市川團十郎の嘆きに大爆笑！ 「国立劇場」建て替え迷走に「再開のときは頼んだよ、目処は立ってない」

 

「再開のときは頼んだよ。（でも）再開の目処は立ってない」

 

　花道の引っ込みでこう発言したのは、市川團十郎白猿（45）。満員の国立劇場大劇場は、割れんばかりの大爆笑と喝采に包まれた。

 

　9月27日、歌舞伎と新派の俳優が総出演する第39回「俳優祭」が、国立劇場で7年ぶりに開催された。昼の部に登場した團十郎は、お楽しみ模擬店では俳優祭のTシャツを着て、1階ロビーでTシャツやトートバッグを自ら販売してファンサービス。

 

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　続いて松本幸四郎作・演出の『戯場八景名残隼（ゆめのくにへようこそありがとうこくりつ）』では閻魔大王役で登場。罪人の刑罰を“私見”で決め、風格の大きさを見せつけた。

 

　團十郎が言う“再開”とは、もちろんこの国立劇場のこと。1966年に開業した国立劇場は、老朽化が原因で10月25日に閉場。56年の歴史にいったん幕を閉じるのだ。

 

　その閉幕記念を兼ね、初めて国立劇場で俳優祭が開かれたわけだが……。

 

「これまで俳優祭といえば、3年に1度、3月末に歌舞伎座で、というのが通例でした。それが、新型コロナウイルスの影響で、今回は7年ぶり。劇場も初の国立劇場で秋の開催と、俳優祭としては異例づくめでした。

 

　なんでも、『ウチを使ってください』と、国立劇場サイドから申し入れがあったそうです。もともと日本俳優協会の資金集めのための催しなので、どこの模擬店に誰がいるかといった詳細は、2000円のパンフレットを買わないとわからない、という商魂たくましさ。でも今回は、パンフレットを買った客もビックリでした。表紙をめくると、『くろごちゃんファンド』という国立劇場の寄付を募るチラシが第一に飛び出して来たからです」（歌舞伎関係者）

 

　團十郎が“不安”を口にした通り、国立劇場の再開には暗雲が立ち込めている。演芸関係者が語る。

 

「国立劇場の整備計画が発表されたのは3年前。当初の予定だと、リオープンは2029年秋とされていました。現在、バラバラになっている大劇場と小劇場、資料館、演芸場を25階建てのビルにまとめ、下が劇場、上はホテルとレストランにするという大プロジェクトなのですが、このままだと建て替えは無理。歌舞伎関係者だけでなく、舞踊関係者や演芸関係者たちの間からまで、建て替えはおこなわれず、また2024年から営業を再開するのではないか、という声があがっています」

 

　毎年、国立劇場の正月公演で1年の幕を開けるのが恒例になっている尾上菊五郎劇団は、2024年1月はホームを失って、新国立劇場中劇場に移して上演。花道がない劇場で花道をどうするのか、注目が集まっている。

 

　国立劇場に携わる人たちが、次々と不安を口にしている理由はこうだ。

 

「2023年6月におこなわれた工事の入札は、結果的に落札者なし。入札は1年前の2022年10月に初めておこなわれましたが、そのときは入札ゼロで、反省してハードルを下げたようなのですが、それでもこの体たらくです。

 

　国立劇場は向かいが皇居で、25階建てとなればセキュリティ面での問題が山積します。使用する側は眺望など、立地が非常に魅力ですが、施行側からすると、価格以上に遵守しなければいけない制約が多すぎて、費用もかさむし、それほど旨味がない案件ということになるようです」（建設業関係者）

 

　ニューヨーク・マンハッタンの国連本部そばにあるジャパン・ソサエティは、自身の空中権を売り、莫大な資金を手にしている。国立劇場もあの立地で頭上を使わない手はない、という発想からの建て替え計画だったのだろうが、そうそううまい話にはならなかったようだ。

 

「1975年に竣工した神奈川県民ホールも、築48年と老朽化により、2025年からの休館を発表しています。でもこちらは補修工事が入るだけで、建て替えまではいかないと聞いています

 

　国立劇場だってまだまだ使えますし、隣接する国立演芸場だって、まだ築52年。入ればわかりますが、古さはぜんぜん感じません。ヨーロッパのオペラ座やスカラ座は百年選手。もうちょっと使えるものを壊すのに、罪の意識を持ってほしい。『国立劇場』なんですから、商魂より文化を大切にしてほしいです」（演劇関係者）

 

　国立劇場の3度めの入札の実施予定日はまだ未定。迷走はまだ続きそうだ。

( SmartFLASH )