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澤田知可子『会いたい』大ヒットで『紅白』出場の夢を実現…歌詞と自身の実体験にあった“偶然の一致”

エンタメ・アイドル 投稿日:2024.04.26 06:00FLASH編集部

 知可子は、沢から届いた『会いたい』の歌詞を手にして驚いた。「バスケット」や、「あなた」が「死んでしまったの」。自らの体験と重なるものだった。そして、偶然の一致だったが、自らの思い出がよみがえり、先輩の笑顔が頭をよぎった。目頭が熱くなり、気持ちが沈んでいく。

 

「私、人が死んじゃう歌は、歌いたくない……」

 

 歌入れの最終日。ここで知可子が泣いてしまったら、歌入れそのものが難しくなってしまう。そう考えた岩永は、あわてて知可子をマイクの前に立たせた。

 

「もう時間がないから、仮歌を歌ってみよう」

 

「うーん、もう1回、練習しとこう」

 

「はい。お疲れさま。もう録れたから帰っていいよ」

 

 一見、不可解な岩永の発言と行動には意味があった。

 

「私が亡くなった先輩を思い出して、歌が重くならないように、『仮歌』『練習』と言って歌わせていたんです」

 

 岩永にとって『会いたい』は特別な歌だった。西麻布の交差点近くのカフェで、沢と詞の打ち合わせをした。岩永がコンセプトを説明すると、沢は顔を曇らせた。

 

「人が死ぬ歌を、私が書くの?」

 

 岩永は自分なりの答えを沢に伝えた。

 

「人が究極に『会いたい』と心から願うのは、どんなに願っても会えない人。だから、亡くなった人に『会いたい』と願う歌を書いてほしい」

 

 沢と岩永は計38回、歌詞の修正を繰り返して完成させた。曲は岩永が学生のころから敬愛しているチューリップの財津和夫、アレンジは岩永のチームに欠かせない芳野。詞、曲、アレンジ、すべての出来に満足していた。

 

 岩永はレコーディングの最後の作業を終えると、愛車を走らせてお台場へ向かった。夜が明けるころ、海が見える場所に車を停めた。カーステレオに、30分前に完成した『会いたい』のカセットテープを入れた。

 

「やった! やっとできた!」

 

この歌は、必ず、大ヒットする――。自信は確信に変わった。

 

 岩永は、会社にあった音源を一度に10本ダビングできる機械を使って、『会いたい』のプロモーション用のカセットを1500本作った。その大半は、自宅近くの団地やマンション、一軒家の郵便受けに、岩永が投函してまわった。

 

「何を感じたか、感想をください」と手紙を添えた。

 

 だが、反響といえば、会社に「すごく感動しました」というFAXが計3通届いただけだった。それでも岩永は、その3通に勇気をもらった。

( 週刊FLASH 2024年5月7日・14日合併号 )

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