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小川直也(55)超難関「宅建」合格!…合格ラインまで「あと10点」からの4年間

エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2024.03.29 06:00 最終更新日:2024.03.29 06:00

小川直也(55)超難関「宅建」合格!…合格ラインまで「あと10点」からの4年間

小川直也

 

 2023年11月21日、午前9時30分。宅地建物取引士の試験の合格者が、ネット上で公開された。受験者23万3276人に対し、合格者は4万25人。合格率は17.2%――。

 

 そこに、かつて “暴走王” として名を馳せ、1992年のバルセロナ五輪で銀メダルを獲得した柔道家の小川直也(55)の受験番号が掲載されていた。小川は、すぐさまスマホに表示されたその番号をスクショし、妻や子供たちに送りつけていた。

 

 

「やった! というより、ホッとしたというのが本音。喜びはあとから、ジワッとやってきました。そして、4年ぶん溜まっていた宅建の参考書を1年ぶんだけ残して、あとは捨てました。やっと解放された感じがしましたね」

 

 2019年11月、小川が道場長を務める「小川道場」(神奈川県茅ヶ崎市)に、同級生の柔道指導員が、ガッツポーズをしながら現われた。

 

「『宅建受かりました!』ってすごく嬉しそうに喜んでいたんです。彼はサラリーマンだけど、仕事の合間に勉強をして合格したと。それで思い出したんだけど、俺の父親は57歳で宅建の資格を取って、不動産業をやることになったんですよね。じゃあ、俺も受けてみようかと。当時、コロナ禍でいろいろと考えることもあって、時間もあるし、やってみようと思ったんです」

 

 受験は、高校以来だ。まずは、市販されている参考書を購入した。「宅建業法」「権利」「法令」とあり、辞書のようにやたらと分厚い。ページをめくるだけでやる気が削がれそうになった。

 

「参考書を読んでいるだけではわからないので、手当たり次第にYouTubeにある宅建試験の対策動画を見ました。合格した同級生から『過去問をやれば通る』とアドバイスされていたので、ネットで無料のものをダウンロードして、過去問ばかり解いていました」

 

 平日は、朝6時に起きて30分から1時間、休日は5~6時間、勉強に勤しんだ。

 

 宅建の試験は年に1回、10月の第3日曜日と決まっている。小川が受験を決意したのは2020年の5月だった。

 

「あとでわかったんですけど、そこから勉強しても、もう間に合わないんです。合格するには、通常トータルで300時間の勉強が必要だといわれていて、その時点で、どう考えても受かるはずがない。

 

 でも、実際に試験を受けてみたら、50点満点で25点取れちゃって。合格ラインまであと10点ほど。『なんだ、もうちょっとじゃん』って思っちゃった。俺、いけるぞ! って」

 

 令和5年度の合格判定基準は、50問中36問以上。この10点ほどの差を埋めることがどんなに大変か、小川はあとになって思い知ることになる。

 

 初めて挑んだ試験に惨敗した小川は、父親に相談した。

 

「父親は専門学校へ通って合格したから、『ちゃんと学校で学んだほうがいい。ただ、授業を受けたあと、しっかり理解できるまで帰してくれない』とも言われて。それだと俺は無理。道場の仕事を押しのけてまではやれない。隙間時間だけで勉強すると決めていたので、YouTubeで学べる宅建の塾に入ることにしました」

 

 その受講料が年間8万8000円。お金を振り込んだからには、後に引けない。

 

「塾から参考書と過去問が、ドカッと届きました。これ、ほんとにやるんですか? っていうハンパない量で。過去問を解いて参考書を読む、というスタイルは変えずにやってみることにしました。このころはまだ、『あと10点ほどで合格できる』と思っているから(笑)」

 

 2年めも不合格だった。自己採点で合格ラインをクリアしていないのがわかっていたので、HPで番号の確認すらしなかった。また、塾の受講料を年払いで支払った。

 

「宅建がいかに難しいかというのが、だんだんとわかってきて、これまでの過去問中心のやり方ではダメだと気づきました。『宅建業法』は全部で20問あって、満点近く取らないと基本的に受からないとか、民法はほとんど点が取れていないとか。自己分析をすることで、対処法がわかってくる。専門学校に3年通ったと思えばいいだろうと、自分に言い聞かせました」

 

 本気で挑んだ3年めの自己採点は31点。またも合格ラインには遠く及ばなかった。

 

「心が半分折れました。かみさんに、『もう無理かも』と泣き言を言ったこともあります。べつに、宅建取らなきゃ生活に困るとか、そんなんじゃないし、挑戦し続けることに意味があるんじゃないか、とか。自分に甘えがあったのはたしかです」

 

 合格ラインまであと5~6点足りなかった。

 

「1点の重みを理解した、というか。1点増やすのが大変だし、1点合格ラインに届かなくて落ちる人がたくさんいる。俺は5~6点も足りなかった。もうやめようかな、と悩んでいたら、妻や子供たちが、『頑張ってやろうよ!』と、背中を押してくれたんです」

 

 決意を新たに、3回めとなる受講料を支払った。

 

「今までと同じやり方ではダメだと思って、勉強法を根本から変えました。一から参考書を繰り返し読んで、一から講義も聞き直して、隙間時間があれば、スマホで『宅建クイズ』をやっていました。苦手にしていた民法も覚えて、4回めの試験を受けました」

 

 試験は2時間で終わった。驚いたことに、塾のテキストに載っていた問題が50問並んでいた。小川には「やりきった」という思いがあった。受かった、落ちた、というようなドキドキ感はなく、ただ、持てるすべての力を出し切ったという達成感があった。

 

「帰宅してから自己採点をしてみたら37点ありました。史上最高に出来た! という手応えがあって、俺、今回はいけちゃうかもって。近くの神社に行って『37点以上ありますように』と願掛けしました」

 

 小川は4年めにして初めて、合格発表する不動産適正取引推進機構のHPにアクセスした。そして、見事、難関をクリアした。

 

「俺の世代になると、高揚感とか達成感を得られる機会が少なくなっていくんです。その点、宅建は自分自身との戦いで、もちろん、落ちると喪失感があるけど、でも、自分がプレーヤーでいられる。そこに価値があると思うんです。将来的に不動産王? それはどうかな。わからないな(笑)」

 

おがわなおや
1968年3月31日生まれ 東京都出身 高校時代から柔道を始め、全日本柔道選手権5連覇など数々の実績を残す。1997年、プロの格闘家に転身。新日本プロレス、UFO、ZERO-ONEなどに参戦。2018年、現役引退。2006年、小川道場を開設。後進の指導にあたっている

 

写真・木村哲夫、後藤克佳

( 週刊FLASH 2024年4月9日号 )

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