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統一地方選後半戦「ポスター掲示板制作」で公金がっぽり「取材拒否」の“選挙ビジネス一人勝ち”企業
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2023.04.17 16:13 最終更新日:2023.04.17 16:17
4月11日、衆議院の千葉5区、和歌山1区、山口2区、山口4区の4つの補欠選挙が告示された。16日には全国の市区長、議員の選挙も告示され、4月23日の投票日に向けた統一地方選の後半戦がスタートした。
各候補者は物価高や雇用、医療福祉問題など生活密着型公約や、憲法、少子化、安全保障問題など国家レベルの公約を掲げ、声をからしている。しかし、候補者の訴えや政治スタンスには敏感だが、このビックイベントに投下される膨大な選挙マネーをめぐる“選挙ビジネス”にまで関心を向ける有権者は多くない。
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「かつて河井克行元法務大臣が、妻の案里元参院議員とともに、うぐいす嬢に法定上限を超える報酬を支払ったとして、公職選挙法違反に問われ、就任1カ月足らずで法務大臣を辞任しました。しかし、こうしたことは氷山の一角。選挙にカネはつきもので、選挙の裏側を覗けばそれは明らか。つまり、選挙をビジネスにするさまざまな業者が関与しているということです」
選挙にまつわる利権の実態に詳しい政治ジャーナリストの島村玄氏は、このように指摘する。河井氏の件とは、うぐいす嬢に対し、公職選挙法で規定されている1日あたり1万5000円を超えて、報酬を支給していた事実が発覚したことをいう。
同法によると、報酬が認められる運動員の数は9人を上限とし、ひとり1日あたり手話通訳者、及びうぐいす嬢の報酬は1万5000円。事務員は1万円と規定している。このほか、宿泊料1泊1万2000円、弁当3食分3000円、茶菓子500円などと定められている。
ところが「実際はこのようなものではない」と明かすのは、うぐいす嬢歴30年のベテラン女性だ。
「報酬はあくまで1万5000円ですが、実際に選挙が始まる前から候補者に密着して、声の出し方、言葉の使い方、当選するためのパフォーマンスなど、あれこれアドバイスしており、それらの謝礼を報酬とは別枠で受け取っています」
これら“割増料金”を含めて、2週間ほどの短期間にもかかわらず、数十万円の稼ぎになることもあるという。それでも「朝8時から夜の8時まで拘束され、選挙期間中は健康管理、とくに喉には気をつけないといけないしで、楽な仕事じゃないですよ」と、彼女は打ち明ける。だが、高収入からうぐいす嬢の志望者は多く、いまや過当競争気味だという。
候補者が雇ううぐいす嬢ですら、こうなのだから、選挙用ポスター掲示板や投票用紙、入場券など、自治体が投入する公費での制作物をめぐって、民間業者が受注に奔走するのは当然であろう。
「2022年7月の参院選では、ポスター掲示板設置に約47億円、選挙の啓発や告知に関するポスター作成に約5億円が投入されました。今回は地方選挙なので、国政選挙と単純に比較できませんが、それでも数億円単位のカネが投じられると見ていいでしょう」(島村氏)
これらの制作、設置は自治体が自らおこなってるわけではない。じつは、民間業者にすべて委託しているのだ。
「自治体が民間業者に業務を委託する場合、競争入札であれば価格を競うので、公平性は担保されます。しかし、多くは随意ないし指名入札が多いんです。そのため、随意契約では、業者の言い値で丸投げともなりかねないんです」(島村氏)
実際に茨城県の場合、かすみがうら市は契約金の内訳を示していない。同市では2022年12月に市議選がおこなわれたが、本誌は情報公開を要請し、ポスター掲示板及び投票用紙などに関する随意契約書を入手した。
契約書によると、ポスター掲示板401万160円、投票用紙32万6700円で、(株)タナカ(茨城県土浦市)に委託し、入場券は(株)Tkc(栃木県宇都宮市)に72万4460円で委託している。ただし、単価については黒く塗り潰され、内訳は示されていない。
