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ジャニーズ退社の滝沢氏に注目される「火山活動家」のキャリア 調査をともにした専門家は「『火山大使』になってくれたら」
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2022.11.04 22:07 最終更新日:2022.11.04 23:00
11月1日、滝沢秀明氏がジャニーズ事務所の副社長および、ジャニーズJr.を育成・プロデュースする会社「ジャニーズアイランド」の社長を退任することが発表された。27年間、所属していたジャニーズ事務所から離れることとなる。今回の発表では、滝沢氏から退任の意向があり、「次のステージへ進むことを取締役会にて承認」したとしている。
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滝沢氏の「電撃退社」が発表されると、SNSでは労いの言葉とともに、「火山活動家」としての滝沢氏に期待する声が上がった。
《タッキーお疲れ様でした 探検家タッキー復活しちゃう?行っちゃう?火山探検》
《それでタッキーはどうするん? 火山活動家になるん?》
《タッキーがマジで火山活動家になったらめちゃおもろい》
《タッキー 火山活動家に転身したら本当にカッコいいと思う 自由に生きて!》
滝沢氏は2013年7月、『テレビ未来遺産』(TBS系)でバヌアツ共和国のマルム火山に接近したのをきっかけに、火山の魅力に取りつかれた。2017年の段階で、世界に5カ所しかない溶岩湖のうち4カ所を制覇。2018年1月には『クレイジージャーニー』(TBS系)に出演し、ガスマスク姿で火山の噴火口に近づく様子が放送された。2018年5月には、NHKBSプレミアム『滝沢秀明の火山探検紀行』で、鹿児島県沖の活動的な海底火山「鬼界カルデラ」の水深20mに潜り、岩石を海底から採取。およそ7300年前以降にできた世界最大級の溶岩ドームだと判明し、その成果が英科学誌の論文にもなっていた。
滝沢氏の火山活動家・研究家としての資質について、『火山探検紀行』放送当時、神戸大学海洋底探査センターのセンター長だった巽好幸(たつみ・よしゆき)氏(現・客員教授、ジオリブ研究所所長)に話を聞いた。
――滝沢さんが2017年秋の「鬼界カルデラ」の溶岩ドーム調査に参加したきっかけは?
「私は、NHKさんの記者さんと、以前から火山のことで連絡を取りあっていました。ちょうど私たちは鬼界カルデラを探査していて、大きさとか、ドーム状の塊がある、といったことはわかっていたのですけど、実際に岩石を採取してみないと、その正体がわからない。船では浅すぎて採れない。潜るには水深20mぐらいあるので、素人では難しい。それでNHKさんとの話し合いで『タッキーに潜ってもらいますか』という話になったんです。そうしたら、タッキーも興味を持ってくれました。彼はダイビングの免許をわざわざ取りに行って、潜ってくれたんです。
2016年から調査は始まっていて、鬼界カルデラのなかに世界最大規模の溶岩ドームのような地形があることはわかっていました。でも、どんな岩石で実際に溶岩ドームなのかどうかは、まったくわかっていませんでした。溶岩ドームから岩石を採取して分析することがどうしても必要だったんです」
――滝沢さんが火山に興味を持ったのは、2013年の番組でバヌアツ共和国のマルム火山に接近したことがきっかけですか?
「そう聞いています。じつは私もJAMSTEC(海洋研究開発機構)にいたとき、TBSさんから相談を受けて『先生も一緒に行って、タッキーと(火山を)見てくれませんか?』と言われたんです。でも、ジャングルをかき分けて1000mの山を登らないといけないので、私は『そんなしんどいのは嫌です』と断りました(笑)。でも、タッキーはそれを実際に登ったんです。そのときから感心していたのですが、世界に5つしかない溶岩湖のうち4つを制覇しているというから、火山に対する興味は並外れたものがあると思いました」
――鬼界カルデラで滝沢さんが採取した岩石が、分析に役立ったのですか?
「タッキーが潜って溶岩カルデラから採取した岩石のひとつが、分析に適していて、データも解析できたんです。鬼界カルデラは、7300年前に大きな噴火をしているのですが、溶岩ドームはその噴火の残りかすだろうと、多くの火山学者は想像していたのです。ところが岩石を分析した結果、7300年前の噴火時とは別の溶岩が出てきていて、その量が半端じゃないことがわかりました。カルデラとして、次の巨大噴火の準備過程に入っている可能性が高い、という結論に達したわけです」
――神戸大学での岩石の分析にも、滝沢さんは参加した?
