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松岡茉優『最高の教師』芦田愛菜に対する視聴者の期待を “しっかり打ち砕いた” 心意気【ネタバレあり】

エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2023.09.02 11:00 最終更新日:2023.09.02 12:10

松岡茉優『最高の教師』芦田愛菜に対する視聴者の期待を “しっかり打ち砕いた” 心意気【ネタバレあり】

 

 二重の意味で、「まさか」の超衝撃展開だった。

 

 前回の第6話、とんでもないラストで終了したにもかかわらず、『24時間テレビ』(日本テレビ系)のため1週放送休止した『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』(同)のことだ。

 

 松岡茉優主演で、2番手キャストを芦田愛菜が務める本作は、タイムリープというSF設定を土台とした学園サスペンスドラマ。

 

 物語は高校の卒業式の日から始まる。3年D組の担任である九条里奈(松岡)は事なかれ主義の教師。そんな彼女は、卒業式の後、クラスの生徒の何者かによって校舎から突き落とされ、死を覚悟した――その瞬間に1年前にタイムリープ。担任として初めて教壇に立った日に戻っていた。

 

 

 九条からすれば、目の前にいる30人の生徒は、1年後の卒業式の日に自分を殺した容疑者ということになる。自らの死の運命を回避するため、文字どおり命がけで担任生徒に向き合っていくというストーリーだ。

 

■【ネタバレあり】第5話までは予定調和だった

 

 芦田演じる生徒・鵜久森叶はイジメに遭っており、1周めの九条の記憶によると、不登校になった後、10月に飛び降り自殺して亡くなっていた。

 

 第1話ではそんな未来を改変するために、九条はイジメの証拠を押さえて鵜久森を救済。2人は互いを信頼し、協力しながらクラスを変えていこうと決意する。

 

 第2話から第5話までは、それぞれ問題や悩みを抱える生徒に九条と鵜久森が向き合っていき、少しずつ理解者が増えていく展開。九条が、今のご時世だと教師が口にしたら一発アウトのような鋭い言葉で、間違ったおこないをする生徒たちを糾弾する姿は、なかなか痛快だった。

 

 だが、そうはいっても第5話までは予定調和。

 

 崩壊しているクラスの生徒に破天荒教師が荒業で向き合っていき、一人一人改心させていくというのは、学園ドラマのド定番ストーリーだからだ。

 

 まぁさすがに、このまま毎回少しずつ生徒を味方に引き入れ、1年間で生徒全員を改心させて最終回はハッピーエンドという、単純なストーリーになるとは思っていなかったが、それでも前回の展開は想定外すぎた。

 

■鵜久森叶=芦田愛菜の重大事実と超衝撃展開

 

 まず第6話序盤で、ある重大事実が判明する。鵜久森も九条と同じく、2周めの人生を歩んでいたことが明かされたのだ。

 

 1周めの10月で自殺したはずが、その直後に4月に戻り、目覚めたら始業式の日の朝だったという。九条と鵜久森は同じ境遇の超常現象を体験した者同士として、結束をより強めるのだった。

 

 しかし、第6話の終盤、1周めの人生を終わらせた同じ日、鵜久森は亡くなってしまう。今度は自死ではなく、クラスの何者かによって校舎から突き落とされ、転落死するのだ。

 

 この鵜久森叶=芦田愛菜の退場劇は、二重の意味で衝撃だった。

 

 主人公が、ともに2周めを生きる頼もしい仲間を失ったというストーリー上のインパクト。そして、2番手キャストでバディ役とも言えた芦田の途中退場という、作品としてのインパクトだ。

 

 しかも、きっちりと完全退場であることを視聴者に突きつけていた。

 

 本作はタイムリープものであるため、「3周めが始まって再登場するかもしれない」という期待を残すと、その死のインパクトが薄れてしまう。だから、第6話では、3周めがないことを念を押すような象徴的なシーンが2つあった。

 

 まず、第6話序盤で、鵜久森が九条に自分もタイムリープしていることを打ち明けるシーン。ここで鵜久森は、「ひとつだけ確信的にわかっていることがあります。3回めは絶対にないということです」と直感していることを語った。

 

 そして第6話ラスト、転落した鵜久森の遺体を発見した九条が、誰にともなく「お願いします。もう一度、もう一度、やり直させてください。どうか、どうかお願いします……」と祈りの言葉を吐露するシーン。

 

 こういった悲劇的展開で主人公が切に願うことはたいてい叶わない。そのため逆説的に考えると、九条が視聴者の心情を代弁して “3周めを望む” 言葉を口にしたことで、3周めはないと決定づける形になっていた。

 

 この2つの念押しシーンは、実に秀逸だったと思う。

 

 鵜久森の死の衝撃が減少しないように、3周めを望む視聴者の心情をしっかり打ち砕き、最大級のインパクトを落としたからだ。

 

■作品の求心力が一気に低下する可能性も

 

 もちろん鵜久森が復活する可能性はゼロではないが、ここまで丁寧に念押ししたうえで3周めを描くのは無粋きわまりないので、まずありえないだろう。

 

 鵜久森=芦田の退場劇は、視聴者をストーリーに引き込む本作最大の “大仕掛け” だったのだろうが、それと同時に大きな不安材料でもある。

 

 松岡茉優に肩を並べる演技力を誇り、ともすれば知名度では松岡を上回る芦田愛菜の人気に頼れなくなるからだ。

 

 芦田以外に松岡と対等に渡りあえるキャストがいないため、鵜久森はただの優等生ではなく、実は黒幕だったという展開や闇落ちしてしまう展開を予想する声も多かった。要するに、芦田が最終話に対峙するラスボス役を担うと考えていた視聴者も少なくなかった。

 

 そんな期待感を持たれていた鵜久森=芦田の退場により、作品の求心力が一気に低下する可能性もある。

 

 とはいえ、そんなことは百も承知でこの脚本は書かれていたはず。つまり、芦田不在という不安要素を吹き飛ばすだけの、求心力のあるストーリーなのだという自信の表れとも心意気とも受け取れる。

 

 ――本作の世帯平均視聴率(ビデオリサーチ調べ/関東地区)は毎回5~6%台と低調だが、見逃し配信の指標となるTVerのお気に入り登録者数は124.0万人(8月30日現在、以下同)と好調。

 

 このTVerの数字は、今クール最大の話題作『VIVANT』(TBS系)の171.1万人には及ばないものの、『真夏のシンデレラ』(フジテレビ系)の114.5万人、『ハヤブサ消防団』(テレビ朝日系)101.4万人と、そのほかの話題作を上回る数字だ。

 

 今夜放送の第7話から、鵜久森亡き後の世界が描かれることになる。

 

 2番手キャストである芦田愛菜の途中退場という離れ業は、想定外すぎたため大きな話題を呼び、一時的に注目度を高めさせるブースト効果もあっただろう。

 

 そのブーストされた勢いを活かしてクライマックスに向けてますます注目度を高めていくか、それともむなしく終盤で失速してしまうか……前者であることを期待したい。

堺屋大地

恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『現代ビジネス』『集英社オンライン』『日刊SPA!』などに寄稿中

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