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【WBC】準々決勝進出の豪代表・投手コーチが語っていた「勝てない」を翻す「意外な結果」

スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2023.03.17 06:00 最終更新日:2023.03.17 06:00

【WBC】準々決勝進出の豪代表・投手コーチが語っていた「勝てない」を翻す「意外な結果」

談笑する吉田正尚と、豪ダリル・ジョージ内野手(写真・AP/アフロ)

 

 WBCのプールBにおいて、日本代表は4勝0敗で準々決勝進出を決めた。同じプールBから進出したもう1チームは3勝1敗のオーストラリア。個人的には、この結果はかなり意外なものだった。

 

 オーストラリア代表は2022年11月にも、札幌ドームで日本代表と2試合を戦った。1戦めは8対1、2戦めは9対0でいずれも日本が勝利。じつはこのとき、日本ハムなどNPBで8年間プレーした、マイケル中村氏(NPB通算104セーブ、31ホールド)が、オーストラリア代表の投手コーチとして来日していた。

 

 

 中村氏は父が日本人、母がオーストラリア人で、日本生まれのオーストラリア育ち。大学からアメリカに渡り、MLBまで昇格した後に、ドラフトで日本ハムに入団している。日本国籍を有していたため、ドラフトで獲得することが可能だった。私は、彼が日本で現役選手だった期間、代理人およびマネジメント業務をおこなっていたので、旧知の間柄である。投手コーチとして来日すると聞き、すぐに本人にも連絡を入れて会う約束をした。ちなみにWBCの東京ラウンドでは、本人の都合により代表チームには帯同していない。

 

 札幌で久々に会った際には旧交を温めつつ、オーストラリア代表の話になった。同代表は、2004年のアテネ五輪では準決勝で日本を破っており、日本代表にとっても油断できない相手である。札幌での2試合では日本が大勝したが、オーストラリアがフルメンバーかどうかも気になった。

 

 そのあたりを中村氏に尋ねると、「今回のオーストラリア代表は、日本に勝てるメンバーにはならないだろう」と弱気だった。かつては日本も敗れていると言及すると、「当時はジェフ・ウィリアムス(元阪神)など、いい選手も多かった。今回は残念ながらそこまでの戦力ではない」とのこと。メジャーで活躍するリアム・ヘンドリクス選手(シカゴ・ホワイトソックス。MLB通算115セーブ)が参加すれば、大きな戦力となるが、おそらく参加しないだろうとも語り、実際に今回のメンバーのなかに彼の名はない。

 

 そして中村氏は、「1次予選で、オーストラリアが日本と韓国に勝てる可能性は低い」と控えめに分析していたが、結果は違った。日本戦を除き、初戦では接戦の末に韓国を破ったほか、いずれも勝利して、準々決勝に進出したのである。その準々決勝では接戦の末キューバには敗れたものの、随所に好プレーが出るなど1点差の好ゲームだった。

 

 古い話になるが、私は2001年にアメリカの独立リーグ球団で職員をしたことがある。このチームには、オーストラリア・リーグの直近のシーズンでMVPを獲得した捕手が在籍していた。守備面では、捕手としての技術やスローイングはレギュラーと言ってもいい実力を持っていたが、打撃が弱かった。フリー打撃でも滅多にオーバーフェンスしないのである。守備を買われてのMVPだったのかもしれないが、正直なところ、米国独立リーグでも厳しい打力と言わざるを得なかった。

 

 翻って3月12日の日本対オーストラリアの試合では、スコアこそ大差がついたとはいえ、最終回のアレックス・ホール選手の本塁打が印象的だった。髙橋宏斗選手の速球に力負けせずに、右中間スタンドに打ち返した。さらに、ホール選手もこの日はDHだったが本職は捕手、しかも直近のオーストラリア・リーグのMVPだと聞いて、個人的には感慨深いものがあった。22年前のMVP捕手とは段違いのパワーを見せつけられたからだ。

 

 すでに野球強豪国と言えるオーストラリアだが、今回が初の1次予選突破だったように、まだまだ発展の余地はあるだろう。思えば日本が入ったプールBでは、オーストラリアの活躍に加えて、チェコがとてもいいチームだったことも印象的だった。プールAでは、MLBで野茂英雄氏とバッテリーを組んでいたマイク・ピアザ氏が監督を務めるイタリアが勝ち上がり、準々決勝で日本と対戦する。ヨーロッパの各国においては、今回のWBCをきっかけに野球が少しでも広まってくれれば、野球ファンとしては嬉しい。

 

 ほかのスポーツに比べれば、国際化が遅れていると言われてきた野球。WBCも、第1回は2006年のことで、まだ歴史は浅い。この先、さらなる国際化が進み、各国の特色がよりいっそう出るようになれば、国際大会はさらに面白くなりそうだ。

 

(文・小島一貴)

( SmartFLASH )

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