6月10日、埼玉西武ライオンズの新人選手が「一身上の都合」による自主退団を申し入れた。
昨秋のドラフトで育成ドラフト4位で指名され、國學院大学から入団した川村啓真元外野手(22)だ。
「川村選手は富山県出身で、國學院大学4年の春には東都大学1部リーグでベストナインと首位打者を獲得した左の好打者です。2021年のドラフト前には、野球評論家の井端弘和氏(元中日ほか)がスイングの速さを絶賛するなど、育成契約ながら注目を集めていました」(スポーツ紙記者)
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シーズン途中での異例の退団に、ネット上でも驚きや心配の声が上がった。その4日前ーー。
〈新型コロナウイルスの影響を受けた個人事業主らを支援する国の持続化給付金をだまし取ったとして、(山梨)県警は6日、東京都調布市、自称サービス業川村太晟容疑者(24)を詐欺の疑いで逮捕した。
発表によると、川村容疑者は2020年5月3日、山梨市に住む当時大学生だった20歳代の男と共謀し、虚偽の確定申告書などを用いて給付金を申請、同年6月2日までに男の口座に88万2千円を振り込ませてだまし取った疑い。容疑をおおむね認めている。〉(読売新聞 6月7日朝刊・山梨県版)
ここのところ相次いでいる、持続化給付金の不正受給事件だ。捜査関係者が語る。
「川村容疑者は、投資セミナーで知り合った山梨市の大学生に、助言や指導をおこなうようになりました。川村容疑者は山梨県にある大学で野球部に所属していたことがあり、それもきっかけになったのでしょう。川村容疑者は今回の犯行の主導的立場でした」
じつはこの川村容疑者の逮捕が、期待のルーキーの退団に深く関係していたという。前出のスポーツ紙記者が語る。
「川村容疑者は啓真元外野手の兄なんです。弟は國學院大学に在学していた2020年、兄のもとで、持続化給付金を申請し、受け取っていました。弟は当時は大学生だったのに、個人事業主であるかのように偽装したのです」
川村元外野手が球団に退団を申し入れた経緯を、NPB関係者が語る。
「兄が山梨県警から事情聴取を受けたのは、逮捕当日の6月6日でした。それを家族から知らされた川村は、自らも持続化給付金を不正受給していたことを、球団に申告したのです。球団は川村に、弁護士と相談して給付金を返還するよう指導しました。そのため逮捕はされませんでしたが、本人からの退団の申し出を受理しました」
6月17日、富山県の実家を記者が訪れると、家の中から川村と思しき人物が引き戸を開けて出てきた。だが、記者の存在に気づくとすぐに戸を閉め、その後は呼びかけや電話に応答することはなかった。
球団に、川村が持続化給付金を不正受給したことや、退団の経緯について確認を求めたが、〈川村啓真氏は、一身上の都合で当球団を退団いたしました〉とのみ回答があった。元神奈川県警刑事で、犯罪ジャーナリストの小川泰平氏がこう語る。
「給付金詐欺の多くは、指南役に依頼された“もらい手”が給付金を申請し、振り込まれたお金の15%~40%を指南役に渡します。申請者の手元にも現金が残り、詐欺の被害は個人ではなく国にしか発生しないので、罪を犯している意識はどうしても低くなります。
10億円を不正受給し、6月に逮捕された谷口光弘容疑者も、最初は家族に申請させ、そこからグループを広げていきました。家族だと警察に密告しませんから」
川村は2022年1月、地元市役所を訪問し、「期待されていると実感した。結果で恩返ししたい」と市長に意気込みを語っていた。だが、その裏では安易な“金儲け”に手を染めていたのだーー。
不正受給をおこなった当時在籍していた國學院大学硬式野球部の監督のもとには、退団後も本人からの連絡はないという。
川村の通算成績は、二軍戦31試合に出場し、打率.156、0本塁打。その才能を開花させることなく、自らバットを置いた。