エンタメ・アイドル
“声優界の歌姫”水樹奈々があこがれの“演歌の女王”坂本冬美と初対談「アニソンを歌い始めのころ『水樹さんの歌からは日本海が見えるね』と言われて…(苦笑)」
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2023.10.07 06:00 最終更新日:2023.10.07 06:00
目黒蓮からLiSA。そして、ももいろクローバーZへと渡された「モゴモゴSPECIAL対談」のバトンを今回、受け取ったのは“声優界の歌姫”水樹奈々! ともに大の虎党というディーバ2人が、ノリノリで盛り上がった話題は……“アレ”? 愛する阪神タイガースの快進撃に合わせて、いざ、開幕です。
――お2人が愛する阪神タイガースが、18年ぶりのリーグ優勝を決めました。
【関連記事:水樹奈々、プリキュア最新作に出演「先輩プリキュアとしてみんなを送り出さなきゃ!」】
水樹 優勝じゃなくて、“アレ”ですよね(笑)。
坂本 そう“アレ”です(笑)。
水樹 次はCS(クライマックスシリーズ)で、そして最後は日本シリーズで、“アレのアレ”してほしいです(笑)。
坂本 仕事があって、なかなかリアルタイムで試合を観ることはできないんですけど、もう最高です!
水樹 スタッフのほとんどが関西圏出身なので、つねに誰かがスマホで試合を追いかけ、その都、度状況を教えてくださって、“今日も勝ったぞ!”とか、みんなで一緒に盛り上がっていました。
――生粋のタイガースファンであるお2人は、甲子園球場で国歌独唱もされています。
水樹 私がお声がけいただいたのは「ウル虎の夏2016」のタイミングでして、試合前に国歌を、5回終了時に『六甲おろし』を歌わせていただきました。
坂本 2016年のときの監督は……。
水樹 金本(知憲)監督です。奈々にちなんで、背番号7のユニホームを作っていただき、グラウンドに立ったのですが、ものすごく緊張して手汗が止まりませんでした。
坂本 わかる。わたしも緊張でガチガチだったから。
水樹 テレビでしか見たことがない選手のみなさんがズラリと並ばれていて。「こんな聖域に私なんかがいていいんでしょうか」と思いながら、歌っていました。
坂本 始球式を終えた後、「マウンドから見たスタンドの景色はどうでしたか?」って聞かれたんだけど、見る余裕なんてまったくなくて。感想は、「無事に終わってよかった~!」だけでしたから。
水樹 冬美さんが国歌独唱と始球式をされたのは?
坂本 2001年です。始球式を終えたとき、野村(克也)監督が「いい球投げるやん」とボソリと呟きながら、にっこり微笑んでくださったのを覚えています(笑)。奈々ちゃんと初めて言葉をかわしたのは、それから8年後になるのかな。
■『紅白』初出場したときに五木ひろしさんに紹介
水樹 そうです。2009年の10月に、第60回『NHK紅白歌合戦』の「デジタル応援隊」に任命していただき感激していたら、なんとその年の『紅白』に初出場させていただけることになって――。
坂本 え~~~~っ!?
水樹 私も本当にびっくりしました(笑)。全体リハーサルのときに冬美さんにご挨拶させていただき、じつは子どものころ演歌を歌っていたということと、『あばれ太鼓』が大好きだというお話をさせていただきました。
坂本 アニソンの方だとばかり思っていたから、演歌を歌っていたというのを聞いてうれしくなっちゃって。
水樹 すぐそばにいらっしゃった五木ひろしさんに紹介してくださいました。「水樹奈々ちゃん、演歌を歌っていたんですって」と。
坂本 はははははは。ごめんなさいね、近所のおばちゃんみたいで(苦笑)。
水樹 本当にうれしかったです。でも「み、み、水樹奈々と申します。よ、よろしくお願いします」と言うのが精一杯で。
坂本 声優さんが『紅白』に出場するのは、奈々ちゃんが初めてで。歌ったのは――。
水樹 オリコンシングルチャートのデイリーで、1位をいただいた『深愛』という楽曲です。
――先ほど、『あばれ太鼓』が大好きでしたとおっしゃっていましたが、冬美さんのデビュー曲ですから、水樹ちゃんはまだ7歳のころです。
水樹 そうです。忘れもしません。初めて聴いたのは、私が小学2年生のときでした。
坂本 小学2年生で『あばれ太鼓』が好き!? 本当に?
