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中畑清×篠塚和典 巨人レジェンドOBが古巣に喝!「阿部新監督は原野球の真似だけはするな!」

スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2023.10.21 06:00 最終更新日:2023.10.21 06:00

中畑清×篠塚和典 巨人レジェンドOBが古巣に喝!「阿部新監督は原野球の真似だけはするな!」

3年契約の2年めでの辞任となった原辰徳監督。阿部慎之助新体制となり、阿波野秀幸投手コーチ、大久保博元打撃コーチも退任

 

 2023年のプロ野球セ・リーグは、阪神が18年ぶりのVに沸く一方、ライバル巨人は4位で終戦。同一監督の2年連続Bクラスは球団初で、原辰徳監督(65)は契約満了前に辞任した。チーム打率.252、本塁打164本とリーグ1位も、得点523は3位。投手ローテーションの未確立もシーズン中から課題に挙げられてていた。

 

 そんな古巣の体たらくに立ち上がったのは、1980年代の巨人黄金時代に人気を誇った“絶好調男”中畑清(69)と、セ・リーグ首位打者に2度輝いた篠塚和典(66)。愛ある叱咤激励対談の“開幕”だ。

 

 

中畑 原監督の采配は、以前は万事に功を奏していたんだが、それが逆行してしまったのがここ2シーズンだった。バントや走塁など細かい部分で失策が目立てば、投手交代や代打起用も裏目に出る。悪循環にはまった気がする。チーム打率と本塁打数は1位ゆえに、局面での勝負弱さが目立った。象徴的だったのは、0対1で連敗した横浜DeNAとの2試合(9月25、26日)。CS出場がかかっていたのに、淡々と試合をして負けたように見えた。「絶対打ってやる」という覇気がなければ、四番の岡本和真(27)を軸とする強力打線も脅威でなくなる。

 

篠塚 若手に勢いがあって、中堅が着実に仕事し、ベテランが勝負を決めるという、本来、強いチームにあるスタンス、メリハリがなかったですよね。誰かのタイムリーにみんなで喜ぶのはいいんだけど、内心「クソーッ」と思う選手がいてもいいんです。まずはチーム内で競い合って、高め合うんだから。負けているときに、ベンチで白い歯を見せている場面も目にした。我々の時代は、ベテランになってもミスすれば、ベンチに戻るのにバツが悪かったですよね。

 

秋広は規定打席にわずか4打席足りず

 

中畑 なぜ、最近そんな雰囲気になっちゃったのかというと、二軍の練習量が少なくなったんだよ。「練習は嘘をつかない」という言葉は、シノ(篠塚)がいちばん好きな言葉なんだけど、心・技・体の「体」ができていなければ、プロでトップは獲れない。

 

篠塚 二軍の練習量が減り、質が劣化してしまっている。というのも、二軍の試合数が最近は年間100試合以上もあるから、練習に割く時間が激減したんです。二軍のキツい練習を味わった者が、一軍に上がって結果を残したとき、おのずとレギュラーとしての持久力がついているもの。最近の若手は一軍に上がったらポッと活躍するけど、すぐに息切れしてしまう。

 

 原監督が篠塚打撃コーチと臨んだ第2回WBC(2009年)で、侍ジャパンが世界一を達成できたのは「試合ごとに状態のいい選手を使ったから」だという。だがそれは「一発勝負の国際大会で、寄せ集めの日本代表だからこそ通用した」のだと、篠塚は説く。

 

篠塚 ここ数年の巨人のように若手、生え抜きを育てる目標を掲げているのなら、WBCのような起用法は当てはまらない。たとえば、入団3年めの秋広優人(22)が、踏ん張りどころという大事な時期にスタメン落ちした試合があった。彼の将来を見通せば、もったいないことなんです。

 

中畑 秋広は初の三番に抜擢されて、タイムリー三塁打を含むマルチ安打を放った翌日、一死一塁で送りバントを失敗した。大きく育てようという期待の選手に、バントのサインを出すなんて愕然としたよ。しかも絶好調なのにね。

 

篠塚 今季は打率.273だったのに、規定打席にわずか4打席足りなかったですからね。

 

