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名門・成城学園初等学校「モンペクレーム」で人気教師が退職! 保護者説明会で理事長に怒号が飛んだ
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2023.04.12 06:00 最終更新日:2023.04.12 06:00
東京都世田谷区の「成城学園」は、幼稚園から大学までの一貫教育をおこなう、1917年創立の名門私立校だ。
3月22日、学園内の講堂では、小学校にあたる初等学校の3年X組の臨時緊急保護者会がおこなわれていた。
「偉そうな態度はやめてください」とたしなめる保護者を無視し、腕を組んでふんぞり返るのは、3月31日まで学園全体のトップである理事長職にあった、油井(ゆい)雄二氏だ。
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保護者会の議題は、X組担任の中堅教員・A教諭(男性)の交代について。初等学校では、3年から6年まで同じ教諭が担任をするため、突然の発表に保護者らは驚愕した。学園関係者が経緯を語る。
「2022年4月25日、X組のBくんら、児童数人が『帰りの会』の開始前に騒いで、下校の準備をしませんでした。A先生は、職員室に行く前に『先生が戻ってきてもふざけていたら怒るよ』と注意しました」
A教諭がX組に戻ると、Bくんだけが準備をせず、騒いだり床に寝そべったりしていた。
「A先生は、これではほかの児童の下校が遅くなると考え、Bくんの両足を引っ張って教室の外に出し、『準備ができたら教室に戻るように』と指示しました」(同前)
このときBくんは、腕に擦り傷を負ったとされる。下校準備を終えて教室に戻ったBくんはその後、保健室で絆創膏を貼ってもらったというが、A教諭は傷を現認していない。
2週間後、Bくんの母・Cさんから保健室の養護教諭に照会があった。そこで初めて事情を知ったA教諭は、不適切な行為であったことを認め、Cさんに謝罪の電話をかけた。
「その後も、Bくんは通常どおり登校し、6月の遠足でもA先生と楽しげに接していました。ところが、6月末から突然、欠席しがちになり、7月7日、医師であり、成城学園の校医の一人であるCさんから、BくんのPTSD(心的外傷後ストレス障害)の診断書が学園に提出されたのです」(同前)
初等学校の渡辺共成(ともなり)校長は、Cさんの「息子はA先生の体罰によってPTSDになった」という言い分を丸ごと受け入れ、その日のうちに「体罰事件」と認定。A教諭に始末書の提出を命じるとともに、口頭で厳重注意処分を下した。
7月11日、Cさんは夫とともに学園を訪れ、A教諭と渡辺校長に、90分以上にわたる激しい抗議をおこなった。
「Bはすごくコンフューズ(困惑)しています」
Cさんは「違いますか?」「そう思いますよね?」「体罰ですよね?」とA教諭を問い詰めながら、反論の暇を与えず糾弾し続けた。
「Cさんは、モンスターペアレントとして先生の間で有名です。Cさんとの面会の際は、多くの先生がクレームに備えてスマホの録音機能をオンにして臨み、その記録は多数、初等学校に残っています」(前出・学園関係者)
そして医師でもあるCさんは、「A教諭に記憶障害があるんじゃないかという(専門機関の)声も聞いています」と“診断”。渡辺校長は、A教諭をかばうことなくこう同調した。
「大事な子供さんを預けている担任が記憶障害に悩んでいるとしたら、(親は)不安な気持ちを拭い去れない」
“調査ゼロ”で認定されたA教諭の「体罰」行為だが、同月の部長会議では、渡辺校長の説明があいまいだったため、校内でのハラスメント調査委員会の設置は見送られた。
しかし、事はそれで終わらなかった。Cさんが、油井理事長(当時、以下同)と2度にわたり、面談したのだ。
「普通の保護者は、理事長に面会など、そうはできません。校医であるCさんだからできたのでは」(X組の保護者)
Cさんは油井理事長に、A教諭をX組の担任から交代させることを執拗に迫った。
「油井理事長も渡辺校長同様、A先生を調査することなく、担任交代をCさんに約束しました」(前出・学園関係者)
A教諭は、学園内で“追い出し部屋”的な位置づけの「教育研究所付」への異動や、屈辱的な他校での研修を打診された。心が折れたA教諭は、3月末での退職を決めた。X組の保護者は3月8日ごろ、子供づてにそれを知った。
「A先生がBくんを怒ったことは子供から聞いていましたが、保護者たちはおおごとではないと考えていて、Cさんが担任交代を求めていることは誰も知りませんでした。A先生は、穏やかに子供に寄り添ってくれていました。日記に押してくれる自分の似顔絵入りのハンコを、クラスみんなが楽しみにしていました」(X組の保護者)
じつは、学園では2年前にも、教員1人がやめている。
「1年生のクラスで、騒いだり歩きまわったりする子供がいて、学級崩壊状態でした。Bくんもそのクラスにいて、担任の先生や、後任の先生はうまく指導できなかったんです。A先生は、クラスを立て直そうと、必死にがんばってくれていました」(同前)
A教諭の退職に納得できない保護者が、油井理事長の登壇を求めたのが、4時間にわたった冒頭の保護者会だ。
「しかし、油井理事長の通り一遍の説明に保護者は激怒し、一度はほぼ全員が退席しました。その後、待機していた他学年の保護者が、油井理事長の制止を聞かず会場に入り、100人近くがA教諭の退職撤回を求めたのです」
保護者たちはマイクをまわし合い、油井理事長に訴えた。
「“行きすぎた行為”が本当に体罰に当たるものだったのか? 児童の側に問題がなかったのか、精査したのか?」
「X組の児童や保護者である私たちには、A先生は恩師なんです。こんな扱いを受けて、黙っていられません」
「退職で、子供たちはパニックになって泣いています。ひとりで帰宅させるのが不安です」
発言には温かい拍手が起こったが、油井理事長は「皆さんの拍手、意味ないですよ? 一部の保護者の意見ですね」と言い放った。
3月31日、本誌は自宅で油井理事長を直撃した。
「(A教諭の退職は)それはもう、妥当だと思ってるわけですけど。学校のほうへ連絡をください」
そこで、学園にA教諭の行為についての調査の状況や、退職に関してのCさんの抗議の影響、誰が退職を決定したのかについて問い合わせると、「当学園の児童、父母、教職員についてのお話は差し控えさせていただきます」との回答があった。
クレーム対策に詳しい森大輔弁護士が解説する。
「Cさんのケースは、モンスターペアレントに該当する可能性が高いと思います。しかし、学校側の対応のほうにこそ、問題があるようです。A教諭の行為は、児童に何度注意したのか、児童がそれに従わなかった時間、別の対応はできなかったのか、などの総合的な判断をする必要があると思います。モンスターペアレントに迎合する形で、担任を交代するのは人事権の濫用だと思いますし、“追い出し部屋”への異動打診は、退職を強要するパワハラに該当する可能性が高いといえます」
A教諭に関係者を通じて取材を試みたが、断わりの言づてがあった。
Cさんにも電話すると、「弁護士に一任しており、答えられませんが、お書きになるときは必ず公平に書いてください」との回答だった。
A教諭の退職撤回を望む署名は、保護者から学園OBらに広がり、400筆以上が寄せられている。