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今岡誠、同じ打席のなかで狙い球を変えてくる「厄介」な相手【谷繁元信・強打者の弱点の見つけ方】

スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2023.02.03 11:00 最終更新日:2023.02.03 11:00

今岡誠、同じ打席のなかで狙い球を変えてくる「厄介」な相手【谷繁元信・強打者の弱点の見つけ方】

写真:望月仁/アフロ

 

 捕手として2963試合に出場し、デビューから27年連続本塁打のギネス記録、3021試合出場のNPB記録を打ち立てた、元中日ドラゴンズ監督谷繁元信氏。

 

 そんな不世出の名捕手が、これまで対戦してきた強打者・巧打者とどんな駆け引きをしてきたのかを、著書『谷繁ノート』にまとめた。誰も気づいていない弱点をどのように探っていったのか、一部を紹介しよう。

 

 

 

 今岡誠選手は、2003年、1番打者では難しいと言われる首位打者を獲得。2005年には、ポイントゲッターの5番打者で147打点を叩き出して打点王になっている。打順に応じたタイトルを獲得する活躍で、両年とも阪神のリーグ優勝に貢献した。

 

 2004年と2006年は中日がリーグ優勝。当時は「竜虎の争い」と言われ、そのカギを握る打者だったわけだ。

 

 今岡君はハイボールヒッターだった。高目をすごく上手に打つ打者だったから、基本は、やはり低目に投げさせることを考えてリードした。

 

 2003年は先頭打者本塁打7本、うち初球が5本。試合開始「用意ドン!」で変化球から入ることはあまりないから、ストレートを狙い打ちされたのだ。逆に言えば、ファーストストライクから積極的に打ち返せる準備をしていたし、振っているなかでタイミングを合わせていくタイプだった。

 

 このように今岡君は「思い切り」がよかった。

 

「思い切りがいい」打者は、配球を読んで狙い球を打つ。今岡君は自分のなかで本当に狙っている球種がカーブだったら、わざとストレートを打ってファウルにする。そのあと「ああ、打ち損じた」と、ひとりごとを言う。

 

 そうすれば捕手が「ストレートを狙っているな」と思って、次にカーブを投げさせたところを狙い打ちする。今岡君はそういう駆け引きもする打者だった。

 

 自分が狙っていない球種はもう見向きもしない。見向きもしないのだが、「見逃したからもう1球同じ球種でいこう」と思って続けると、今岡君は同じ打席のなかで狙い球を変えて打ってくる。同じ打席のなかで、打者が狙い球を変えてくるほうが捕手にとっては厄介だ。

 

 打者がこの球種を狙っていないとわかれば、その球種を何球か続けられる。しかし、狙い球を変えて、何の球種を待っているかわからないと捕手は嫌なのだ。

 

 だから、そのへんの見極めがすごく難しかった。今岡君とは毎回、腹の読み合いだった。

 

谷繁元信(たにしげもとのぶ)
1970年、広島県生まれ。右投げ右打ち、176センチ・81キロ。島根・江の川高校(現・石見智翠館高校)卒業。1988年、ドラフト1位で横浜大洋ホエールズ(現・横浜DeNA)入団。2002年、中日ドラゴンズに移籍。2014年からはプレーイング・マネジャーを務め、15年限りで現役を引退すると、翌年から専任監督に。通算成績は2108安打、打率.240、229本塁打、1040打点。通算3021試合出場は日本記録、捕手として2963試合出場は世界記録。ゴールデングラブ賞6回、ベストナイン1回、最優秀バッテリー賞4回受賞。オールスターゲーム12回出場。著書に『勝敗はバッテリーが8割~名捕手が選ぶ投手30人の投球術』(幻冬舎)、『谷繁流 キャッチャー思考~当たり前の積み重ねが確固たる自信を生む』(日本文芸社)がある。

 

●『谷繁ノート ~強打者の打ち取り方』詳細はこちら

( SmartFLASH )

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