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60年上がらぬ給料と超ブラックな実態…撮影現場を支える「制作部」が悲惨すぎる【腐ったテレビに誰がした】

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2023.02.25 16:00 最終更新日:2023.02.25 16:00

60年上がらぬ給料と超ブラックな実態…撮影現場を支える「制作部」が悲惨すぎる【腐ったテレビに誰がした】

写真はイメージです(写真・AC)

 

 ドラマの専門職として「制作部」という人たちがいます。「部」という字が付いていますが組織ではありません。ほぼすべての人がフリーランスで、「ドラマの撮影が順調に進むためにするべきことは全部する」のがお仕事です。

 

 ドラマの撮影現場が成り立っているのは、制作部と呼ばれる人たちが人知れずがんばっているからなのですが、あまりに待遇がブラックなのが問題となっています。

 

 言ってみれば “なんでも屋さん”。

 

「ねえ、トイレどこ?」
「ねえ、車どこに停める?」
「ねえ、撮影してたら火事になっちゃったんだけどどうしたらいい?」

 

 

 というぜんぜん違う質問に1人で一気に対応しなきゃいけないようなお仕事で、離職率は驚異的に高くて、10人入っても1年後には1人残っているかどうかという感じだそうです。

 

 人手が足りなすぎて、「やりたい」と言えば誰でもすぐに入れる世界。育てる余裕もないので、タダ働きしてもらい仕事を覚えてもらっているとか、居酒屋の飲みの席で新人をスカウトすることもあるとか……。

 

 そしてなんと、ギャラは60年間一度も上がっていないそうです! 昭和30年代から現在まで、業界で不文律のように決められたギャラの水準がそのまま続いているというから驚きです。

 

 そのギャラ相場は、ドラマ業界では「七五三」と言われていて、ドラマ1本で、チーフにあたる「制作担当」が70万円、セカンドにあたる「制作主任」が50万円、サードにあたる「制作進行」が30万円。

 

 さほど悪くない? と思うかもしれませんが、サスペンスなどの2時間ドラマで1本撮影するのにおよそ2週間かかり、撮影期間には毎日ほぼ24時間まったく休めないので「死んでしまうかも」と思うほど忙しいそうです。

 

 深夜24時に撮影が終わって、翌早朝6時から撮影再開ということも当たり前のドラマの撮影現場で、撤収や準備なども考えればスタッフ誰もが睡眠不足になるほど働いていますが、それに加えて「みんなが休んでいる時間に翌日の準備をする」というのですから、それはたまりませんよね。

 

 午前3時4時に、当たり前のように電話がかかってくるそうです。あまりの大変さに、クランクアップとともに意識を失って気がついたら病院! という人がいたり、心を病んでしまう人も多いようです。

 

 制作部の人をいつも困らせるのが天気だそうで、雨が降って1日撮影ができないと100万円単位のお金がパーになって飛んでいってしまいます。

 

 そこで許可なしで「ゲリラ撮影」できて、かつ「雨が降っていても、晴れのように見える場所」を探して、アーケードのある商店街をやっと見つけたり、場合によってはビニールシートで屋根を作って、なんとか “晴れの状況” にして撮影を続けなければならないのです。

 

 しかも予算削減による合理化で制作部の仕事は増加する一方。かつては「特機(とっき)部」(特殊機械を扱う人たち)の仕事だったドリー撮影(台車に載せたカメラで移動しながらする撮影)用のカメラのレール敷設や、「イントレ」と呼ばれる、鉄パイプなどを組み立てて作る足場の設置も、予算削減で制作部の仕事に。

 

 大道具の仕事やゴミの管理まで次第に制作部の仕事になりつつあるそうで、仕事は増える一方なのだそう。

 

 そんな状態でろくに眠りもせず、ロケバスの運転まで担当することが多いというのですから、とても危険。「制作部は交通事故を起こしてやっと一人前」と言われることもあるそうですが、死亡事故も起きたことがあり、とても深刻な状況です。

 

 日本のテレビ制作現場はどこもブラックで、悪条件・低賃金でもがんばるスタッフたちに支えられています。“やりがい詐欺” とも言われるこの状況を、真剣に改善するべきときが来ています。

 

 

 以上、テレビプロデューサー鎮目博道氏の新刊『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)をもとに再構成しました。局の内部事情、問題点や外圧をわかりやすく解説します。

 

●『腐ったテレビに誰がした?』詳細はこちら

( SmartFLASH )

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