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「志位和夫さん、あなたが共産党をダメにした」除名処分の松竹伸幸氏と古谷経衡氏が覚悟の対論
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2023.02.14 06:00 最終更新日:2023.02.14 14:55
古谷経衡(以下、古谷) 半世紀近く党に尽くしてきた結果が除名。大変なことになってしまいましたね。
松竹伸幸(以下、松竹) こちらこそ、あなたまで騒動に巻き込んでしまって申し訳ありません。
5日、日本共産党員歴50年近くに及ぶ“古参戦士”松竹伸幸氏(68)が、党からもっとも重い「除名」処分を受けた。保守主義に軸足を置きつつ、“話のわかる右翼”を自認する古谷経衡氏(40)が、共産党の内実に斬り込んだ。
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古谷 今回、松竹さんが除名された理由として、共産党は「党首公選制」を主張したことを最初に挙げていますね。
松竹 共産党員が投票で党首を選べるようになれば、自民党政権を脅かす党になれると考えたんですよ。
古谷 党首を公選することで、どうして共産党の存在感が増すのでしょうか。
松竹 志位和夫委員長は2015年以降、選挙での野党共闘を呼びかけてきました。それで、一時は自民党の対抗軸になれたと思うんです。
古谷 しかし安保、防衛をめぐって相容れず、現在、野党連合は後退する一方ですよね。
松竹 2021年の衆院選では、麻生太郎さんに“立憲共産党”と連呼されましたね(苦笑)。ほかの党は、選挙に負けると党首選挙で新しいスタートを切っているのに、志位さんは、“方針は間違っていなかった”と22年間も委員長に居座り続けている。公選制で、そこを変えたいと思ったんです。
現在、共産党の党首は立候補制ではなく、二十数人からなる常任幹部会が作成した候補者名簿に従い、約200人の中央委員会が「全会一致」で承認するのが恒例になっている。
松竹 もし、党首公選制が実現すれば、私は党首に立候補しようと思っています。そのためには、まずは中央委員に選ばれる必要があるのですが……まかり間違っても選ばれることはないでしょうね。
古谷 そうなんですか。もともと松竹さんは党本部に勤務し、安保外交部長という要職に就いたこともあった方ですが……。
松竹 私は2006年に党本部を退職以降、地域の支部に属する“ヒラ党員”だったので、他支部の党員に投票を呼びかけることができませんから。
古谷 今回、問題視された松竹さんの本(『シン・日本共産党宣言』文春新書)で知ってびっくりしたんですけど、党員はほかの支部の党員と日常的に交流しちゃいけないんですね。派閥・分派を作らないなどの組織原則「民主集中制」が、これだけ厳格なものだとは思いもしませんでした。
松竹 党本部にいたころ、火事を起こしたら困るということで、冷蔵庫を置くことが禁止されたんです。ところが、別の部局には冷蔵庫があると知り、幹部のところに出向いて「私の部局にも置かせてほしい」と頼んだら、「ほかの部局と連絡を取っているのか。分派に繋がる行為だ」と強く批判されました(笑)。それくらい厳格でしたね。
古谷 やはり、民主集中制が崩れると、共産党は終わってしまうのでしょうか。2月6日、共産党の京都府と京都南地区の常任委員会は、「松竹伸幸氏の除名処分について」という文書を公表しました。おもな処分理由は、松竹さんの活動が民主集中制の原則に反するというものでした。
松竹 民主集中制を厳格に守っても、志位さんに権力が集中している現状があるので、党首公選制を主張したんですよ。
古谷 共産党は分派を作らせないことを重視しますが、かくいう僕は去年、れいわ新選組の代表選に出たんですよ。落選しましたけど。違う意見を戦わせていた相手とだって、選挙が終わると案外仲よくなるんですよね(笑)。
松竹 自民党も総裁選で、タカ派色を鮮明に出して岸田文雄首相に対抗した高市早苗氏を、当初は党政調会長に取り立てましたしね。
古谷 共産党は党内部で議論していないわけではなく、じつはめちゃくちゃ議論してるんですよね。でも、議論の過程が外部に見えてこない。
松竹 私が志位さんと対立したのは、2005年に発表した自衛隊に関する私の論文を、志位さんが「『自衛隊は違憲』という共産党の立場から逸脱している」と批判したからです。私は、党の雑誌に自己批判文を載せ、共産党を退職しました。ところが、2015年に志位さんは「共産党が政権を取った場合、政府は自衛隊を合憲とする」と、立場を転換しました。「共産党を辞める必要はなかったのでは」とよく言われました。
古谷 志位さんが「こいつは気に食わないな」と思ったら、“粛清”されるのでしょうか。
松竹 それはないと思います。私は、志位さんと政策的には対立していましたが、1カ月ほどですが同じ部屋で仕事をしたこともありますし、私の子供が小さいころ、肩車をしてもらったこともあります。強い理想主義の志位さんと、私のように防衛政策を持たないとダメだと思っている現実主義者がうまく噛み合えば、党にとってもよかったと思います。
古谷 これだけ重い処分を科されても復党を望むなんて、松竹さんは“共産党愛”に溢れていますよね。それなのに、志位さんは9日の会見でも、松竹さんや新聞社に対して強い言葉で反論を繰り返している。言論の自由を認めないのかと、僕も含めた一般人は「下手打ってるな」と思ってますよ。
松竹 個人的には、私と志位さんがハグをしている写真を配信するほうが、党にとって絶対にいいと思いますけど(笑)。
古谷 長期の志位体制や、党本部の手法に疑問を持っている党員は増えていますか。
松竹 私の感覚では7、8割を超えているはずです。
古谷 志位さんの支持率は2、3割ですか。それじゃあ松竹さん、当選するのでは(笑)。
松竹 いやいや(笑)。でも、地方議員のなかにはツイッターで「松竹さん頑張れ」「志位一派を追い出せ」と支持してくださる方もいます。「私は地方議員だが離党しようと思う」という連絡もいただきました。私は、来年1月の党大会で復党への再審査を求めるつもりなので、その方には「離党せずに、1月の再審査に代議員として参加してください」とお願いしました。
古谷 志位さんが、いかに共産党をダメにしているのかがよくわかりました。これ、タイトルですね。「あなたが共産党をダメにした」。
松竹 ダメなのは志位さんその人ではなく、あまりに長く党首を務めていることです。私も党首を目指している以上、過激なタイトルは勘弁してください。「志位さん、握手してハグしましょう」でお願いします(笑)。
まつたけのぶゆき
日本民主青年同盟の専従活動家、国会議員秘書、共産党職員を経て、現在は、かもがわ出版編集主幹。自衛隊を活かす会事務局長、日本平和学会会員
ふるやつねひら
(社)令和政治社会問題研究所所長。インターネット、ネット保守、若者論、政治など幅広いテーマで執筆活動をおこなう。近刊に『シニア右翼』(中公新書ラクレ)