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樺沢紫苑の『読む!エナジードリンク』忙しい人ほど効果がある「15分スキマ時間術」
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2022.09.12 16:00 最終更新日:2022.09.12 16:00
先日、友人たち数人と小旅行をしました。いくつか急ぎの仕事を抱えてのものだったので、電車移動の間の15分でメルマガを書き終え、その後のバス移動の間にも15分で原稿のチェックを済ませました。
私がスキマ時間を利用して仕事をしているのを見て、友人たちは驚きましたが、それは私にとってはいつものことです。
拙著『精神科医が教える 毎日を楽しめる人の考え方』(きずな出版)では、「もっと積極的に遊ぼう! もっと遊び、楽しむための時間を増やそう!」と提唱していますが、「そんな時間がありません」という反論が返ってくることがあります。
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あるいは、拙著『学び効率が最大化するインプット大全』(サンクチュアリ出版)の中では、「自己投資のために読書は不可欠。もっと読書をしよう」と提唱していますが、「そんな時間がありません」と、やはり同様の反論が返ってくることがあります。
しかし、どんなに忙しい人でも、15分程度のスキマ時間であれば、一日に何回かはとれるはずです。この15分のスキマ時間を活用できれば、あなたの人生は格段に充実したものになるのです。そこで今回は「15分スキマ時間術」について解説しましょう。
■集中力の限界は何分?
集中力を高めて効率よく仕事がしたいと思う人は多いでしょう。では、集中力が持続する時間は何分くらいでしょうか?
同時通訳者が集中して通訳できる時間は15分が限界といわれます。実際、テレビで同時通訳の光景を見ていると、15分たたないうちに、別の通訳者と交代しています。
オートメーションのラインにゴミが入っていないかを確認するような監視作業を、ヴィジランス作業といいます。ヴィジランス作業では、環境の変化が少ないと、20分ぐらいで刺激に対する作業者の集中力が低下する「20分効果」が知られています。
これらのような15分あるいは20分を区切りや単位とする考え方はさまざまなところで見られ、たとえばクラシック音楽は、15分から20分ごとに楽章が分かれていて、その間に小休止が入る構成で作られているものが多くあります。あるいは、アニメなど、30分枠のテレビ番組は、オープニングとエンディング、途中のCMを除くと、だいたい20分から22分で作られています。
15~20分を超えると集中力が低下するというデータが多く見られることから、私は『神・時間術』(大和書房)で、「集中力の最小単位は15分」という仮説を提案しました。
■勉強は「15分集中して5分休憩」
『神・時間術』を出版した2017年当時は、その仮説を裏付けるデータを見つけられなかったのですが、最近、裏付けになるかもしれないデータが発表されていたので紹介しましょう。テレビの情報番組のコメンテーターでも有名な、東京大学・池谷裕二教授の実験です。
中学1年生29名を「15分×3学習(計45分、15分勉強するごとに5分休憩)」グループと「60分学習」グループに分け、それぞれに英単語を学習させて、当日、翌日、1週間後の3回、テストをおこないました。
その結果はというと、学習直後の当日は「60分学習」グループの成績のほうがよかったものの、翌日には「15分×3学習」グループの成績が追い抜き、1週間後にはさらに両者の差が広がったのです。
15分勉強して5分休憩する「15分×3学習」グループは、「60分学習」グループと比べ、トータルで学習時間が15分短いにもかかわらず、翌日以降成績がよくなった。これは、より効率的に学習できた、ということを意味しています。
この研究では、学習中に被験者の脳波を計測し、集中力を示す「ガンマ波」の出現率を調べました。すると、「15分×3学習」グループでは、5分の休憩により集中力の回復が見られましたが、「60分学習」グループでは集中力が時間とともに低下し、40分後には著しい低下が認められたのです。
これらの実験結果は、「15分集中して5分休憩する」のが勉強法として有効であることを示しています。そして「集中力の最小単位は15分」という私の仮説とも合致するものです。