2月22日の衆院予算委員会で、岸田文雄首相と立憲民主党の泉健太代表が、「子ども予算の倍増」をめぐって議論を繰り広げた。
岸田首相は、2月15日、関連予算について「2020年度でGDP比2%(10兆円超)。それをさらに倍増しよう」と発言。翌日、官房副長官が「将来的な倍増を考えるベースとして言及したわけではない」と軌道修正した。
このことについて泉代表は、GDP比4%、つまり20兆円超まで増やすと受け取れるとして訂正を求めたが、首相は応じず、「(政策の)中身を整理している段階」と逃げた。
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岸田首相が言及した「子ども予算の倍増」は、「異次元の少子化対策」の幹となるものだが、何を基準に倍増させるのか、議論の行方は不透明だ。
そんななか、注目を集めているのが、木原誠二官房副長官の発言。木原氏は、21日に『深層NEWS』(BS日テレ)に出演し、こう述べている。
「子ども予算は、子どもが増えればそれに応じて増えていく。もしV字回復して出生率が本当に上がっていけば、わりと早いタイミングで倍増が実現される。効果がなければ、倍増といってもいつまでたってもできない。効果のない予算をずっと使い続けることになりかねない」
子どもを増やすために予算をつけるのではなく、子どもが増えたら結果的に予算も増えるということのようだ。まるで「タマゴが先かニワトリが先か」といった理屈に、Twitterでは大ブーイングが吹き荒れた。
ロバート・キャンベル東大名誉教授は、
《えっ。異次元の少子化対策ってそういうことだったと?牽引しなければならないものが増えた結果となり、因果の入れ替え、「子ども予算倍増」の「倍増」の意味もまったく変わってしまいます。大丈夫かな?》
と疑問視。ほかにも、
《少子化対策のために子ども予算倍増しようという話ではなくて、子どもが増えたらその分予算が増えるっていう話なの?少子化止める気ないでしょ》(たつみコータロー元参院議員)
《え?「予算倍増」ってそういう意味で使ってたの?》(三原じゅん子参院議員)
などのコメントが寄せられている。
地方から率先して子ども支援に取り組んできた明石市の泉房穂市長は、「ほんまに言うとんか」と唖然とする。
「びっくりするよね、あのレトリック。政治家の仕事をしていない。あれをキーマンの官房副長官が真面目な顔して言っちゃうんやと。政治の力で課題を解決してくれないんかと。
少子化の歯止めになるとか、経済成長につながるとか、本来は何かのために政策を打つものなのに、それがないということやから、脳みそが動いてないし、やる気がない。
子ども予算を『倍増』と言うとるだけで、本当は何も考えてない。ずっと『検討』『そのうち』で、いつまでそのうちやねん。子ども政策の担当大臣も就任してこれだけ時間が経ってるんだから、はよ決めよと。
結局、やらなきゃいけないと思ってない。周りが騒いでいるから、とりあえずその場をしのぐために倍増と言ってるだけ」
この発言で、日本の政治制度の綻びが露呈したという。
「最近は、東京都とか福岡市とか、地方自治体のほうが思い切った政策転換をしている。自治体は市民に近いから、生身の国民の声が届くわけよ。国政は遠いし、本当の国民の大変さというものがピンと来てないんだろうね。
日本は大統領制じゃないから、国民を見ずに与党の有力者を見れば総理大臣に行きつける。今回改めて、国民を無視してもその地位にいられる議院内閣制の問題点が明らかになったよね。
韓国や台湾は大統領制やから、国民を無視したら続けられない。でも、日本の場合は支持率がどんなに落ちたって平気でいられる。国民を無視する政治が可能な制度そのものが、そろそろ問われるべき。
今後は、首相公選制を議論したらと思うよ。そうしないと国民のほうに向いた政治にならないよね」
異次元の政策は、「たたき台」が3月末までに明らかになる予定だ。
( SmartFLASH )