水樹 はい! カラオケの講師をしていた父は、演歌が大好きで。その父から課題曲として出されたのが『あばれ太鼓』だったんです。渡されたカセットテープを繰り返し聴いて。どうやったらあんなに勢いのある、パンチの効いた声が出せるんだろうと思いながら練習していました。
坂本 そうか。お父様に感謝しなくちゃですね(笑)。
水樹 子供どもだったので、押して押して、また押してという歌い方になってしまって。どうやったら冬美さんのように、情感あふれるカッコいい歌い方ができるんだろうと、必死に研究していたのですが、どうしてもできなくて……。
坂本 うれしいなぁ。うれしいんだけど、でもそこからアニソンに方向転換するのはたいへんだったでしょう?
水樹 きっかけは、キャラクターソングという、アニメやゲームに登場するキャラクターの声で歌う声優さんならではのレコーディングでした。
坂本 それって、すごく難しくないですか?
水樹 はい。キャラクターの声にチューニングしたまま歌わなければいけないので、すごく難しいんです。でも、そのとき初めてオリジナル曲のポップスをレコーディングするという経験をさせていただいたことで、考え方をガラリと変えることができたんです。
坂本 どんなふうに?
水樹 それまでプロになって演歌を歌うことだけ考えていたけれど、歌うこと自体が好きだったことにあらためて気がついて、自分で線引きするのはやめようと思ったんです。
坂本 うん、その気持ちはわかります。ただ……演歌にはコブシだったり、タメだったり、演歌独特のものがあるじゃないですか。子どものころからそれを身につけているわけだから、今日からポップスを歌おうと思ってもすぐにできるわけじゃないですよね。
水樹 そうなんです。だから最初のころは、ディレクターさんから、「水樹ちゃんの歌からは日本海が見えるね」と言われてしまって(苦笑)。
坂本 アニソンなのに日本海? 笑っちゃいけないけど、その感じはすごくよくわかるから、やっぱり笑っちゃいますね。
水樹 最初はそれですごく悩んで、レコーディングは苦戦しました。でもあるとき、これが私の個性だから、曲の世界観とうまく融合させて、聴いてくださる方にクセになる心地よさを届けることができたら、勝負できるかもしれないと思ったんです。
■47都道府県を1年で回るツアーをやりたい
坂本 そこが、奈々ちゃんのスタートだったのね。で、そこからまた新たな戦いがスタートしたわけだ。
水樹 メロディラインに日本のわび・さびを感じてもらえるようなものを加えてみたり、いろいろなジャンルの音楽をミックスしてみたり、いろんなことを試して行き着いたのが現在の形です。気づけばテンポも速く、激しくて転調もたくさんする、ものすごく難度の高い曲になってしまいました(笑)。
坂本 そこにたどり着くまでに、何年くらいかかったの?
水樹 5年くらいですね。
坂本 自分で新しい何かを見つけ出そうとしたら、それくらいの時間が必要なのね。
水樹 私一人の力では、たどり着けなかったと思います。素敵なスタッフさんに恵まれたおかげです。
坂本 いまのアニソンは、テンポは速いし、歌いこなすには高いテクニックが要求されるし、1曲の中で何度も転調する曲が多くて、わたしにはとても歌えない曲が多いんだけど……それは、奈々ちゃんの仕業だったのね(笑)。
水樹 でも、いまの若い方々は、それを難なく歌いこなしていて。「歌ってみた」動画を見ると、みなさんびっくりするくらい上手に歌っていて、いつも感動します。
坂本 奈々ちゃんのコンサートでは、その難しい曲をずっと歌い続けているわけでしょう?
水樹 はい、3時間ぐらい(笑)。でも、以前ライブで『あばれ太鼓』や『夜桜お七』を歌わせていただいたことがあります。
坂本 アニソンの合間に演歌? ファンの人たちに怒られない?
