパンレッド発祥の地 -弁柄(べんがら)と銅(あかがね)の町・備中吹屋(ふきや)-」を訪れる機会がありました。

 

「ジャパンレッド」という言葉の響きにドキッとし、町全体がベンガラ色の外観で統一された写真を見て、すっかり行きたくなってしまったのです。

 

 吹屋は岡山県中西部の吉備高原の丘陵地にあります。日本遺産に認定された備中吹屋のストーリーはこんな概要です。

 

「標高約500mの高原上に忽然と出現する『赤い町並み』。かつて国内屈指の弁柄と銅生産で繁栄した鉱山町・吹屋である。吹屋で生産された赤色顔料の弁柄は全国に流通し、社寺などの建築や九谷焼・伊万里焼や輪島塗等、日本を代表する工芸品を鮮やかに彩り、日本のイメージカラーである『ジャパンレッド』を創出した。

 

 富を得た商人たちは赤い瓦と弁柄で彩色された格子で家々を飾り、今も残る町並みは、独特の景観を醸し出し、訪れる多くの人々を魅了している。また周辺には、弁柄工場跡や銅山跡等も残り、『ジャパンレッド』を創出した往時の繁栄をしのばせている」

 

 JR岡山駅から最寄りの備中高梁駅まで特急で約35分。そこから車で40分。岡山桃太郎空港からは車で約1時間半。空港との往復には期間限定の臨時バスが片道2時間で運行されています。このバスは便利で楽しそうですが、今回はレンタカーで行きました。

 

 高速を降りた後は、山間の険しい道をずっと進みます。吹屋への方向を示す案内は出ているのですが、少しドキドキ。でも、のどかな自然あふれる景色のなかに、ときどきポツンと見える立派なお宅が印象的でした。「あの家もベンガラで繁栄したのかなぁ」「なかなか赤い町が見えてこないな」などと思いながら、山道を進みました。

 

 山を越えると、突然、少し古びた赤褐色の瓦で覆われた屋根にベンガラ格子や赤く塗られた外壁の家々が立ち並ぶ「ジャパンレッドの町」が出現しました。

 

 少しイメージは異なりますが、ペルーの天空の町マチュピチュが、山の中に突然現れるのと似ているかも。

 

「おー!」という歓声。レトロなボンネットバスが走っていたり、古民家のギャラリーで展覧会がおこなわれていたり、私が知らなかっただけで、おしゃれな観光地です。

 

 観光客は、みなさん、ゆっくり散策を楽しんでいます。赤茶色の町に酔ったのか、いつのまにか明治時代にタイムスリップしたような気分になりました。

 

 日本遺産を構成する文化財はバラエティに富み、吹屋の隆盛をさまざまな角度で示しているようです。

 

 約1.5kmの建物保存地区、2012年に閉校するまで現役最古の木造校舎だったレトロ感あふれる旧吹屋小学校、備中神楽など人々のくらしを伝えるものから、映画「八つ墓村」(1977年)のロケ地として有名になった旧広兼家住宅、弁柄の製造に携わった旧片山家住宅(国重要文化財)など文化財級の住宅まで。

 

 そして、往時の繁栄をしのばせる吉岡銅山跡、トロッコ道跡、弁柄の製造工程を概観できるベンガラ館など。

 

 物資が行き来する道路「吹屋往来」に寄り添う町並みからは、往時の賑わいが聞こえてくるようです。繁盛した家々が、その財力で職人を招いて建てた赤い外観の豪邸。それぞれの家の前には、かつてどのような商売をしていたのかを説明する札がかけられていました。

 

 少し離れたところには笹畝坑道があり、銅の原料となる黄銅鉱とベンガラの原料となる硫化鉄鉱を産出した坑道の一部が公開されていました。

 

 頭をかがめなければ通れないような細い場所もあります。掘削の跡が生々しく残る坑山では女性も働いていたようで、厳しい労働環境のなか、日本の近代化の礎になったのだろうと想像しました。

 

 いまや映画のロケ地としても注目される吹屋の異空間。1972年に閉山となった後、町からは急速に人が減っていきました。「この間、『町は眠っていた』と表現してもよいのでしょうか?」と町の人に伺うと、「いえ、それは違うと思うのです。ずっとそこに住んで町を守っていた方もいらっしゃいますから」とのお答え。

 

 人里離れていたことが幸いし、興隆の歴史と独特の文化を、現代、そして未来に伝えていくジャパンレッドの町。吹屋を愛する人々の思いが感じられます。今後も、こんなストーリーを追ってあちこち旅をしたいと思います。

 

横井弘海(よこいひろみ)
東京都出身。慶應義塾大学法学部卒業後、テレビ東京パーソナリティ室(現アナウンス室)所属を経てフリー。アナウンサー時代に培った経験を活かし、アスリートや企業人、外交官などのインタビュー、司会、講演、執筆活動を続ける。旅行好きで、訪問国は70カ国以上。著書に『大使夫人』(朝日新聞社)

( SmartFLASH )

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