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吉高由里子『星降る夜に』ろう者との恋愛物語だが『silent』とは決定的に違う2つの要因

エンタメ・アイドル 投稿日:2023.02.07 11:00FLASH編集部

吉高由里子『星降る夜に』ろう者との恋愛物語だが『silent』とは決定的に違う2つの要因

 

 一言で説明するなら、健常者とろう者のラブストーリー。しかし、新しいアプローチが随所に見られ、これまでドラマや映画で描かれてきた聴覚障害者像へのアンチテーゼのようにも感じる。

 

 吉高由里子主演で、先週火曜に第3話が放送された『星降る夜に』(テレビ朝日系)。

 

 35歳の産婦人科医・雪宮鈴(吉高)と、生まれつき聴覚を持たない25歳の遺品整理士・柊一星(北村匠海)が運命的に出会い、惹かれ合っていく純愛物語だ。

 

 

 健常者の女性とろう者の男性のラブストーリーと言えば、古くは『愛していると言ってくれ』(1995年/TBS系)や、TVer見逃し再生数の大記録を打ち立てた『silent』(2022年/フジテレビ系)といった、大ヒット作が思い浮かぶだろう。

 

 特に『silent』は昨年末に完結したばかりで、まだファンたちが余韻に浸っている頃に『星降る夜に』がスタートしたため、どうしても比較されてしまう。

 

 だが、『星降る夜に』第3話終了時点では、『silent』をパクッているという声や類似点を指摘する声はほとんどあがっておらず、高評価を獲得している。

 

 今回は恋愛コラムニストである筆者が、『星降る夜に』が高く評価されている2つの要因を考察したい。

 

■固定観念をぶっ壊した「ろう者」像

 

『星降る夜に』が高く評価されている要因として、まずは、ろう者である一星のキャラクター造形の秀逸さを語る必要がある。

 

 誤解されたくないのであらかじめ言っておくと、筆者にとって『愛していると言ってくれ』も『silent』も大好きな作品だ。これまでに何百作と作られてきた恋愛ドラマのなかで、どちらもトップ10に入る名作だと思っている。

 

 ただ、『愛していると言ってくれ』と『silent』のろう者男性は、どちらもクールかつスマートで、高いインテリジェンスを感じさせるイケメンという共通点があった。しゃべるシーンがほとんどなく、物静かという理由もあるが、そもそも性格的にクールなのだ。

 

 そして、そういったろう者の男性像は、この手の純愛ドラマのフォーマットのようになっていた気さえする。『星降る夜に』では、そんなフォーマットを逆手に取ったキャラクター造形になっているのである。

 

 一星はとにかく感情豊かで明るく活発な青年。ストレートで直情的な性格をしており、情に厚く熱血な一面もある。かといって、ケガレを知らない聖人キャラというわけでもない。下ネタが大好きで、親友とAV談議に花を咲かせたり、軽口を叩いて笑いを誘ったり、気に食わないことがあると口悪く皮肉を言ったり。

 

 もちろんそれらは手話やスマホのメッセージでのやりとりなのだが、表情がコロコロ変わって感情がわかりやすいので、いい意味で「うるさい」キャラクターとなっている。

 

 障害者だからひっそり謙虚に生きている――なんて描き方はしておらず、一星は図々しいほどにハツラツとしていて楽しそう。これまでに描かれてきたろう者が登場する恋愛ドラマの固定観念をぶっ壊しているし、一星のようなろう者も、当然、実在するだろうなというリアリティや説得力がある。

 

■ヒューマンドラマ要素が功を奏す

 

 本作が高く評価されているもうひとつの要因は、健常者とろう者のラブストーリーでありながら、聴覚障害と向き合うことがメインテーマとなっていないところだろう。

 

『愛していると言ってくれ』や『silent』は、聴覚障害が恋愛ドラマを盛り上げるための “大きな壁” として機能していたが、『星降る夜に』では乗り越えるべき存在という描かれ方はされていない。聴覚障害が “恋の障害” ではなく、一星という人物のひとつの個性といった描かれ方がされているのだ。

 

『silent』がろう者の苦悩や現実をしっかり丁寧に掘り下げていくアプローチだったのに対し、『星降る夜に』は、あまり深刻な描写をしないことで悲壮感を出さず、ポジティブに見せていこうというアプローチなのだと思う。

 

 さらに言うと、ヒューマンドラマとしての要素も多いため、こってこてのラブストーリーになっていないバランス感覚も心地いい。

 

 第1話の冒頭では、鈴と一星が満天の星空の下で運命的な出会いをして、すぐにキス。正直、いきなりこんなラブシーンを見せられたので、悪い予感がびんびん……。ロマンティックなシーンの連発で、胸キュンを押し売りするような粗悪な恋愛ドラマかと心配したのだ。

 

 けれど、それは杞憂に終わり、思ったより恋愛要素は薄め。

 

 それは、産婦人科医である鈴と遺品整理士である一星のお仕事パートも、しっかり描かれているからに違いない。彼らが仕事を通じて出会う人々の問題と向き合っていくという、人間模様もドラマの見どころとなっているのである。

 

 もちろん脚本家が意図して2人をその職業にしたのだろうが、生命の誕生に立ち会う職業の鈴と、生命の最期を見送る職業の一星の視点を通じて、人生とはなんぞやと問いかけるような上質なヒューマンドラマを繰り広げているわけだ。

 

 ラブストーリーが主軸だが、そこに依存しきっていないことが本作のオリジナリティとなっており、『愛していると言ってくれ』や『silent』との差別化にもなっている。

 

――本作の世帯平均視聴率(※ビデオリサーチ調べ/関東地区)は第1話7.7%、第2話7.9%、第3話7.1%と推移。高い数字ではないが7%台で安定しており、固定ファンをガッツリ掴んでいることがわかる。今夜放送の第4話も楽しみだ。

堺屋大地

恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。『日刊SPA!』に恋愛コラムを連載中。ほに『現代ビジネス』『文春オンライン』『集英社オンライン』『女子SPA!』などにコラムを寄稿

( SmartFLASH )

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