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坂本冬美の『モゴモゴ交友録』船越英一郎さんーーデビュー41年めで初挑戦された舞台『赤ひげ』の主題歌を
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2023.12.16 06:00 最終更新日:2023.12.16 08:15
「2時間ドラマの帝王」と呼ばれる船越英一郎さんと初めてお会いしたのは、2023年4月にオンエアされた、石井ふく子先生プロデュースによるTBS系ドラマ『ひとりぼっち―人と人をつなぐ愛の物語―』のスタジオでした。
石井先生のドラマに欠かすことができない船越さんは、物語を大きく動かすキーパーソンとして登場。ご一緒させていただいたのはわずか一日でしたが、その存在感のすごさといったら、もうただただ、圧倒されっぱなしでした。
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とっても穏やかで、ニコニコしていらっしゃると思ったら次の瞬間、 “本番” の声と同時に表情はもちろん、まとっている雰囲気まで一変。思わず心の中で『うおぉ〜〜〜〜っ、すごぉぉぉぉぉい!』と、コブシを利かせた唸り声を上げていました(笑)。
でも、驚いたのはそれだけではありません。収録の合間に、ちょっとだけお話をさせていただいたのですが、「今回の『いくじなし』がいちばんよかったです」とおっしゃって。
えっ!? 今回の……ということは、その前の舞台も観ていただいている?
「はい。石井先生との作品は全部観ました」
全部って……3本とも? 驚きを通り越して、恐縮するしかありません。しかも、です。
「このお芝居は絶対に観たほうがいい」と、高島礼子さんにすすめてくださり、高島さんも明治座に足を運んでくださったというのですから、もう嬉しすぎて涙がちょちょぎれそうでした。
石井先生が繋いでくださった船越さんとのご縁は、さらに先へと延びていきます。
なんとなんと、デビュー41年めにして初めて挑戦される、船越さんの舞台・明治座創業150周年記念作品『赤ひげ』の主題歌を、このわたしが、坂本冬美が歌わせていただけることになったのです。
ーー嬉しい?
もちろんです。でもそれ以上に、わたしのか細い(?)両肩には、重圧がのしかかっていました。
忘れもしません。あれは、猪俣公章先生の内弟子になることが決まり、単身、東京に出て行く直前のことです。
「明日、大阪の舞台を観に行くから出てこないか?」
先生は気軽におっしゃいましたが、舞台というのは、蜷川幸雄先生演出、平幹二朗さん、太地喜和子さん主演の『近松心中物語 それは恋』でした。
先生と待ち合わせをして劇場に着いたのが、今まさに大エンディングを迎えようとしているそのときで、扉を開けるなりわたしの目に飛び込んできたのは、天井から降り注ぐ真っ白な紙吹雪の中、平さんと太地さんの恋の道行です。
その圧倒的な美しさに目を奪われたその瞬間、耳に飛び込んできたのが、森進一先輩の歌声……猪俣先生が、この舞台のために作られた『それは恋』でした。
観る者の、聴く者の心を揺さぶる魂の歌。言葉では言い尽くせない感動と衝撃。それが、わたしが想う舞台の主題歌です。
それを……わたしが歌う?
どうしよう? どうしよう? どうしよう?
練習に練習を重ね、いざ本番。録り終えた歌を聴いてくださった、蜷川先生のお弟子さんで演出家の石丸さち子さんからは、「いい歌を歌っていただきました」とお褒めの言葉をいただき、船越さんからは、「ライバルは坂本冬美の歌です」と言っていただきましたが、それでも、やっぱり不安です。
皆さんも心配になりますよね。でも大丈夫。 “Don’t worry.” 安心してください(笑)。船越さんをはじめとする演者さんの心が伝わってくる素晴らしい舞台で、観終わったわたしは、涙、涙、また涙。しばらく席を立つことができませんでした。
観たい! という方は、大阪・新歌舞伎座(12月14日~16日)に足をお運びください。
今年いちばんの感動が待っています!
さかもとふゆみ
1967 年3月30日生まれ 和歌山県出身『祝い酒』『夜桜お七』『また君に恋してる』『ブッダのように私は死んだ』など幅広いジャンルの代表曲を持つ。現在、著書『坂本冬美のモゴモゴモゴ』(小社刊)が発売中!
写真・中村 功
取材&文・工藤 晋