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木南晴夏『セクシー田中さん』ラブコメなのに「恋愛至上主義」を否定した最終話が素晴らしすぎた【ネタバレあり】

エンタメ・アイドル 投稿日:2023.12.25 16:10FLASH編集部

木南晴夏『セクシー田中さん』ラブコメなのに「恋愛至上主義」を否定した最終話が素晴らしすぎた【ネタバレあり】

ドラマ『セクシー田中さん』で主演を務めた木南晴夏

 

 木南晴夏がGP帯の連ドラ初主演を飾り、12月24日に最終話(第10話)を迎えた『セクシー田中さん』(日本テレビ系)。

 

「ラブコメディー」でありながら、主人公が「恋愛至上主義」を否定するような選択をしたが、それが非常に納得できる決断となっていた。

 

 主人公・田中京子(木南)は、いわゆる陰キャなアラフォーOL。これまでに一度も友達も恋人もできたことがなく、社内では変人扱いされて浮いていたが、夜はエキゾチックなベリーダンスを踊るダンサー・Saliに変身する。

 

 

 準主役は、田中の後輩の派遣OL・倉橋朱里(生見愛瑠)。表向きはコミュ力が高い愛され女子だが、若くてかわいいことしか自分に価値はないと思い込んでおり、合コンに明け暮れていた。そんなとき、たまたま訪れたペルシャレストランでSaliのダンスを見て感激する。

 

 その後、実はSaliの正体が田中だと気付いた朱里は一気にファンになり、2人は友情を深めていく。

 

 そして、田中と恋愛展開になるのは、全女性を愛するというペルシャレストラン店主・三好(安田顕)と、堅物で口の悪い商社マン・笙野(毎熊克哉)。最終話は、田中が2人のうちのどちらかを選ぶのか? といった恋愛の “着地点” に注目が集まっていた。

 

■【ネタバレあり】主人公・田中の恋愛の “着地点”は?

 

 田中はベリーダンスを始めたころから三好に憧れており、ずっと片想いしていた相手。第9話ではそんな彼から、「俺が思うよりずっと強くてパワフルで、やっぱり大人で。しかも、最近ますますきれいになった」と口説かれ、キスされそうになる。

 

 しかし、唇が触れる直前、田中の脳裏に笙野との思い出がよぎり、思わず三好を突き飛ばしてしまうのだった。

 

 一方の笙野は、大病を患った母親の「孫の顔が見たい」という願望を知り、お見合いで出会った年下女性と結婚前提で交際開始。けれど、最終話で自分の気持ちが田中にあると気付き、交際相手と別れたうえで田中の前に現れる。

 

 さて、ラブコメディーのセオリーに当てはめれば、この流れはどう考えても、田中と笙野のカップルが成立してハッピーエンドになるフラグに思えるだろう。

 

 結論を言うと、その固定観念は打破されることになる。

 

 すでに田中はダンスで海外留学することを決断しており、笙野は想いを伝えられないまま離れ離れに。エンディングは2年後となり、留学を終えて帰国した田中が笙野らと再会するが、そこでも2人が言葉を交わすシーンは描かれなかった。

 

 つまり、本作のジャンルは「ラブコメディー」なので恋愛を主題としているわけだが、主人公が誰かを選んだり、誰かと引っ付いたりすることなく、恋愛よりも自分の生き様を貫くという着地点だったわけだ。

 

 さて、筆者は恋愛コラムニスト・カウンセラーとして活動しているが、このラストは素晴らしいと感じた。

 

 恋愛はとても素敵なことだし、愛する人と一緒にいる時間は尊いけれど、恋愛はしなくてはいけないものではない。愛する人を最優先にしなくてはいけないわけでもない。

 

 なによりもプライオリティーを高くすべき考え方は、“自分の人生” を自分が納得・満足できるかどうか。

 

 自分のポリシーややりたいことを貫く前提で “道” を選び、その “道” を進みながら愛し合えるパートナーと出会えたなら、思いきり恋愛をしたほうがいいが、恋愛をすることでその “道” を歩めなくなるなら、しなくていいと思っている。

 

 まさにその考え方を劇中の田中が体現していた。この作品は、決して「恋愛」自体を否定したわけではないものの、「恋愛至上主義」は明確に否定したのである。

 

■実は劇中でブレイクスルーした朱里と笙野の成長物語

 

 最終話まで観終えて、もうひとつ気付いたことがあった。

 

 それは、このドラマは朱里と笙野の成長物語だった、ということ。

 

 主人公である田中も劇中で成長を見せるが、彼女の人生最大のブレイクスルーな出来事はベリーダンスを始めたことなので、実は物語スタート時点である程度、成長済みの状態だったと言える。

 

 けれど、朱里と笙野は劇中での田中との出会いにより、行き詰っていた人生の壁をブレイクスルーする姿が描かれていった。

 

 朱里は自分に価値がないと思い込み、“愛され女子” を演じるために全方位に対してヘラヘラして本心を隠して生きていた。そんな彼女が、他者(田中)のためなら思いきり怒りをぶつけることができるようになったり、やりたいことをどんどん見つけて自分を好きになっていったりした。

 

 笙野は当初、露出の多いダンサー衣装の田中を見て、「あんたいくつだよ、オバサンが」なんて暴言を平気で吐けるような無神経な男だった。そんな彼が、田中と接してリスペクトすることで変わっていき、第9話の時点で交際相手から「自由で、寛容で、女性に理解があって」と称賛されるまで成長したのである。

 

 要するに、劇中の田中の成長は“1”から“2”のようなものだが、朱里と笙野は“0”から“1”になる姿が描かれたわけだ。

 

 笙野は婚約破棄してまで田中に気持ちを伝えようとしていたが、叶わなかった。ただ、田中、朱里、笙野の三者はお互いにいい影響を与え合い、支え合うという、かけがえのない関係性を構築していたと思う。

 

 カップル成立とはならなかったが、田中にとっても笙野にとっても幸せなエンディングになっており、いい余韻を感じられる最終話だった。

堺屋大地

恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。『日刊SPA!』に恋愛コラムを連載中。ほに『現代ビジネス』『文春オンライン』『集英社オンライン』『女子SPA!』などにコラムを寄稿

( SmartFLASH )

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