映画や舞台、テレビなどで幅広く活躍している俳優の窪塚俊介。特に2020年に亡くなった大林宣彦監督との縁は深かった。
『22才の別れ』(2007年)で初めて大林監督作品に出演、その後も『転校生―さよなら、あなた―』(2007年)、『野のなななのか』(2014年)、主演を務めた『花筐/HANAGATAMI』(2017年)、大林監督の最後の作品となった『海辺の映画館―キネマの玉手箱』(2020年)と、大林作品には欠かせない役者となった。
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窪塚は慶応義塾大学理工学部卒業。“理系俳優” の意外な一面を聞いた。
――窪塚さんは気象予報士の資格を持っているとか?
そうなんです。父親がもともとエンジニアなので、自然界の話のほうが好きというか。親父の血なんでしょうね。
――なんで気象予報士の資格を取ろうと?
この世界に入って最初にお世話になった事務所をやめた後、9カ月ぐらい、ちょっとフラフラしてたんですよ。
そのとき友達が就職試験用かなにかで、履歴書を書いていたんです。僕は履歴書を書いたことがなかったので、自分が資格欄に書くことが自動車免許ぐらいしかないなって気がつきまして。
そのときに何か資格を取りたいなと考え、気象予報士の資格が頭に浮かんだんです。自分の興味があるものじゃないと、なかなか資格を取ろうという気にはなりませんよね。
それから試験に向けて勉強をはじめたんですが、楽しかったな。やっぱり自分が興味のあることを勉強するのは楽しいって思いました。
――気象予報士の試験は合格率5%と非常に難度の高い試験だといわれてますが?
よくそういわれますが、受験する分母が多いからだと思います。理系じゃないとちょっときついかもしれませんが、勉強したらおそらく合格するんじゃないでしょうか。
気象予報士の試験は小学生から受けられるので、僕が受験したとき、前の席に座っていたのは、ジャイアンツ帽をかぶった小学生みたいな男の子でした(笑)。とにかく時間がない試験なんで、ペンが止まったらちょっとまずい、書いてないとダメという試験です。
その野球帽の男の子は、僕がまだ問題を解いてるのに、すでにペンを置いてました。僕はこの一度めは落ちて2度めで合格したんですが、あの男の子はきっと受かったんでしょうね。
――放送中のNHK朝の連続テレビ小説『おかえりモネ』は、主人公の永浦百音が気象予報士を目指す物語。気象予報士は話題になっている資格です。
なにか役に立つことがあるかなって淡い期待を抱いたんですが、そんなことはなかったです。現場などで「窪塚~。今日の天気はどうなんだ?」と聞かれても、そこで答えられる資格じゃないですからね。なにかほかの資格と交換したいです(笑)。
――もしかしたら、気象予報士の役がくるかも?
資格を持ってなくても役作りは難しくないよう気がしますが、“役得” になったら嬉しいですね(笑)。
――ほかに理系ならではのエピソードは?
小学生のころは、国語が苦手というか、全然好きじゃなかったんですよ。読書感想文が苦手で、3~4年間、同じ本で読書感想文を書いていたぐらい。
格好よく言えば、理系の問題は答えが出るというか、正解があるじゃないですか。でも国語の問題は「このときの作者の気持ちは?」とか、正解が1つじゃないというか。小学生のころは、どうも馴染めなかったですね。
――いまは完全に文系?
そうですね。ただ、本を読むことがコンプレックスになっていて、20歳ぐらいからはその反動で、すごく本を読むようになりました。時間に余裕があれば、本を読んでいますね。
1冊読んだら次の本という感じではなくて、3冊ぐらい同時に読んでいます。かばんに入っているのはこの本、家で読むのはこの本みたいに、同時に何冊も読むのが癖づいています。
有名な本ですが『サピエンス全史』。あれはすごかった。おもしろかったですね。佐藤究さんの小説もおもしろいです。
でも最近は、どっぷり絵本ですね。とてつもない数の絵本を読んでいます。子供を寝かしつけるのに絵本を読んでいるんですが、僕の読み方もだんだん上手になってきて、自分のトレーニングみたいで楽しいんです。
でも、のってきたところで子供が寝ちゃうと、嬉しいような悲しいような気持ちになったりして。子供は本当にかわいいんで、寝顔を見ると優しい気持ちになりますね。
くぼづかしゅんすけ
1981年11月6日生まれ 神奈川県出身 2005年、映画『火火』でスクリーンデビュー。映画『転校生―さよなら あなた―』(2007年)、『野のなななのか』(2014年)、『花筐/HANAGATAMI』(2017年)、『海辺の映画館―キネマの玉手箱』(2020年)などの大林宣彦監督作品に出演。2021年はパルコ劇場で上演された舞台『ピサロ』や、映画『女たち』に出演するなど、多方面で活躍中