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東京電力が3割値上げで拡大する電力料金の「地域格差」キーワードは「原子力」と「再エネ」
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2023.01.24 20:20 最終更新日:2023.01.24 20:20
1月23日、東京電力は家庭用電力料金「規制料金」の値上げを、経済産業省に申請した。値上げ幅は平均で29.31%で、認可されれば6月1日から実施される。一般的な家庭では、1カ月の料金が9126円から1万1737円へと、2611円上がることになる。
火力発電に必要な燃料の価格が高騰しており、東京電力の2023年3月期の連結損益は、3170億円の赤字になる見通しだという。大手電力会社の規制料金の値上げ申請はこれで6社め。
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・東北電力 32.94%
・北陸電力 45.84%
・中国電力 31.33%
・四国電力 28.08%
・沖縄電力 39.30%
上記6社は2022年内に申請しており、4月から値上げとなる見込み。北海道電力もすでに規制料金の値上げを発表しており、大手では、関西電力、中部電力、九州電力の3社以外は、すべて3~4割程度の値上げとなる。
電力料金の「地域格差」――なぜこのような状況が生まれているのか。
「大きな要因は“原子力”。加えて“再エネ”の導入比率です」
そう解説するのは、エネルギー問題の専門家で、合同会社エネルギー経済社会研究所代表の松尾豪氏だ。
「現在、再稼働済みの原発は10基。関西電力が5基(美浜3、大飯3・4、高浜3・4)、四国電力が1基(伊方3)、九州電力が4基(玄海3・4、川内1・2)です。現在の日本の電源構成は、火力発電が76%で、LNG(液化天然ガス)と石炭だけで7割近くになります。
LNGと石炭は、この1年で輸入価格が約3倍にもなり、電力料金の値上げにつながっているわけですから、原発が稼働していれば、その影響をある程度は抑えることができるわけです。また、九州電力は再生可能エネルギーの導入が国内でももっとも進んでおり、この影響も大きい。中部電力は、稼働している原発はありませんが、国の認可が必要な『規制料金』ではなく、2016年の電力小売自由化以降に導入された『自由料金』の値上げで対応するようです」
今後の見通しは?
「原子力規制委員会の『設置許可済み』となっている原発が、7基あります。このうち、東北電力の女川2、関西の高浜1・2、中国の島根2の4基は年内にも再稼働の見通しです。
問題は、東京電力の柏崎刈羽6・7と、日本原子力発電(原電)の東海第二の3基。柏崎は社員によるIDカードの不正使用などの不祥事が続いており、ガバナンスに問題があると指摘されています。東海は、30km圏内に約100万人が住んでおり、避難計画をつくることさえ、現実的には不可能ともいわれています。この3基の再稼働はまだ先になる可能性が高い。北海道電力は泊の1・2・3号機の設置許可申請を出してはいますが、これらも再稼働は、まだ何年も先になる見通しです。
世界情勢からも、LNGや石炭の高止まりはまだ数年続くとみられており、日本国内の電気料金の『格差』は、これから数年は続くのではないでしょうか」(松尾氏)
格差が生まれているのは、家庭の電力料金の話だけではない。製造業が好調な九州だが、なかでも熊本には半導体関連企業が集まり、活況を呈している。今後も大規模な工場の建設が進む予定だ。じつは、九州電力の産業用電力は、関西電力や東京電力などに比べてかなり安くなっている。原子力や再エネで安く安定した電力が使え、豊富な水があるなど、好条件が揃っているのだ。
ますます「格差」は広がっていきそうなのだ――。
( SmartFLASH )