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岸田首相、金持ち増税案は「年収30億円超の300人」…結局、損をするのは庶民ばかりの理不尽

社会・政治 投稿日:2022.12.15 11:00FLASH編集部

岸田首相、金持ち増税案は「年収30億円超の300人」…結局、損をするのは庶民ばかりの理不尽

写真:つのだよしお/アフロ

 

 12月13日、政府は超富裕層を対象に、2025年ぶんから課税強化する方針を固めた。自民党税制調査会の宮沢洋一会長は、同日、記者団に対し「年収平均30億円くらいの方に少し負担を増やさせていただく」と述べた。

 

 年収30億円以上ということで、対象者は200〜300人程度となる見込み。たとえば所得50億円であれば、所得税が2〜3%程度(1億〜1億5000万円)増えることになる。

 

 

 超富裕層への課税強化という方針を示した岸田政権に対し、SNSではこんな批判の声があがっている。

 

《たかだか200〜300人の超富裕層(所得30億円以上)に増税したところで誰が納得するの?》

 

《1億超えると税負担が下がるんだから30億超じゃなくて1億超を対象にしないと是正されないじゃん。850万超のサラリーマンはあっさり増税したくせになんなんこれ》

 

 SNSでも指摘されているが、富裕層への課税強化は、所得が1億円を超えると税負担が下がってゆく「1億円の壁」を是正するためだ。具体的に「1億円の壁」とは何を指すのか。ファイナンシャルプランナーの坂井武氏が解説する。

 

「税金を大きく2つに分けると、『収入』にかかる『所得税』と『財産』にかかる『相続・贈与税』があります。これらの税金は、金額が多くなるにつれ税率も上がる『超過累進税率』になっています。

 

 所得税でいえば、年間所得が4000万円を超えると最高税率の45%。これに住民税10%を加えると55%。所得が1億円なら、ちょっと計算が複雑になりますが、約5000万円が税金として取られます」

 

 これだけ見ると金持ちは大損するようだが、ここで登場するのが「利子」「配当」などだ。一般に富裕層は、投資信託や株式などに巨額の投資をしている。資産が多ければ、より多くのお金を投資に回すことができる。

 

「銀行の利子や株式の配当金、株式・投資信託の売却益を『金融所得』といいますが、これは所得税15%と住民税5%の合計で20%(復興税は除く)なんです。たとえば、金融所得1億円の場合の税金は2000万円となります。

 

 金融所得課税は、収益の多い少ないに関係なく、一律20%ですから、富裕層はたくさんの金融資産を持てば、実質の税率は下がります。一般に、1億円以上になると、所得が上がるにつれ実質税率が下がるとされ、これを『1億円の壁』と呼んでいます。

 

 資産が増え、20%税率の金融所得に依存するほど、メリットが大きくなる。これが、金持ちが投資に熱心な理由です。まさにお金がお金を呼ぶ世界となるわけです」(坂井氏)

 

 岸田首相は、2021年秋の自民党総裁選で「『1億円の壁』の打破」を掲げ、金融所得課税の強化を目指すとした。だが、政権が発足してすぐに日経平均株価が700円以上も値下がりする「岸田ショック」が起こり、先送りした経緯がある。

 

 では、今回の超富裕層への課税強化はどれほど効果があるのだろうか。

 

「日本に200〜300人しかいない超富裕層が対象ですからね。お金があるんだから、税金の安い国に移住するとか、税金がほとんどかからない国(タックスヘブン)に資産を移す手もあります。

 

 まぁ、『1億円の壁』を打破するなら、1億円超の人を対象にするのが普通だと思います。たしかに株式市場に影響はあると思いますが、所得税率を上回らない範囲の税率の引き上げなら、市場はまた元に戻るでしょう」(坂井氏)

 

 実は、富裕層への課税強化を批判する声もSNSではあがっている。

 

《金持ちが海外に逃げて行き、税収が減るぞ》

 

《頑張って頑張って登って来たものが馬鹿を見る。所得が高いものから搾り上げるのはいかがなものか。だからみんな日本から出ていくのだよ》

 

 金持ちの海外逃避を避けるためか、岸田首相は、保有する金融資産を元手に起業したり、スタートアップ(新興企業)に再投資した場合、最大20億円まで非課税とする税負担軽減策もあわせて講じる方針だ。

 

 結局のところ、超富裕層に課税強化するとはいえ、抜け道もしっかり用意されているわけだ。物価高騰や重税に苦しむのは、どのみち庶民ということになりそうだ。

( SmartFLASH )

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