2024年5月、北海道奈井江町の猟友会が報酬額の低さなどを理由にヒグマ駆除を辞退した。言うまでもなく、自分の命をかけて、熊の駆除を低賃金で引き受ける人は多くない。
この騒動から約2か月。このたび町は新たな対策を打ち出した。
「町は猟友会に駆除を依頼することを断念。報酬を増額したうえで、猟友会に属さない11人のハンターにヒグマ対応を委嘱しました。しかし、これで問題解決となるのかどうか。『まだ安すぎる』『ただのパフォーマンス』と非難の声があがっています」(週刊誌記者)
これまで町が猟友会に示してきた報酬額は、基本的な日当4800円に加え、出没地周辺の見回りなどの対策は3700円。つまり、出勤1日で8500円が支払われ、発砲した場合は1800円を加算するというものだった。
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「今回の町の発表によると、従来どおり4800円の日当を基本とする原則は変わらないのですが、そのうえで巡回やわなの設置などに1時間あたり1400円を加算。クマの駆除が切迫している場合は1.5倍になり、1時間あたり2100円を加算するというものです。
捕獲した場合、2万円が支払われるのは、これまでどおりです。料金改定後に8時間稼働した場合、最大で4万1600円が支払われることになります。時給換算では、およそ5000円ということになります」(同前)
これが命懸けでヒグマに立ち向かうハンターの “対価” としてふさわしいものなのか。
「クマという獣をたとえるなら、米軍の特殊部隊員、それも、牙と爪を持った “ランボー” を相手にするようなもんなんだよ」
5月、本誌の取材に熱っぽく語ったのは、北海道猟友会・砂川支部奈井江部会の山岸辰人部会長だ。
「彼らは音もなく近づき、どこから来るかわからない。腕3本分向こうの距離を、250kgあるクマが俺の横を匍匐前進して通りすぎても、察知できない。
俺たちハンターが風上にいたら、100%、やられるからね。みなさんは駆除と簡単に言うけど、どれくらい危険をともなうのか、理解できるかっていう話でもある」
山岸氏は、今回の町の増額案をHBCの取材にこう切って捨てている。
「要はただのパフォーマンスでしょう。実施隊をつくったという形が必要なだけで、それが使える、機能するかは別問題」
Yahoo!ニュースのコメント欄でも、町の対策を非難する声が多くを占める。
《ハンターも命を掛けてる訳だから報酬はそれに見合った金額にするのは当たり前》
《根室の軽トラを襲った熊に経験の浅いハンターで対処できるだろうか。(略)死人が出るよ》
《そもそもは命懸けでヒグマと対峙する猟友会の皆さんに対するリスペクトが欠けていて意思疎通がきちんとできていなかったのが原因なんでは?》
ハンターへの報酬は “命の対価” であることを忘れてはならない。
( SmartFLASH )