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自分の意志で食欲はコントロールできない!ダイエットすると太る4つの理由

ライフ・マネー 投稿日:2021.08.03 16:00FLASH編集部

自分の意志で食欲はコントロールできない!ダイエットすると太る4つの理由

 

 ミネソタ大学のニューマーク‐ステイナー博士が、ミネアポリス近郊の中高生1902人を10年間にわたって追跡調査した結果は、「ダイエットすると太る」というものでした。

 

 この調査では、ダイエット(体重を減らすために食べ方を変えること)と、不健康な体重コントロール(絶食、ほんの少ししか食べない、ダイエット食品やダイエットドリンクの使用、食事を抜かす、より多く喫煙する、ダイエットピルの使用、嘔吐する、下剤の使用、利尿剤の使用)を分けていましたが、どれも続けるとBMIが上昇、すなわち太るのです。

 

 

 では、いったいなぜ、ダイエットすると太るのでしょうか? ニューマーク‐ステイナー博士は、その理由として、以下の4点を挙げています。

 

(1)ダイエットが、ごく短期間の行動であること。

 

 バランスのとれた体、あるいは適正体重になるには、規則正しい生活を心がけ、毎日朝食を摂り、野菜や果物をしっかり食べ、運動を続けるといった、地道で長期的なライフスタイル変更が必要であるのに、性急に結果を求める。

 

(2)「ダイエッティングサイクル」に、はまり込んでしまうこと。

 

「ほんの少ししか食べない」「食事を抜かす」といった無理なダイエットによって飢餓状態に陥り、強い空腹感に苛まれて耐えきれずに食べ、食べ始めると食べすぎてしまう。すると今度は「ダイエットに失敗した」と意気消沈し、再び無理なダイエットに励む。このような負のサイクルが生じ、抜け出せなくなる。

 

(3)食欲をコントロールできなくなること。

 

 自然に感じる空腹と満腹のサイン(生理的コントロール)に従わず、意志によって食欲を抑え付けていると、食べ物を口にしたとたん止まらなくなるなど、かえって食欲をコントロールできなくなる。

 

(4)太りやすい体質になること。

 

 ダイエットによって摂取カロリーが低下すると、体は代謝を低下させて、少ないエネルギーで生命を維持しようとする。すると、エネルギー消費量が減って、太りやすくなる。さらに、ダイエットをすると脂肪細胞の数が増える。

 

(1)と(2)は、短期間で目に見える成果をあげようとして、「食事を抜かす」など無理なダイエットをし、その結果ダイエッティングサイクルにはまり込み、再び短期間の無理なダイエットをするという、表裏一体の関係にあります。

 

「ダイエット」の本質は、いわば命知らずの突撃行為であり、穏やかな長期戦である「ライフスタイル変更」とは、似て非なるものなのです。

 

(3)食欲のコントロールができなくなることと、(4)太りやすい体質になることは、ダイエッティングサイクルにはまり込む原因でもあり結果でもあります。

 

 そして、この2点こそが、「ダイエットすると太る」というパラドックスの、謎を解く鍵でもあります。

 

 では、「食欲のコントロールができなくなる」「太りやすい体質になる」とは、どのようなことなのでしょうか? そのメカニズムを、最新の医学データに基づいて見ていくことにしましょう。

 

■意志で食欲をコントロールすることはできない

 

 食欲は、それがなければ生命を維持できない、最も重要な欲求の一つです。それにもかかわらず、「食べたい」という欲求を、私たちは意志で抑え込み、体重を減らそうとします。「人には意志の力があるのだから、できるはずだ」と。実際に、少しの間であれば、意志の力で生理的欲求に打ち勝つことができます。

 

 しかし、睡眠不足が何日も続けば頭が朦朧としてきて、ある瞬間にガクンと眠りに落ちてしまうように、ほんの少ししか食べない状態が何日も続けば、ある瞬間に食べ物を口にしたとたん止まらなくなってしまう、ということが起こります。

 

 この「ダイエットによって脱抑制に陥る」、言い換えれば「食欲をコントロールしようとすることで、かえって食欲をコントロールできなくなる」ことは、トロント大学(カナダ)名誉教授のジャネット・ポリヴィ博士と、同大学名誉教授のC・ピーター・ハーマンが1985年に発表して以来、多くの研究がなされてきました。

 

 生理的な空腹・満腹のサインに従わず、意志によって食欲をコントロールしようとすると、体に備わった正常なコントロール機能がうまく働かなくなってしまうこと、そして摂食障害を発症するリスクが高まることがわかってきたのです。

 

 空腹感と満腹感、あるいは摂食行動の促進と抑制には、グレリン、インスリン、レプチンなどが大きな役割を果たしています。

 

 グレリンが放出されると、私たちは空腹を感じ、エネルギーを摂取しようとします。目の前に食べ物があればそれを食べ、なければ戸棚や冷蔵庫をあさったり、コンビニに買いに行ったりして何か食べます。

 

 また、グレリンは食事時の前に分泌量が増え、その後分泌量が減ることによって、摂食のタイミングをコントロールしています。ダイエットによって食事が不規則になると、グレリン分泌のリズムが崩れて、空腹感と満腹感がうまく調節できなくなります。

 

 インスリンは血糖値が高くなると放出され、血糖を肝臓や筋肉などの細胞内に取り込み、貯蔵したりエネルギーとして利用したりします。血糖値を安定させるように働くのですが、空腹時に大量にお菓子やご飯を食べたりすると、一気に放出されて血糖値を下げすぎてしまいます。すると、食べたばかりなのにまたおなかが空いて、さらに何か食べることになります。

 

 レプチンは満腹感を生じさせて摂食行動を抑制しますが、その働きは脆弱で、太ると大量に放出されるにもかかわらず、効きが悪くなります。満腹感がなかなか得られず、脂肪を燃やしてエネルギーに変える働きも低下するのです。

 

 その一方で、やせて脂肪組織が少なくなると、レプチンの分泌量も減り、満腹感が得られにくくなります。コントロールを失って食べ続けた結果、肥満し、さらに満腹感が得られにくくなり、脂肪を燃やす働きも低下するという、負の連鎖に入り込んでしまうのです。

 

 これが、ダイエットすると太る理由なのです。

 

 

 以上、永田利彦氏の新刊『ダイエットをしたら太ります。~最新医学データが示す不都合な真実~』(光文社新書)をもとに再構成しました。摂食障害が専門の精神科医が、エビデンスに基づき、過剰な「やせ礼賛」文化を斬る!

 

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