「岩石に含まれる成分を測定して、特に二酸化ケイ素と、酸化カリウムの比率に注目したのです。タッキーは神戸大に来て、分析しているのを興味津々で見ていましたね。我々の研究員が分析しているのを『こんなことするんですか』と。分析した結果、7300年以降に、マグマが大量に生産されていることがわかった。
鬼界カルデラの溶岩ドームは、体積としては32立方km以上、直径10~13km、高さ600m以上。多くの研究者は、カルデラがいったんできると、そのあと休止期に入って、何万年かしたら噴火するだろうと想像していたのですが、岩石の分析から、少なくとも7300年前以降にできて、成長速度は、日本屈指の活火山である桜島の10倍以上というおそろしいスピードです。さらに、鬼界カルデラの地下にマグマがあってもおかしくない。それをいま調べているところです。
2018年2月に英科学誌『サイエンティフィック・リポーツ』に論文を発表したときは、17人の著者の1人にタッキーの名前も入れさせてもらいました。岩石を採ってきてくれたのは、とても大事な仕事ですから、著者として名前を入れるのは当然です」
――巽先生に、滝沢さんが火山の魅力などを語ることはあったのですか?
「マルム火山の溶岩湖を観に行った話なんかをしてくれましたね。私が印象的だったのは、『なんで鬼界カルデラを調べているんですか?』と彼が質問してきて、超巨大噴火が起きて日本に及ぼす影響などを話したら、すごく興味を持ってくれました。『日本喪失の可能性があるのに、いまは予測もできないから対策もできない』という話をしたら、『すごく大事な調査なんですね』と、非常にまじめに、目を輝かせながら聞いていました」
――『クレイジージャーニー』では、火山の魅力について「地球が生きていることがわかる」と滝沢さんは語っていました。巽先生にも、そのようなことを語ることはあったのでしょうか?
「地球が生きていて、日本は火山が多いので、そこに住んでいる意味などはけっこう話し込みましたね。世界一の火山大国で暮らしていて、超巨大噴火も何度も起きていて、鬼界カルデラは7300年前に噴火して、南九州の縄文人の文化が絶滅したわけです。今後、起きたらどうしたらいいんだろう? 予測するのにどうするか? まだ答えはないんですけど、そういう話をしたのを覚えていますね」
――7300年前と同じ規模の噴火が鬼界カルデラでいま起きたら、どれぐらいの災害になるのでしょうか?
「風向きにもよりますが、最悪の事態を想定すると、関東でも20cm、関西で50cmぐらい火山灰が積もります。日本中のインフラが全部ストップしてしまう。復旧作業もできないので、『日本喪失』になってしまうというのが我々の予測です。だからどうしたらいいか、はなかなか難しい。予測ができるかどうかすら、わかっていない。それを一歩一歩、調べていこうとしているのがいまの我々の動きだし、それはタッキーもよく分かってくれたと思います」
――火山運動家、研究家としての資質を滝沢さんは持っているといえるでしょうか? ジャニーズ事務所を退所したいま、戻ってきてほしい、という思いはありますか?
「研究者としてやっていけるかは、いろいろな要素が関わるので難しい問題ですけど、少なくとも彼は真摯で、人の話をよく聞く。興味があるので質問をするし、よく勉強しているな、という印象を受けました。人間としての資質はあると感じました。いい子だなと。溶岩が流れたり、噴き上げたりするのを見て、まさに地球の営みを見て、感動したそうですから、純粋さを感じるし、マスコミがいなくても彼は自身で行ってますから。
今回のジャニーズ事務所からの退社は、本当にびっくりしましたね。笑顔で人生を過ごしてほしい。まあ、こちらの完全に勝手な希望を言うと、日本はまだ火山について知られていないことがいっぱいあります。そういうことを一般に伝えてくれる『火山大使』みたいなことをしてくれたらいいなとは思います。タッキーとは鬼界カルデラの調査のとき、『次、またやろう』と話をしていて、『時間があったらまたやりたいです』とタッキーは言ってくれたんです。時間と機会があれば、火山大使のような役割を務めてほしいなと思います」
40歳という大事な時期に選んだ転機。滝沢氏がこれからどのような人生を歩むにしても、「火山活動家」として見せた真摯な人間力は色褪せないだろう。
( SmartFLASH )