「お兄ちゃんが高校生で、妹さんが中学生のときに越してきたんです。お母さんとの3人家族でした。兄妹がきちっとお辞儀をして挨拶してくれて、ちゃんとしてましたよ」
福岡市内のとある団地の住民は、声を潜めてそう語った。
10月31日、京王線の車内で無差別刺傷事件を起こし、殺人未遂容疑で逮捕された服部恭太容疑者(25)。福岡で育った彼は、何を思い犯行に至ったのか。同級生の母親は未だ信じられない様子でこう話す。
【画像あり】服部容疑者が暮らしていた団地。母・妹も暮らしていたが、事件以降に灯りはともっていない
「わざわざ服を買ったり、ペットボトルにライターオイルを詰め替えたりしたことをニュースで知って、ピンときたんです。昔からいつも身なりはきちんとした几帳面な子で、性格がそんなところに出たのかなって思いました」
一方、服部容疑者の違う一面を見ていた人もいた。今年7月までの3年間、同容疑者が契約社員として働いていた大手携帯電話会社の福岡市内のコールセンターで、同僚だった人物だ。会社の喫煙所で、新型コロナの給付金について話をしたことがあったという。
「本人は『派遣会社からたまたまここに派遣された』と言っていました。仕事のときの服装は少しやんちゃな感じで、ワルそうな彼の先輩も交えて中洲で飲んだこともあります。声を荒げるなど、感情の起伏が激しいなと感じることがありました」
服部容疑者は、あるトラブルをきっかけにこの職場を辞めてしまった。
「彼はインターネット関連の相談を受けつける窓口の担当でしたが、顧客との間で、契約にオプションをつけた、つけないで口論になったんです。本人に責任はないことなのに、会社は彼を守らなかった。彼は口調がきつく、以前からよくトラブルになっていましたが、責められたことに納得がいかなかったんでしょう」(同)
なかば “濡れ衣” のこの出来事で服部容疑者は配置転換を命じられ、それを受け容れられなかった彼は会社を去った。職を辞した服部容疑者が家を出たのは、7月中旬のこと。神戸市や名古屋市のホテルでそれぞれ1カ月ほど過ごし、9月下旬に上京して凶行に及んだ。
中学時代には柔道部と陸上部に所属し、高校時代は空手部の主将として、「組手」「形」の両方で大会に出場していた服部容疑者。空手部の恩師は「何も話したくないです」とショックを隠し切れなかった。
かつて温かい家庭を築いていた母と妹は、今何を思うのだろうか。事件以降、福岡市内の自宅に灯りはともっていない。