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人間が想像した「恐竜の姿」の変遷史、面白すぎる「恐竜図鑑」/女子アナ横井弘海の「エンタメ時間」

芸能・女子アナFLASH編集部
記事投稿日:2023.06.03 16:00 最終更新日:2023.06.05 21:59

人間が想像した「恐竜の姿」の変遷史、面白すぎる「恐竜図鑑」/女子アナ横井弘海の「エンタメ時間」

ロバート・ファレン《ジュラ紀の海の生き物―ドゥリア・アンティクィオル(太古のドーセット)》1850年頃 ケンブリッジ大学セジウィック地球科学博物館 (C) 2023. Sedgwick Museum of Earth Sciences, University of Cambridge. Reproduced with permission

 

 東京・上野の森美術館で、特別展「恐竜図鑑 ― 失われた世界の想像/創造」が始まりました(7月22日まで)。

 

 恐竜人気は子供から大人まで根強いものがあります。現在、同じく上野の国立科学博物館では特別展「恐竜博2023」を開催中(7月7日からは大阪市立自然史博物館会場にて開催)ですし、この夏には、六本木の東京ミッドタウンホールで「恐竜科学博」が開催されます(7月21日から9月12日まで)。

 

 

 これまで恐竜展と言えば化石の展示が主役ですが、この特別展「恐竜図鑑」はちょっと違います。恐竜など古代生物を描いた「パレオアート」の世界に着目した異色の展覧会なのです。

 

 生きた恐竜をその目で見た人類はいるのでしょうか?

 

 古代の遺物や壁画に描かれた恐竜があるから、恐竜と人間は共存していたかもしれないという話を聞くとワクワクします。

 

 しかし、歴史を見れば、先史時代、猿人(アウストラロピテクス)が生きていたのは400万年から300万年前。ジャワ原人で有名な原人(ホモ・エレクトス)は130万年前、火の使用の痕跡が見つかったという北京原人は約50万年前に生きたそう。その後、ネアンデルタール人に代表される旧人類を経て、現代の我々と同じホモ・サピエンスが登場したのは20万年前くらいと考えられています。

 

 一方、恐竜の生きた時代は2億年以上前から約6600万年前の中生代(三畳紀、ジュラ紀、白亜紀)。残念ながらというか、やっぱり、恐竜と人類が実際に出会ったことはなさそうです。

 

 だからこそ面白いのがこの展覧会。

 

第1章 恐竜誕生-黎明期の奇妙な怪物たち
第2章 古典的恐竜像の確立と大衆化
第3章 日本の恐竜受容史
第4章 科学的知見によるイメージの再構築

 

 という4章構成で、太古への限りない憧憬が込められた「パレオアート(古生物美術)」のロマンあふれる世界へ我々を導きます。

 

 福井県立恐竜博物館のホームページによれば、「絶滅した巨大な爬虫類として、恐竜が科学的に知られたのは、おそらく1822年のマンテル夫妻によるイグアノドンの歯の発見以降。1824年にはウィリアム・バックランドがメガロサウルスを論文で報告、命名した」そうです。

 

 19世紀にこれらの恐竜が発見されて以降、人々は化石などの痕跡から想像をふくらませ、絵画を主な手段として、太古の世界に生きた恐竜の姿を創造してきました。

 

 時代の変遷と研究の進歩によって、その姿が驚くほど変化しているのがイグアノドン。あのイグアナから命名され、当初は4本足で地を這い、鼻の上に角がある生き物と考えられていました。

 

 それが1850年頃にはサイのような姿になり、1878年にベルギーのベルニサール炭鉱でイグアノドンの化石が大量に発見されると、そのイメージは大きく変化し、後肢と尻尾で体を支えて立つ二足歩行の動物となりました。鼻の上の角もなくなり、代わりに前肢にスパイク状の親指がつきました。以降100年間、このイメージが続きます。

 

 ところが、1960年代から70年代にかけて「恐竜ルネサンス」という考えに基づく恐竜のイメージの大幅な修正がおこなわれました。結果、イグアノドンは前傾姿勢となり尻尾を浮かせ、より軽妙に動く動物として表現されるようになっています。

 

 誰も生きているときの姿を見たことがないので、描く人の想像力と知見に頼るしかない世界ですが、それぞれ、時代の最先端の研究をもとにしたもの。特に昔の絵はイマジネーション豊かな奇妙さが、とても愛おしく感じます。

 

 20世紀に活躍した恐竜絵画の2大巨匠チャールズ・R・ナイトやズデニェク・ブリアンらの作品は、日本の図鑑などに模写されて恐竜イメージの普及や影響を与え、映画『ロスト・ワールド』(1925年)や『キング・コング』(1933年)などにも影響したそうです。

 

 もともと野生動物画家だったナイトは、生物学的知見に基づき、恐竜をいきいきとした姿で現代に蘇らせました。彼の作品であるティラノサウルスとトリケラトプスの対決を描いた『白亜紀―モンタナ』や、躍動感あふれる『ドリプトサウルス(飛び跳ねるラエラプス)』は恐竜画における記念碑的イメージ。

 

 今もティラノサウルスと言えばトリケラトプスと対決し、ラエラプスが飛び跳ねている姿に、人々はなぜか納得してしまいます。

 

 19世紀に欧米で成立した恐竜のイメージは、世紀末には日本にも移入され、古生物学者・横山又次郎によって「恐竜」という訳語が作られました。ジュール・ヴェルヌの『地底旅行』(1864年)やコナン・ドイルの『失われた世界』(1912年)は昔、私も読んだことがあります。

 

 この展覧会では、国内有数の恐竜アイテムの収集家である田村博氏のコレクションによって、明治から昭和にかけて我が国の文化史に登場する恐竜が紹介されています。サブカルチャーからファインアート、さらには現代の恐竜絵画の旗手たちによる近年の研究に基づくパレオアートまで、20世紀後半、恐竜研究の進展にともない、恐竜画もさらなる進化を遂げています。現代日本を代表する小田隆氏の作品は迫力があって、見ごたえがありました。

 

 本展を企画した神戸芸術工科大学の岡本弘毅教授は、「これらの絵画はファインアート(純粋芸術)ではないかもしれません。しかし、すべて科学的に分析するばかりでなく、時代時代のイメージを表す展覧会があっても良いのではないかと思う」と話していました。

 

 知り合いの3歳の男の子は1年前に鉄道から恐竜に興味が突然変わり、今、パパに上野の恐竜展めぐりをせがんでいます。「なぜ恐竜が好きになったのかわからないけれど、恐竜に夢中」と周囲は話しています。科学だけでは説明がつかない魅力が恐竜にあるのでしょう。きっと「恐竜図鑑」展も、目を輝かせて見入るにちがいありません。

横井弘海

東京都出身。慶應義塾大学法学部卒業後、テレビ東京パーソナリティ室(現アナウンス室)所属を経てフリー。アナウンサー時代に培った経験を活かし、アスリートや企業人、外交官などのインタビュー、司会、講演、執筆活動を続ける。旅行好きで、訪問国は70カ国以上。著書に『大使夫人』(朝日新聞社)

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