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夏目漱石の変人ぶり…ひ孫が明かす「“吾輩”の猫の、本当の名前は…」
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2021.02.28 20:00 最終更新日:2021.02.28 20:00
「漱石の子孫だと知られると、必ず『好きな作品はなんですか?』と聞かれるのですが、すみません、じつはほとんど最後まで読んでいないんです(笑)」
そう語るのは、夏目漱石のひ孫で、音楽プロデューサー・作編曲家として活躍する夏目哲郎氏(41)だ。じつは、漱石の子孫には音楽に携わる人間が多く、夏目氏もドラマや映画に楽曲を提供したり、演奏指導もおこなっているという。
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「ミュージシャンだと知られると、『作詞はしないの?』ってよく聞かれますよ。たまにやりますけど、けっこう難しいんですね。あと、難しい漢字の読み方を知ってると思われて、辞書代わりに聞かれたりとか。いや、僕は漱石じゃないのでわかりません(笑)」
小説とは無縁な哲郎氏。だが、漱石の文章には自分と同じ “匂い” がするという。
「読んでみると、なんだか恥ずかしくなってしまうのも、漱石の作品を最後まで読めない原因のひとつかもしれません。でも、『吾輩は猫である』は好きですね。『吾輩は猫である。名前はまだない』という出だしが、とてもキャッチーですから」
この『吾輩は猫である』については、夏目家で語り継がれてきた “秘話” があった。
「漱石が実際に飼っていた猫には、じつは名前があるんですよ。曽祖母の鏡子が子どもたちに話したところによると、なんでも、その名前は『猫』だったというんです。理由は、名前をつけるのが面倒くさかったから。それで小説では、『名前はまだない』と書いたみたいですよ」
猫に「猫」と名づける変人ぶりは、漱石の孤独へとつながった。
「当時の作家は、すべてを頭のなかで構築して作品にするわけですからね。どうしても孤独になるし、偏屈にもなるでしょう。僕は、漱石とはまったくジャンルは違いますが、せん越ながら同じクリエーターとして、孤独にならざるを得なかった漱石の気持ちは、少しわかります。
実際にお付き合いをした当時の人たちのなかには、漱石にあまりよくない印象を持った方もいたようです。ただ、作品を通して漱石に触れてきたファンの方は本当に漱石のことを思っていて、お墓参りに行ってもいつも誰かがピカピカに掃除してくださっています。
これほど時を超えて愛される作品を残したことを考えれば、漱石のひ孫であることを、本当に光栄でありがたく思います。僕なんかが漱石のひ孫なんていうのも、少しおこがましいような気持ちはありますよ。でも、これからもっと大事にして、僕自身も人に愛される作品を作り続けたいですね」
孤独でも偏屈でも、みんなに愛される作品を作った漱石は、ひ孫にとっても “偉大なクリエイターの先輩” というわけだ。
写真・KAJII