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中国で起こる「朝鮮戦争映画」ブーム“敵は同じ”の北朝鮮と蜜月復活もミサイル連発には「できればやめてくれ」の本音

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2022.11.22 13:29 最終更新日:2022.11.22 13:32

中国で起こる「朝鮮戦争映画」ブーム“敵は同じ”の北朝鮮と蜜月復活もミサイル連発には「できればやめてくれ」の本音

現地で大ヒットした朝鮮戦争映画『長津湖』のポスター(写真・ロイター/アフロ)

 

 2022年に入り、北朝鮮がかつてないペースで、長距離弾道ミサイルを始めとした発射実験を繰り返している。「全国瞬時警報システム(Jアラート)」も2度、発令されるなど、日本でも緊張が高まっている。

 

 そんななか、中国では、1950年代の「朝鮮戦争」をテーマとして扱った映画が増えているという。

 

「先日、日本でも公開された朝鮮戦争を描いた映画『長津湖(邦題『1950 鋼の第7中隊』)』は、興行収入が56億9400万元(約1120億円)を突破し、中国の映画市場で歴代トップの興行収入を記録したことで話題になりました。同作は、中国人民志願軍と、米軍を主体とする国連軍との戦いがテーマ。

 

 

 同様に“抗美援朝(アメリカに抗い朝鮮を援助する)”がテーマの映画として、近年になって『金剛川(邦題『バトル・オブ・ザ・リバー 金剛川決戦』)』『誰是最可愛的人』『英雄連』『保家衛国――抗美援朝光影紀実』といった作品が続々と発表されており、中国の映画界における“朝鮮戦争ブーム”は、かなり力の入ったものであることがわかります」(映画ライター)

 

 このような朝鮮戦争を扱った映画が、なぜ増えているのか。中国事情に詳しいライター・もがき三太郎氏は語る。

 

「映画の評価については、『長津湖』は中国国内で間違いなく大ヒットと呼べる興行成績を上げました。それ以外の映画、たとえば『金剛川』などは、日本のレビューだとボロクソに叩かれていますが、作品の規模としてはけっしてB級戦争映画ではなく、中国版ハリウッド戦争映画といった印象を持ちました。

 

 ベトナムやイラクを題材とするハリウッド映画には、痛烈に戦争、もしくは自国批判をするものもありますが、中国映画ではそういう要素はいっさいなく、兵士たちの戦いと、犠牲に焦点を当てる内容です。この手の戦争映画が増えている理由のひとつには、自国のために殉じた兵士たちの顕彰という意味があります。

 

 ざっくり言えば、軍人さんたち、とくに祖国のために犠牲になった人々に、敬意を持ちましょうということです」

 

 このような動きの背景には、中朝関係が好転したことも大きい。2013年、金正恩氏が中国とのチャンネルといわれていた張成沢(チャン・ソンテク)元朝鮮労働党行政部長を粛清したころ、両国関係は最悪の状態を迎えた。

 

 それが、2018年に金氏が中国を訪問し、2019年に中国の習近平国家主席が北朝鮮を訪問と、中朝首脳が相互訪問して以降は、「敵は同じく米国」ということで、かつて「血盟」とうたわれた蜜月関係を復活させている。

 

「米国との対立が深まるなか、自国のナショナルヒストリーを語るうえで、隣国を支援して米国と互角に戦った、ということを強調したい狙いがあると考えられます。

 

 ただし、第三者から見ると、そもそも朝鮮戦争は“抗美援朝”という以前に『侵略したのは北のほうでは?』という話になるのですが、映画ではそういうことにはふれられません。

 

 中国にとって北朝鮮の存在は、冷戦時代は西側と直接、国境を接することを避ける、いわゆる“緩衝国”だったわけですが、現在は、そういう位置づけを引き続き持ちつつ、米国への牽制役という役割もある、と考えられています」(もがき氏)

 

 では、中国が完全に北朝鮮をコントロールできているかというと、そうでもないようだ。

 

「北朝鮮のミサイル発射で、日米韓が騒いでいることについて、中国政府は『米韓合同演習などをするから、北朝鮮は対抗措置を取らざるを得ない』という北朝鮮の主張に一定の理解を示す姿勢で応じています。ただ、ミサイル実験は明らかに国連決議違反ですので、さすがに『やむを得ない』と肯定したりはしません。

 

 北朝鮮の核実験強行の可能性が高まっていますが、かつて中国国内では、北朝鮮の核実験場の事故で、放射線漏れの問題が過去かなり大きく報じられたことから、強い警戒感を持っています。

 

 北朝鮮が核実験をやればやるほど、国連でも核議論が盛んになるでしょう。そこで北朝鮮をかばうと、中国の立場が損なわれることから、中国は朝鮮半島の非核化という立場を崩していません。『できればやめてくれ』といったところが本音ではないでしょうか」(東アジア担当記者)

 

 複雑化する東アジア情勢下、中国は“反米”だけに目を向けて、プロパガンダ映画ブームを続けていきそうだ。

( SmartFLASH )

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