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激増する防衛費の財源に「法人税付加」方式が浮上、湾岸戦争時は1年で6700億円捻出
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2022.12.09 17:38 最終更新日:2022.12.09 17:42
12月8日、岸田文雄首相は、防衛費増額の財源確保へ向けて、増税の検討を指示した。
新たな防衛費は、2023年度から5年間で総額43兆円で、およそ17兆円の増額となる。1年あたりで言えば3兆円以上だ。歳出削減や剰余金の活用を前提に不足ぶんを増税でまかなう予定だが、安定的に財源を確保するには、毎年1兆円強の増税が必要になる。
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岸田首相が所得増税の検討見送りを表明したことで、有力視されているのが法人税の課税強化だ。
2021年度の法人税収は約13.6兆円。そこで、本来の税率は変えず、法人税額に一定の税率を上乗せする「付加税」方式での増税案が浮上している。念頭にあるのは、湾岸戦争勃発後の1991年、多国籍軍支援のために設けられた「法人臨時特別税」だ。
「1991年1月から、米国を主体とする多国籍軍は、イラク空爆に踏み切り、1カ月でクウェートからイラク軍を駆逐しました。米国は同盟国である日本に対し、自衛隊の派遣を含む人的貢献を求めましたが、当時の海部俊樹首相は、憲法上の制約から要請を断りました。
日本は多国籍軍の戦費提供を強いられることになり、最終的に戦費総額610億ドルの約2割となる130億ドル(当時のレートで1兆8000億円)もの巨額の支出がおこなわれたのです。
巨額費用をまかなうため、法人税の税額から300万円を引いた額に2.5%の税率をかける法人臨時特別税、石油税の2分の1を上乗せする石油臨時特別税が、1991年4月から1年間だけ実施されました。
法人臨時特別税は4400億円、石油臨時特別税は2300億円で、合計6700億円が徴収されましたが、湾岸戦争の戦費を負担する臨時増税には反発の声も多かったのです」(政治担当記者)
当時は日本経済が強く、拠出金を賄うための臨時増税を実施できたが、問題は今の日本経済が弱りきっている点だ。
仮に法人税を増やす場合、今回も、中小企業向けの負担軽減策として、本来納めるべき税額から一定の金額を差し引く「税額控除」の適用が検討されている。しかし、中小企業は物価高などで経営環境が厳しい。一方で、負担が偏る大企業からの反発も予想される。
湾岸戦争では1年だけだったが、今回は恒久的となるだけに、調整は難しくなるだろう。
「湾岸戦争の戦費として、日本は2兆円近くを支出しましたが、戦争終結後、クウェートが米紙に掲載した感謝広告に日本の国名はなく、日本外交は強い敗北感を抱くことになりました。これは、後々まで『湾岸トラウマ』と語り継がれましたが、今後の増税がトラウマとならないよう、きちんとした議論が望まれます」(同)
12月15日とされる与党税制改正大綱の取りまとめでは、はたしてどのような負担増が明示されるのか――。
( SmartFLASH )