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坂本冬美の『モゴモゴ交友録』北島三郎さんーー演歌界で “御大”は重石のような存在で、太くて大きな大黒柱

エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2023.04.15 06:00 最終更新日:2023.04.15 06:00

坂本冬美の『モゴモゴ交友録』北島三郎さんーー演歌界で “御大”は重石のような存在で、太くて大きな大黒柱

北島三郎、坂本冬美

 

 演歌界の太い柱であり、偉大な先輩であり、ときには父親のように優しく包み込んでくださる北島三郎さんのことを、“御大” と呼ばせていただいています。

 

 北島御大ーーどうですか!?いい響きですよね。

 

 御大というのは、御大将の略語だそうですが、堅苦しく聞こえる御大将より、どっしりしているんだけど、周囲を明るく照らし、どこかかわいらしさも感じさせる御大のほうが似合います。

 

 

 初めてわたしが、この御大という言葉を口にしたのは、お世話になった大先輩、村田英雄さんにお会いしたときのことでした。

 

 まわりの方たちが “先生” と呼んでいらしたので、わたしも “村田先生” と呼ばせていただいたのですが、「俺は先生じゃない!」と、お叱りをちょうだいしてしまいまして(苦笑)。

 

 モゴモゴどころの騒ぎじゃありません。えっ!? あっ……。いや、あのぅ……。完全にパニック状態です。

 

 顔面蒼白で、口だけパクパクさせるわたしのピンチを救ってくれたのが、当時のマネージャーでした。

 

「御大……で、いいんじゃないですか」

 

 いいも悪いもありません。意を決し、囁くような小さな声で「村田御大」と呼ばせていただくと、あるかなきかのお声で「うん」と頷かれまして。それ以来、わたしの中では、村田先生ではなく、ずっと村田御大でした。

 

 その村田御大がお亡くなりになり、気がつくとごく自然に、北島さんのことを “北島御大” と呼ばせていただくようになっていました。

 

 北島さん、先輩、先生、御大……もしかすると、北島さんご自身は、どう呼ばれても気にされていないのかもしれません。でも、わたしにとっては、やっぱり御大です。それがいちばんしっくりくるし、似合っていると思います。

 

 えっ!? ファンの方が呼ぶように、 “サブちゃん” と呼んだことですか? 滅相もない。そんな恐れ多いこと、あるわけないじゃないですか。

 

 初めて北島御大にお会いしたとき、わたしはまだ花も恥じらうティーンエイジャーで、北島御大は今のわたしよりお若かったのですが、そのときすでに、演歌界の先頭を走っているというプライドと貫禄がありました。

 

 あれから40年近い年月がたちましたが、北島御大とわたしの間にある景色は、少しも変わっていません。

 

 昨年暮れ、46年間で通算4578回の座長公演を務められた明治座でのファイナルコンサートも、ただただ、感動の嵐でした。御大がお話しになるひと言ひと言が、お歌いになる一曲一曲が心に沁みて、涙、涙、また涙。客席のあちこちから、鼻を啜る音が聞こえ、それが最後まで絶えることはありませんでした。

 

 北島御大のことを石川さゆりさんが、「私たち歌い手のなかでは、お父さんのような存在で、北島さんがいらっしゃるからキュッと引き締まるんです」とおっしゃっていましたが、まさしくそのとおりです。

 

 個性豊かな方々がずらりと揃った演歌界にとって、北島御大は重石のような存在で、なくてはならない、太くて大きな大黒柱です。

 

 ご挨拶に伺うたびに、にっこり笑って「頑張れよ!」と、声をかけてくださる北島御大がいるからこそ、私たち後輩は安心して歌うことができるのです。

 

 わたしが御大と呼ばせていただけるのは、北島御大が最後……これは、私たち後輩からのお願いです。まだまだお元気で、これからも歌い続けてください。

 

さかもとふゆみ
1967年3月30日生まれ 和歌山県出身『祝い酒』『夜桜お七』『また君に恋してる』『ブッダのように私は死んだ』など幅広いジャンルの代表曲を持つ。現在、著書『坂本冬美のモゴモゴモゴ』(小社刊)が発売中!

 

写真・中村 功
取材&文・工藤 晋

( 週刊FLASH 2023年4月25日号 )

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