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「過酷労働・減便続出」のバス業界 年216人“マジ”採用の交通&運輸系会社が! 担当者に聞いた「待遇の差」
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2024.07.08 16:33 最終更新日:2024.07.08 17:51
2024年4月から、横浜市営バスは平日1日当たり290便の減便をおこなったが、そのわずか3週間後、さらに77便の減便に踏み切り、市民を驚かせた。バスの減便は、すでに地方都市だけの問題ではなくなっている。
4月17日付の読売新聞は、帝国データバンクの調査として《全国のバス会社127社に行った調査によると、2023年中に路線の減便や廃止を実施したのは98社(77%)に上った》と報じている。また日本バス協会は、現状の路線網を維持するのに、2030年度には3万6000人のバス運転手が不足すると試算。減便や廃止の流れは続くとみている。
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「横浜市営バスの追加減便は、160人の運転手が所属する保土ヶ谷営業所で9人が退職したことによるものです。その多くが20代と30代の若手で、早朝や夜間、休日勤務を負担に感じたようです。勤務時間が給料に見合っていないということも退職理由にあったと言われています」(週刊誌記者)
こうした深刻な運転手不足のなか、1年間で216人に上る大量のドライバーを採用した会社が話題になっている。岡山市に本社を置く、旅客輸送、物流などを手がける「両備グループ」である。
「同社は『宇宙一本気(マジ)な乗務社員採用』として、バスやタクシー、トラックなどの運転手を年間200人採用する目標を掲げ、2023年6月からテレビCMや説明会を通じ、全国展開で募集をおこないました。そして7月4日、216名の採用が決定したことを発表しました。応募総数は、じつに1054名だったそうです」(同前)
同業他社も驚き、問い合わせが殺到しているというこの採用プロジェクト。どのような“マジック”があったのか。同社の大上真司バス鉄軌道ユニット長に聞いた。
「コロナ禍で人流が止まったため、弊社もドライバーの退職が相次ぎ、バスの減便を余儀なくされました。減便したままでは、お客さまにご不便をおかけしてしまうため、公共交通機関の使命として採用に動き始めました。また働き方が変わる『2024年問題』では、輸送能力が5%ほど落ちるという試算もありましたので、そこを補うためにも、働いていただける仲間を全国から募りました」
「2024年問題」とは、運輸業界でささやかれる労働問題だ。2024年4月から、トラックドライバーの時間外労働の年間合計の上限が960時間に制限された。長時間労働の慢性化という課題を解消するための施策だが、ドライバーひとりあたりの労働時間が減るため、ユニット長が語るように、輸送能力減の心配もされていたのだ。
では、応募してきた1054人は、どういった方だったのだろうか。
「バスやタクシーを運転できる2種免許をお持ちの経験者は、20%ほどでした。『バス運転手は小さいころからの夢でした』という方も多くて、書店勤務や農協職員、社員の家族もいらっしゃいました。採用の内訳はバス部門が86名、タクシー部門が94名。希望される部署への配属になり、順次、2種免許を取得して“プロドライバー”になっています」
驚くのは、40代が採用の最多だということである。この年代の多くは子育て世代だ。転職には給料面などの待遇が気になるところだが、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、バス運転者の年間収入額は2021年が404万円。2014年からの各年統計を見ると、もっとも低い金額だ。
「バスやタクシーのドライバーは給料が低い、という固定観念で、夢をあきらめていた方も多かったと思います。弊社は業界平均より年収ベースで100万円ほど多くご提示させていただいています。
また、働き方の多様性も大切にしていて『親の介護が必要になった』『子育てが終わり、自分のペースで働きたい』『子育て中なのでたくさん働きたい』などのご要望に沿った職場環境にしています」
こうした好待遇の裏では、コロナ禍でバスを200両売却、バスの車庫を物流の車庫と統合するなどして経営体制を『筋肉質』にしたことが大きいという。会社は多角経営だが、ほかの部門の利益を輸送部門に回すことはないと話した。
バス、タクシー運転手不足の解消に向けた「解」のひとつになりそうだ。
( SmartFLASH )