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『下剋上球児』ニセ教師・鈴木亮平への嫌悪が止まらない視聴者も…ここから感動まで持っていくのは “無理ゲー” か?

エンタメ・アイドル 投稿日:2023.11.26 11:00FLASH編集部

『下剋上球児』ニセ教師・鈴木亮平への嫌悪が止まらない視聴者も…ここから感動まで持っていくのは “無理ゲー” か?

 

 主人公も脚本家も、自らとてつもない逆境に飛び込み、最底辺の地べたからどれだけ昇っていけるかというチャレンジをしているように感じる。

 

 先週日曜に第6話が放送された鈴木亮平主演日曜劇場下剋上球児』(TBS系)。

 

 三重県の公立高校の野球部が、2018年に甲子園初出場するまでの奇跡を綴った、ノンフィクション本『下剋上球児』を原案としている本作。しかし、ドラマはあくまでフィクションであり、かなり大胆なオリジナル展開をブッ込んでいる。

 

 

 鈴木演じる主人公・南雲脩司は、高校時代は甲子園を目指していた強豪校の球児で、大学まで野球一筋だったものの、ケガで引退。36歳で教員免許を取って高校教師になった……と思われていたが、物語前半で、実は南雲が教員免許を偽造しており、無免許のニセ教師だったというトンデモ事実が発覚。ちなみに、原案となったノンフィクション本の教師はきちんと教員免許を持っているので、ドラマの完全オリジナル設定ということだ。

 

 熱血さわやか風の主人公が犯罪に手を染めていたという驚愕の展開。当然、賛否両論が巻き起こり、ネガティブにとらえた視聴者からは「完全にアウト」「無理すぎる」「もう感情移入できない」と南雲に対して辛辣な意見も飛び交っていた。

 

■“思いつかない” というよりも、“思いついても使わない”

 

 物語は2016年の春からスタート。最終的に2018年の夏の甲子園に出場できるかどうかを描くことになるようだ。

 

 南雲は、ひょんなことから廃部寸前の弱小野球部の監督に就任するが、無免許であることを自首して、学校を去ることに。第6話では南雲がいない状態で迎えた2年目の2017年・夏大会が始まり、11年ぶりに予選1回戦を突破したところまでが描かれた。

 

 エンタメ作品において主人公に大きな試練を与えるのはセオリーだが、たとえば悪人に邪魔されるとか、不慮の事故に遭ってしまうとか、主人公に非はない “壁” が立ちはだかるのが普通。南雲のような熱血さわやか風の主人公が、自ら悪事を働いてどん底に落ちるという展開は異例中の異例である。

 

 この突拍子もないオリジナル要素をストーリーの核にした脚本家は、かなり大きな賭けに出たように感じる。

 

 斬新と言えば斬新だが、他の脚本家では “思いつかない” というよりも、“思いついても使わない” というような設定。あまりにもタブーであり、非常にハイリスクなのだ。

 

■熱血主人公の裏切りは “闇深さ” の度が過ぎる

 

 一般的に主人公は視聴者たちから好感や共感を得られるように描かれ、物語に惹き込んでいく役割を担っている。ただ、必ずしも最初から最後まで好感度が高めである必要はない。

 

 たとえば途中で闇堕ちさせて視聴者から嫌われるようにしつつ、終盤のクライマックスまでに好感度をV字回復させるという手法が使われることもあるだろう。そういう意味で南雲は、その類型に当てはまる主人公なわけだが、一言で言うと闇深さの度が過ぎる。

 

 無免許のニセ教師だったという設定は、多くの視聴者が悪い意味で裏切られたと感じ、ドン引きしたに違いない。しかも日曜劇場ファンからすると、鈴木亮平は2021年7月期の主演作『TOKYO MER~走る緊急救命室~』(TBS系)のイメージが強く、『TOKYO MER』ではド誠実な主人公だったため、今作はマイナスのギャップがデカすぎるのだ。

 

 要するに、こんなにもマイナス値に振り切ってしまっていると、いくら後半から好感度を上げていったとしても、プラスにまで持っていくことは “無理ゲー” なのではないか、ということである。

 

 そのため、仮に他の脚本家が似たような手法を思いついたとしても、とてつもなくハイリスクであるから、後半でよっぽど巻き返す自信がなければ手を出さないだろう。

 

■最後に多くの視聴者を感動の渦に巻き込む自信がある?

 

 公式サイトに掲載されている第7話のあらすじによると、この回から南雲が監督復帰できるようだ。

 

 しかし、当たり前だが、劇中の登場人物たちのなかに反対するキャラがいるようだし、視聴者たちのなかにもまだ南雲がしでかしたことに引いている層がいるだろう。

 

 筆者は、劇中で南雲の悔恨がしっかり描かれ、罪を犯した彼をそれでも慕う周囲のキャラたちとの絆も丁寧に描かれていたため、個人的には南雲を応援モード。特に第6話で、野球部員たちが南雲を監督復帰させるために強豪校を打ち破る展開が胸アツで、南雲にもう一度チャンスを与えてほしいと思うようになっている。

 

 けれど、彼にドン引きしたままの視聴者がいることも十分理解できる。それぐらい教員免許偽造は熱血主人公としては致命的でヤバすぎた。

 

 今も南雲を嫌悪している視聴者が、彼を受け入れ、好感を抱き応援してくれるようになるまでもっていくのは、至難の業な気がする。とはいえ、脚本家はそんなことは百も承知でこの要素をブッ込んできたのだろうから、最後には多くの視聴者を感動の渦に巻き込む自信があるのだろう。

 

 ――まずは今夜放送の第7話で、まだ南雲を許していない劇中のキャラたちや視聴者たちに対して、監督復帰をどう納得させるストーリーになっていくか、注目である。

堺屋大地

恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。『日刊SPA!』に恋愛コラムを連載中。ほに『現代ビジネス』『文春オンライン』『集英社オンライン』『女子SPA!』などにコラムを寄稿

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