「ホッとしています。これで、もう少し代表でプレーできると思います」
そう言って、主将の吉田麻也(33)は笑顔を見せたが、目は真っ赤だった。
3月24日、日本はアウェーでの豪州戦に2‐0で勝利し、7大会連続7回めのW杯出場を決めた。しかし、ここに至る道程は険しいものだった。
初戦から3戦めまでで1勝2敗。ここまで追い詰められてW杯に出場した国はない。だが、4戦めから先の豪州戦までは破竹の6連勝。苦しみ抜いた末の出場権獲得だった。
だからこそだろう。吉田をはじめ、長友佑都(35)、伊東純也(29)らは、人目を憚らず感涙にむせんだ。
対照的だったのが、後半39分に途中出場して2ゴールを挙げた三笘薫(24)だ。「1分でも結果を残す」という自らの言葉を実行したヒーローは、試合後、本誌の求めに応じて笑顔でタオルを振り上げ、歓喜を表現してくれた。
三笘は川崎フロンターレのユース育ち。高3時、トップ昇格を打診されたが断わり、筑波大に進学。その理由は「プロでやる自信がなかった」から。
だが、大学4年間で最大の武器であるドリブルに磨きをかけ、川崎に再入団。1年めには新人最多タイの13得点、J1最多12アシストでベストイレブンにも選出された。
2021年夏にプレミアリーグのブライトンへ移籍し、現在は期限つきでベルギーのサンジロワーズで活躍中だ。
「得意のドリブルは、急激なギアチェンジで相手を置き去りにしたかと思えば、細かいステップで、うなぎのようにスルリスルリとかわしていく巧みさ。そのスタイルから “ヌルヌルドリブル” と呼ばれています。
以前、どんな選手を目指しているのかと聞くと、『いません。自分のスタイルを貫きたい』と、話してました」(サッカーライター)
これまでも「三笘をなぜ使わないのか」というサポーターの声は多かった。その疑問に三笘は、日本をW杯へ導く値千金のゴールで答えを出してみせた。