阪神タイガースが日本一となった2023年のプロ野球。MVPと新人王を同時受賞した村上頌樹(しょうき)投手やベストナインに選ばれた近本光司外野手、大山悠輔内野手ら選手の奮闘はもちろん、2008年以来の阪神監督就任となった岡田彰布(あきのぶ)監督の采配も専門家によって高く評価されている。ここで、四球重視や打順の固定など戦術面での岡田監督の辣腕ぶりを、勝率やチーム成績から振り返ってみたい。
2023年レギュラーシーズンにおける阪神の勝率は.616で、1970年以降の阪神の勝率としては3番めに高い。1970年以降の最高勝率は、2003年に星野仙一監督の下でリーグ優勝したときの.630。阪神が球団史上初めて日本一になった1985年は.602だ(第2次吉田義男監督時代)。
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岡田阪神の前回のリーグ優勝は2005年。このときの勝率は.617で、1970年以降で2番めに高かった。このほか1970年以降に阪神が勝率6割を超えたシーズンは、1970年の村山実監督時代に.611、1976年の第1次吉田監督時代に.615があるが、いずれも首位と2ゲーム差の2位だった。
岡田監督の優勝年の2位とのゲーム差は、2023年が11.5で、2005年は10.0。両年は勝率、ゲーム差ともに似通っている。チーム成績では、2005年はチーム打率.274、本塁打140本、防御率3.24。2023年はそれぞれ.247、84本、2.66であり、一見、2023年の打撃成績は見劣りする。しかしリーグ順位で見てみると、2005年はそれぞれ3位、4位、1位であるのに対し、2023年は3位、5位、1位とやはり類似している。
どちらの年も投手力を中心に戦い、攻撃では工夫して点を取るというスタイルだったという印象だ。2023年のチーム得点数555はセ・リーグ1位で、2005年の得点数731もセ・リーグ1位だった。
阪神監督としての岡田監督の通算成績は、6シーズンで478勝360敗23分、勝率.570となる。かつて落合博満監督時代の中日ドラゴンズは、「チームが強すぎてつまらないから客が入らない」とまで言われたが、その落合監督の通算成績は、8シーズン629勝491敗30分、勝率.562である。3期にわたって巨人を率いた原辰徳監督は、17シーズン1291勝1025敗91分、勝率.557(2014年に欠場期間あり)。第1次岡田監督時代は落合氏、原氏とライバル関係にあると見られていたが、通算の勝率では、阪神時代に限れば、岡田監督が3人の中ではトップとなる。
岡田監督はオリックスでも監督を務めた。2010~12年の3シーズンで、188勝214敗21分、勝率は.468(2012年は9月25日から休養)だった。阪神、オリックスを通じた岡田氏の監督としての通算成績は、9シーズン666勝574敗44分、勝率.537となる。ちなみにオリックスは、岡田監督就任前の8年間、そして退任後の8年間、それぞれAクラス入りは1度ずつしかない(2008年、テリー・コリンズ監督/大石大二郎監督の2位と2014年、森脇浩司監督の2位)。いわゆる暗黒時代の真っただ中ではあった。
2023年、そのオリックスをリーグ3連覇に導いた中嶋聡監督は、4シーズン(2020年はシーズン途中から代行)通算で261勝208敗27分の勝率.534であるが、3連覇中に限れば232勝173敗24分、勝率.573となる。阪神時代に限れば、岡田監督の勝率は中嶋監督の3連覇期間のそれに匹敵する。
セ・リーグに再び目を向けると、2016~2018年に広島をリーグ3連覇に導いた緒方孝市監督は、5年通算で398勝303敗14分、勝率.568。少し古いが1990年代にヤクルトで黄金時代を築いた野村克也監督は、ヤクルト時代に限れば9年間で628勝552敗7分、勝率.532である。
野村監督のライバルといわれた西武時代の森祗晶(まさあき)監督は、9年間で8度もリーグ優勝しているだけあって、通算673勝438敗59分、勝率はなんと.606。ただ、横浜で指揮を執った2年間を加えると11シーズン通算で785勝583敗68分、勝率は.574となる(横浜での最終年となった2002年は9月26日より休養)。なお、最近のパ・リーグでは7年間でリーグ優勝3度、日本一5度という工藤公康監督(ソフトバンク)が、通算558勝378敗42分、勝率.596を記録している。
素晴らしい実績を残している監督たちと比べても、とくに阪神時代に限れば、そん色ない通算勝率を記録している岡田監督。2024年以降、どのようなゲームを見せてくれるだろうか。
( SmartFLASH )