中畑 バットマンにとって、規定打席ってすごい勲章なんだよ。「レギュラーを獲ったぞ!」と、ワンランク上がる自信になるんだけどね。秋広は“身長2m超のバットマン”で、それだけでもスター性があるんだから、我慢して使い続けて一流に育ててほしいんだよ。ルーキーの浅野翔吾(18)にも残念な場面があった。8月18日の広島戦で、プロ初本塁打を放った後に代打を送られた。“一年坊主”が次の打席、どんな表情で入るのか、ファンはそこも注目して観てる。それが代打で、拍子抜けとなった。期待感というのは大事にすべきファン心理なのに、原監督はファンの期待を見失っていた気がする。いい役者に成長するチャンスを剥奪しちゃいけないよ。

 

篠塚 私が巨人の打撃コーチ時代(2007~2010年)、我慢して起用し続けたのが坂本勇人(34)です。入団1年めからスター性があり、原監督と私でコンセンサスが取れていたので、指導も一貫してできた。勇人は努力型の人間ですし、練習の虫になって食らいついてきましたね。

 

中畑 俺は横浜DeNA監督時代(2012~2015年)、まだ一軍と二軍を行ったり来たりしていた梶谷隆幸(35・現巨人)のスタメン起用をコーチ全員から反対された。でも「梶谷のような選手を一人前にできなければ、チームに未来はない」という信念で、結果を出すまで、1年半使い続けたんだ。筒香嘉智(31・SFジャイアンツ傘下)を、日本を代表するスラッガーに育てるのにも時間がかかった。素材は素晴らしいけど、気持ちが優しく、高めの球がウイークポイントだった。だから、あえてキャプテンに指名したんだ。最初は「できません」と言ってたけど「やってみろ、プレーで引っ張れ!」と。彼はもう一度這い上がってくると思うよ。

 

篠塚 勇人も前半戦はスランプで苦しみましたが、若手時代の練習量と試合経験があったから、後半は復調できたと思います。結果としてサード・勇人、ショート・門脇誠(22)という新三遊間となり、収まりはよかったと思う。あとは、門脇が来季どれだけ持続できるかです。来季、阿部慎之助新監督(44)が辛抱して使えるかにかかってくるでしょうね。

 

原監督の采配をいかに反面教師にできるか

 

 優勝した阪神の戦いぶりは、どう映ったのだろうか?

 

中畑 岡田彰布監督(65)の方針に迷いがなかった。最初に「アレ」って言って、年間、通して使い続けたからな。中野拓夢(27)のセカンド定着もそう。彼の不安を和らげるよう、年間通して使い続けた。そして、ショートは木浪聖也(29)、小幡竜平(23)が競い合った。使い続けることで相乗効果を生むお手本だ。監督が信念を貫くと、選手も肩に力が入りすぎる恐れがあるけれど、そこは関西のユーモアがあるからね。「アレ」プラス「お~ん」も、監督の談話に載っちゃうわけじゃない。そうなったら強いよ。

 

 その岡田阪神に、阿部新監督は立ち向かうことになる。

 

中畑 とにかく「阿部カラー」を確立しろよと。原前監督へのリスペクトと感謝は当然、あるだろう。でも、2季連続Bクラスの要因は徹底検証しなければダメ。つまり、今季の起用法や采配をいかに反面教師にできるかだよ。

 

篠塚 高橋由伸(48)の監督初年度は、現役引退と同時にコーチ経験なしで、いきなり監督になった。それに比べれば、阿部監督は二軍監督、一軍のコーチ経験も積んで、準備期間がありますから。

 

中畑 監督の方針なら「罰走」だって、やっていいと思うよ(※阿部監督は二軍監督時代、早稲田大学との交流試合に敗れた選手たちを罰として走らせたことがある)。そういう空気を作らないと、巨人は変わらないかもしれない。

 

篠塚 いまの若い選手は、自分の限界がどこまでかを知らないと思う。「もうやめようか」とコーチに言われれば、「ハイ」とやめてしまう雰囲気です。戸郷翔征(23)も、今季、そんな場面がありましたね。

 

 9月30日の中日戦、戸郷は自身最多の13勝めをかけて先発。1対0の7回無失点で交代したが大勢(24)、中川皓太(29)が崩れて逆転負け。結果12勝止まりだった。

 