水樹 みなさん、私が演歌を歌っていたことも、『あばれ太鼓』や『夜桜お七』が大好きなことも知っているので、一緒に盛り上がってくれて、しっかりペンライトを振ってくださいました。
坂本 素敵なファンですねぇ。
水樹 ブログに、初めて冬美さんと『また君に恋してる』をデュエットさせていただいたときに、差し入れでいただいた塩豆大福のことを書いたのですが、それも一緒にすごく喜んでくれて。
坂本 奈々ちゃんとは、『夜桜お七』もデュエットしましたよね。あれは……。
水樹 NHKの『歌謡チャリティーコンサート』です。番組が終わった後、ファンの方から「あこがれの坂本冬美さんとデュエットできてよかったね」「これまでがんばってきたご褒美だね」という言葉をたくさんいただいて。思わず泣きそうになっちゃいました。
坂本 奈々ちゃんは、今年がデビュー23年めでしょう? 25周年、30周年に向けていろいろ考えていることあるんじゃないですか。
水樹 47都道府県を1年で一気に回るツアーをいつかやってみたくて。それがいまの夢というか、野望です。
坂本 それは、ちょっと無茶じゃない?
水樹 自分でもそう思います(笑)。でも、やりたいんです!
坂本 先輩たちからは、昔は1カ月のうち25日は旅に出ているのがフツーだったという話を聞きますけど……。
水樹 ということは、1年で300日は公演だったということですよね。すごい! そういう話を伺うと、ますます闘志が湧いてきます。
坂本 そのためには心身ともに充実させて、いろんなところからたくさんいい刺激をもらわないとですね。
■今度は『ブッダ』をデュエットしたい!
水樹 はい。世界のさまざまな音楽にふれたり、公演に行かせていただいたりしながら、いろいろなものを吸収し、自分なりに昇華させて新しいものを生みだせるように、毎日全力でがんばっていきたいです。
坂本 素晴らしい!
水樹 冬美さんは、どういうところから刺激を受けていらっしゃるんですか?
坂本 演歌以外の歌番組を、みなさんすごいなぁと思いながら観ることかなぁ。といっても、自分が新しいことにチャレンジする勇気はないんですけどね(苦笑)。あっ、でも!
水樹 あるんですね?
坂本 ボイストレーナーの先生から「次の課題曲だから、覚えておいてね」と渡されたのが、幾田りらさんの『レンズ』という楽曲で。
水樹 えっ!? すごい!!
坂本 「こんな難しい歌、歌えませんよ」と、抵抗はしてみたんだけど「とりあえず、覚えておいてね」と軽くいなされてしまって(苦笑)。脳を刺激されまくっています。
水樹 冬美さんの『レンズ』、ぜひ聴きたいです!
坂本 ムリ、ムリッ。奈々ちゃんの頼みでも、それだけは丁重にお断わりします(笑)。
――最後に、もう一度、デュエットするならこの曲! というのを教えてください。
坂本 桑田佳祐さんに作っていただいた『ブッダのように私は死んだ』ですね。アニソンのエッセンスとか、演歌のエッセンスとか、いろんなものが融合した奈々ちゃんの声と一緒に歌ったら、絶対にカッコいいと思います。
水樹 うれしいです! 機会をいただけるなら、ぜひ!
坂本 奈々ちゃんの歌は難しくて歌えないので、次は『ブッダのように私は死んだ』でいきましょう!
水樹 いや……でも……私としてはもう1曲、『深愛』を一緒に歌っていただけたらうれしいです。よろしくお願いします。
坂本 ムリ、ムリ。
水樹 ぜひ、よろしくお願いします!
坂本 そこまで言われちゃうとがんばらないわけにはいかないような……。わかりました。機会をいただけるようならがんばってみます。いや、やっぱりムリ!
プロフィール
さかもとふゆみ 1967年3月30日生まれ 和歌山県出身 『祝い酒』『夜桜お七』『また君に恋してる』『ブッダのように私は死んだ』など幅広いジャンルの代表曲を持つ。著書『坂本冬美のモゴモゴモゴ』(光文社)のほか、新曲『再会酒場』が発売中
みずきなな
1月21日生まれ 愛媛県出身 1997年に声優デビュー。2000年12月にアーティストデビュー。『NHK紅白歌合戦』に6年連続出場をはじめ、声優・アーティストとして多方面で活躍。現在、新曲『Sugar Doughnuts』が配信中
取材&文・工藤 晋 写真・中村 功