「内訳金額は公表していないので、積算根拠も示していません。随意契約については、選挙が実施されるまでの期間が短いので、ポスター掲示板などは一般業者では間に合わず、専門業者に一括して委託したということです」(かすみがうら市選管担当者)
栃木県那須烏山市も、随意契約で選挙用ポスター掲示板を購入している。契約相手は、かすみがうら市と同じくタナカだ。同市は、2022年4月に実施された市議選で、ポスター掲示板103枚購入に対して184万6790円、7月の参議院選では、56万6500円でタナカに委託している。随意契約の理由について、同市選管担当者はこう説明する。
「ポスター掲示板は、風雨に対する耐水性、耐久性がある特殊な性質のものであり、これらの条件を備えた専門業者は県内にはなく、タナカとは従来から随意契約で委託しています」
もちろん、随意契約は法令に従った正規の契約だ。地方自治法施行令(随意契約)第167条2は、随意契約を認める例として「不動産の買入れ又は借入れ、普通地方公共団体が必要とする物品の製造、修理、加工又は納入に使用させるため必要な物品の売払いその他の契約でその性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき」としている。
たしかに選挙用ポスター掲示板は耐水性、耐久性が要求されるので、製造メーカーは限られる。しかし、随意契約によらない方式での委託をおこなっている自治体も、実際にある。茨城県日立市は、今回の統一地方選挙において、市長選および市議選を同時に実施するため、ポスター掲示板の入札をおこなっている。
「契約は指名入札方式で、2社が応札しましたが、落札会社はタナカでした。価格の点で、市とメーカーが折り合ったので委託しました」
日立市選管担当者は、タナカと交わした契約内容を公開し、こう説明する。それによると、市内465カ所にポスター掲示板を設置し、契約金額は市長選用ポスター掲示板は223万2000円、市議選用ポスター掲示板は1055万5500円となっている。タナカは市長選用投票用紙も、同時に217万400円で受注している。
しかし指名入札とはいえ、日立市の場合もタナカ1社に委託している。さらに、2022年7月に実施された参院選でも279万円、11月の県議選では246万4500円で、ポスター掲示板をタナカから購入している。
茨城県土浦市にあるタナカは、もともとマッチ箱の名入りラベルや、名入りのうちわの印刷を手がける印刷会社だったが、地元の選挙管理委員会からポスター掲示板製造の依頼を受けたことを契機に、急成長。耐水性、耐湿性に優れたポスター掲示板を開発し、いまでは全国シェア45%を占め、毎年のようにおこなわれている自治体選挙のポスター掲示板をほぼ独占的に受注しているのだ。タナカに取材を申し入れたが、「マスコミの取材はいっさい受けておりません」との回答だった。
茨城県選挙管理委員会にも公費及び入札方式について説明を求めたところ、「統一地方選挙にかかわる公費は、各市町村自治体が個別に負担するものであり、入札方式についても各自治体独自に実施していますので、県選管はどちらにも関与してません」とのコメントだった。
元川崎市選管事務局長を長らく務め、現在「選挙制度実務研究会」代表理事である小島勇人氏は、現状では随意契約も次善の策としてやむをえないとしながらも、こう説明する。
「本来なら、随意契約は避けたいところですが、競争入札がいいかというと、これも疑問です。万が一、ポスター掲示板を手がけたことのないメーカーが落札した場合、規格どおりの掲示板がつくれるのか、という不安がある。もしできなかった場合、選挙は無効、やり直しとなり、それこそ大問題。現在、候補者のポスターが貼れるのは、掲示板以外、認められていないので、なおさら実績のないメーカーには頼めない。となれば、過去の実績や信頼性から、随意契約で、となる。ただし、特定のメーカーに偏る弊害もあるので、東北、関東、関西といった各ブロックに、実績のあるメーカーがあることが望ましいですね」
選挙の裏側では、膨大な公金がやり取りされていることを有権者は知っておくべきだ。
取材&文・岡村 青
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