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旧統一教会、元信者が危惧する「進学・就職差別」…“逆・山上” が生まれる可能性も

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2022.09.14 11:00 最終更新日:2022.09.14 11:00

旧統一教会、元信者が危惧する「進学・就職差別」…“逆・山上” が生まれる可能性も

山上徹也容疑者

 

 朝日新聞が全国の国会議員と都道府県議、知事におこなった旧統一教会(世界平和統一家庭連合)との接点を問うアンケート調査の結果によると、計447人が教団と何らかの関係をもっていたと回答している。また、同調査で関係を認めた国会議員のうち8割を占めた自民党は、9月8日、党所属国会議員379人中179人が接点を認めたとする独自の調査結果を公表した。

 

 

 政治家と教団との関係に厳しい目が向けられているなか、それが一般社会にも広がり、信者やその家族、脱会者に対する「差別」につながるのではと危惧する元信者がいる。

 

 東大入学直後に入信し、1992年までの約11年間信仰を続けた金沢大学教授の仲正昌樹氏が語る。

 

「今でも誹謗中傷はしょっちゅうあります。Twitterや掲示板、はてな等のソーシャルメディア上で、私のことを気に食わないと思う人から、『仲正はまだ洗脳が解けていない』『あいつはマインドコントロールされている』などと書き込まれることが多い。

 

 私のことはさておき、とにかく訴えたいのは、信者や2世など統一教会と関わっていたことが周囲に知られると、嫌がらせをされる可能性があるということ。

 

 こういうことをあまり深く考えず、軽い気持ちでやる人がけっこう多いのです。やられたほうは、その後の人生を左右されるほどメンタルにダメージを受けます」

 

 とくに進学や就職で差別が生じないか、強く懸念しているという。

 

「私の過去の体験では、大学院入学に際して、試験をパスしたあとの面接で落とされたことがあります。単に実力不足だったのかもしれないし、私の受け答えが悪かったのかもしれない。

 

 でも、はっきりしているのは面接にいた先生たちすべてに、私が『原理研』(教団が学生向けに組織したサークル『原理研究会』)に所属していることが伝わっていたことです。それまでは親しくしてくれていた先生が、私が原理研だとわかってからは道で会うと逃げていきました。

 

 1回めの失敗から3年後に再受験し、面接を担当したある先生が事前に『彼は原理研かもしれないが、書いてきた文章を見るとやる気はある。実力以外のことは考慮しないでほしい』とほかの面接官の先生に伝えてくれたらしく、私は何とか通してもらえました。

 

 そのとき実感したのは、面接を担当する人によって結果はものすごく左右されるということです。私が脱会したのはそれから6カ月後の1992年10月ですが、面接で落とされていたらどうなっていただろうと、いま考えると恐ろしい。もしかしたら、ずっと信者をやらざるを得なかったかもしれません」

 

 教団の “外” に生きる道を求める信者もいるという。

 

「大学院進学や学士入学をした信者は、教会のなかで生きていくことを選ばずに進路を変更した人が多いと思います。自分で受験しようとしている時点で、教会と距離を置こうと考え始めている可能性が高い。

 

 まだ信者ではあるけれど、脱会を決意するまでに時間が必要な人というのは必ずいて、そこで別の生き方の具体的な選択肢があることが重要なのです。それが不当な差別によって断たれると、結局、信者をやめられなかったり教団へもどってしまったりすることになる。

 

 よく信者はマインドコントロールされていると言われますが、実際は自分の頭でよく考えています。何かのきっかけで悩むようになると、本当に今の生活を続けていけるだろうかと疑問をもち、違う生き方ができないか考え始める。そのとき、別の選択肢がないと、そのまま教団にとどまざるを得なかったり、同じような宗教団体に入ってしまったりするのです。

 

 大学院に入ったとき、私はまだ信者でしたが、奨学金をもらったり、授業料を免除されたり、アルバイトの口を紹介してもらったりと、さまざまな援助を受けました。そのおかげで、統一教会の外にいても社会と関われば生きていけるんだというイメージをもつことができたので、スパッと脱会を決断できました。

 

 私は受験の段階で信者であることが面接官に伝わっていましたが、大学院生になったあとにバレるケースもあります。それにより指導教官との関係が悪くなり、博士課程に進みづらくなるかもしれない。

 

 また、これまで親身になってくれていた指導教官に嫌な顔をされたり、他の教員に自分のことで相談されたことを知ったりすると、大きなショックを受けることもあります。

 

 一般企業でも事情は同じ。統一教会と関わりがあったことを周りが知れば針のむしろになるかもしれないし、多少警戒されたりするでしょう。私も学生時代のグループワークで、あいつと一緒に組みたくないと、あからさまに嫌がられた経験があります。同じ組織でそのようなことをされると、メンタルがかなり強くなければやっていけません。

 

 統一教会というレッテルが貼られると、重要な仕事を任せられないこともありうる。教団と縁を切る心づもりで就職したのに差別に苦しみ、それは『霊界が悪く作用しているから』などと自ら思い込んで、再び教団に戻った人もいます。

 

 ただでさえ生き方に悩む信者が、周囲から統一教会との関係を問われたり、今の政治家に対するような厳しい目を向けられたりすると、精神的にもたないでしょう。

 

 さらに言うと、就職面接で、仮に試験官たちに信者であることが事前に知られた場合、日本的なことなかれ主義で差しさわりのないやりとりで終わり、後で適当な理由で落とされるということも考えられます。その理由は開示する必要がないので、落とされた側にはもやもやした感情だけ残るかもしれない。それが鬱積すると、“逆・山上” が誕生するかもしれません」

 

 元信者が就職時に抱える悩みについて、全国霊感商法対策弁護士連絡会の紀藤正樹弁護士が語る。

 

「元信者からよく聞くのは、経歴が “空白” になる期間があって就職のときにつらいという話です。最終学歴が韓国の大学になっていたり、『ハッピーワールド』など関連団体に入っていたことを書けなかったりするのです。

 

 仲正先生は自分で統一教会のことをカミングアウトされているから、それで進路上の評価に影響が及んだことがあるかもしれません。それは不当な差別です。仲正先生が少なからず差別を受けてきて、人一倍努力しなければならなかったことは事実でしょう。

 

 ともかく、すべての責任は差別を生みかねないほど社会問題となった教団側にあります。悪いのは信者たちではありません」

 

 同連絡会の山口広弁護士も、社会的な差別が生じる可能性を危惧する。

 

「就職の段階で信者かどうか調べるのは大きな問題です。政治家に対する旧統一教会との関係追及の風潮が、一般にも広がることは今後あり得ます。そうなった場合、被害者の救済策が不可欠ですね」

 

 仲正氏いわく、周囲の「君、統一教会じゃないの」といった軽い言葉が、信者や脱会者たちの人生に決定的な影響を与えてしまうことがある。社会の側が、“第2の加害者” になってはならない。

( SmartFLASH )

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