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松井秀喜の弱点はやはり内角…外角を攻めつづけ、一転カットボールで討ち取った【谷繁元信・強打者の弱点の見つけ方】
スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2023.02.05 11:00 最終更新日:2023.02.05 11:00
捕手として2963試合に出場し、デビューから27年連続本塁打のギネス記録、3021試合出場のNPB記録を打ち立てた、元中日ドラゴンズ監督の谷繁元信氏。
そんな不世出の名捕手が、これまで対戦してきた強打者・巧打者とどんな駆け引きをしてきたのかを、著書『谷繁ノート』にまとめた。誰も気づいていない弱点をどのように探っていったのか、一部を紹介しよう。
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松井(秀喜)君の弱点は、やはり内角にあったと思う。体側に食い込んでいく球に苦手意識を感じた。高さ的に言うと、ベルトより少し高目。あとは沈む球だ。
もちろん内角が打てないわけではない。弱点と打てる箇所は紙一重。少し甘かったり、キレがなかったりすれば、あれだけの打者だからやはり打つ。でも、外角の甘めの球へのバットの出方よりも、内角のほうが私には窮屈に見えた。
たとえば、カットボールが武器の川上憲伸投手がマウンドにいたとき、私はどういうリードをして松井君を打ち取ったか。
松井君は基本、ファーストストライクから振ってくることが少ないタイプの打者。そこで、まずストレート系の球、ストレートかシュートで外角低目から入って、ストライクを取る。
最終的にカットボールで二塁ゴロに打ち取りたい。松井君にも当然「川上の決め球はカットボール」の意識がある。そこで、2球目以降も外角でカウントを整えていく。同じエリアからのフォークボールに引っかかってくれることもあった。
外角を攻めていて「そろそろ内角か」というところで、もう1球外角。「まだ外角が続くのか」と思わせておいて、一転カットボールで詰まらせるとか、見逃させるとか。そういう配球になった。
強打者は弱点を攻めるだけでは簡単に打ち取れない。弱点のエリアに違う球種を投げさせたり、ボール球を含めた違うエリアに球を投じさせる。松井君の弱点は内角。「弱点」の内角を、「さらなる弱点」にするような形を取るのだ。
松井君だけではないが、左打者は投球が体側に抜けてきそうな左投手を嫌がる。だからバッターボックスでも松井選手は本塁から離れて構えたし、バットが長かった。
余談だが、松井君は若いころ、焼き肉のたれのCMに出演していて、「黒だれ」と「赤だれ」があったのだが、松井君がバッターボックスに入るとき、「きょうは何だれですか?」などと話しかけた。集中力をそごうと思ったのだが、そんなときに限ってよく打たれた記憶がある(苦笑)。
谷繁元信(たにしげもとのぶ)
1970年、広島県生まれ。右投げ右打ち、176センチ・81キロ。島根・江の川高校(現・石見智翠館高校)卒業。1988年、ドラフト1位で横浜大洋ホエールズ(現・横浜DeNA)入団。2002年、中日ドラゴンズに移籍。2014年からはプレーイング・マネジャーを務め、15年限りで現役を引退すると、翌年から専任監督に。通算成績は2108安打、打率.240、229本塁打、1040打点。通算3021試合出場は日本記録、捕手として2963試合出場は世界記録。ゴールデングラブ賞6回、ベストナイン1回、最優秀バッテリー賞4回受賞。オールスターゲーム12回出場。著書に『勝敗はバッテリーが8割~名捕手が選ぶ投手30人の投球術』(幻冬舎)、『谷繁流 キャッチャー思考~当たり前の積み重ねが確固たる自信を生む』(日本文芸社)がある。
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