篠塚 キャリアハイをかけて登板した試合を86球で降板した。私は解説をしていて「続投だと思います」と言っていたから、驚きました。もし交代と言われても「続投させてください」と言ったっていいんです。結果、打たれても、チャレンジしての被弾はプロとしてはありだと思いますから。

 

中畑 「もう無理です」と選手が言うかなあ。そんなこと、我々世代の辞書に書いてなかったけどね。あの定岡正二(66)ですら「行きます(続投します)」って言ったんだから。

 

篠塚 終盤にピンチを迎えて、中畑さんと我々、内野陣がマウンドを囲んだときでしたね。

 

中畑 我々の前では「もう限界です」って顔をしてたのに、藤田元司監督がマウンドに来たら、目を見開いて「大丈夫です」って言うんだから。俺たち内心「ぜんぜん違うじゃねえか!」と思ったよな(笑)。でも、藤田監督が「(守護神の)角(盈男)に代えようか?」と言ったら、即座に「お願いします!」って(笑)。俺らグラブで顔隠して爆笑したな。

 

 両氏は、大谷翔平(29・エンゼルス)が今季終盤、右肘手術で戦線離脱したことに関しては「超一流が自分で限界を決めずにチャレンジし続けた結果だ」と絶賛する。

 

中畑 WBCでMVPを獲り、シーズンではダブルヘッダーの初戦で完封して、次戦で2本塁打だよ。「休むことはファンに失礼だ」という気持ちなんだと思う。その意味で、大谷はもはや“ON級”の宿命を背負っているんだよ。

 

篠塚 みなさん、大谷は宇宙人と思うかもしれませんが、そんな彼が陰でどれだけ努力と練習をしているかということ。「見せる」「見られている」というプロ意識がズバ抜けて強いからこその、あのパフォーマンスだと思います。

 

黄金期の礎を築いた地獄の伊東キャンプ

 

 その「努力と練習で培った心技体の強さ」を現役時代に実感してきた両氏は、「秋の猛練習で体を作るのが不可欠」と口を揃える。2人が経験した1979年秋のキャンプは球界初の試みで、長嶋茂雄監督直々の猛特訓で若手18人が鍛えられた25日間は、後に「地獄の伊東キャンプ」として語り継がれる。

 

 1979年10月28日、初日夜のミーティングで長嶋監督は、こう宣言したという。

 

《この秋季キャンプは技術を磨くのではなく、心を鍛えるキャンプだ。猛練習の中から「俺がレギュラーを取ってやる」という意識を自分自身に見出してほしい。どんな艱難辛苦にも耐えて、生き抜く心身をつくるんだ》(鈴木利宗著『地獄の伊東キャンプ完全版 長嶋茂雄が闘魂こめた二十五日間』河出書房新社より)。

 

中畑 いまだって、伊東キャンプのような血と汗と涙の猛特訓をやろうと思えばやれるんだよ。問題は、その意識があるかないかだけ。というのはね、秋はまだ、最悪、体は一回、壊れていい時期なんだよ。

 

篠塚 自分の心身の強さや、限界がどれくらいなんだっていうのを、秋のうちに知ることが大事なんですよね。

 

 中畑はマンツーマンの千本ノック、篠塚は上下左右あらゆる角度のティーバッティング……18人が体力の限界まで追い込んだ。巨人は翌年、3位に浮上するも、長嶋監督は解任。1981年に藤田監督のもとで、伊東キャンプの参加選手が日本一を勝ち獲ったのだ。

 

中畑 秋に、レギュラー未満の若手を含めてどれだけ密度の濃いメニューをこなせるか。あの伊東キャンプでは、「これだけやったんだから絶対に負けるわけない」という自信を植えつけられたんだよな。

 

篠塚 本当の限界までやりましたからね。野球の「走攻守」は体全体を使いますが、体幹の強さがマスト。秋にそういう目的でどこまでやれるかが、優勝への第一歩でしょうね。

 

中畑 阿部新監督の「最高です!」を見たいね。でも、初勝利くらいじゃ言えないだろうから、やっぱり「アレ」したときかな!? あっ、「アベで!」って本人は言ってたけど(笑)。

( 週刊FLASH 2023年10月31日号 )

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