ライフ・マネーライフ・マネー

看板娘歴60年、名物は油揚げ!地元民に愛される「奇跡のスーパー」&「伝説の逸品」<中国・四国編>

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2022.12.11 06:00 最終更新日:2022.12.11 06:00

看板娘歴60年、名物は油揚げ!地元民に愛される「奇跡のスーパー」&「伝説の逸品」<中国・四国編>

巨大な油揚げと元気な女将(歩危マート/徳島県・三好市)

 

 全国旅行支援が年明けから再始動へ。最新トレンドは土産店より「旅先スーパー」!山奥の個人店から “県民御用達” ローカルチェーンまで、スーパーマーケット研究家の菅原佳己さんに中国四国の名店を聞いた。

 

●<トスク本店/鳥取県・鳥取市>

 

 県東部に9店舗。JA鳥取いなばのグループ会社で、取扱品は農畜産物や農産加工品が中心。夏には梨の進物受注で賑わうのが恒例だ。トスク本店は鳥取駅から徒歩圏内だが、市が運行する100円の循環バスが、同店前に停まる。定番のとうふちくわ(ちむら)、白バラ牛乳(大山乳業)の関連商品が、地元ならではの大量陳列で並ぶ。

 

 

●<天満屋ハピーズ岡輝店/岡山県・岡山市>

 

岡山随一のスーパーチェーン・天満屋ストア50店舗のうち、食品に特化した業態がハピーズだ。自家製惣菜のレンコンのコロッケは、県産レンコンの歯ごたえが魅力で、ファンが多い。岡輝店には、岡山県民のソウルフード・桜あんぱんやバナナクリームロールで有名な「岡山木村屋」が出店し(天満屋ハピーズ円山店にも出店)、名物を一挙買いできる。

 

●<フードグランニチエー EKI CITY 広島店/広島県・広島市>

 

 県内11店舗あるニチエーのなかで、こちらは広島駅から徒歩1分、蔦屋家電の奥のコンパクトな空間に、県内外の厳選品を集めた店舗だ。SIROの焼き菓子、ビストロボントレのスイートオニオンドレッシング、運がよければ、三原市の行列店のまえだの塩そばにも巡り会える。同フロアのラウンジで、蔦屋で買った本とご当地飲料を楽しむのもいい。

 

●<みしまや東川津店/島根県・松江市>

 

◎「みしまや」の産直は野菜や果物のほか、漁師が鮮魚まで持ち込む

 

パン、菓子店として松江に創業し、108年。県内13店舗のなかでも新しいタイプの同店の特長は、「JAグリーンかわつ」とタイアップした産直市場だ。地産地消に力を入れ、野菜や果物はもちろん、なんと地元の漁師が鮮魚まで持ち込む。

 

 歴史を感じる商品も多い。江戸時代初期に、出雲地方に広まったとされる出雲そばは、各社各種の品を取り揃える。築100年超の蔵で木桶仕込みの醤油を醸す垣崎醤油店の白ねぎドレッシングも美味。一方で、地元で栽培した伝統の生姜を使い出雲の神社を応援する出雲生姜じんじゃエール(出雲生姜屋)など、古くて新しい味も見つかる。オリジナルのみしまやキムチ(吉田屋)は、山陰ののどぐろの魚醤入りで、旨み倍増だ。

 

●<これはおいしいアッハッハ/山口県・山口市>

 

 4代続く地域のよろずやが、酒のディスカウント店に転換し、大盛況。今では、地元・澄川酒造場の東洋美人をはじめ、全国の酒の品揃えで一目置かれているスーパーだ。「三方が海の山口では、新鮮魚介は当たり前」と、カルスト台地で育つ秋吉台高原牛を一頭買い。半端な部位で作る自家製干し肉は不定期販売だけに、買えればラッキー。

 

●<フジグラン松山/愛媛県・松山市>

 

 四国・中国地方にショッピングセンターと食品スーパーを103店舗展開するフジのなかで、まず訪れたいのはここ。松山駅から徒歩5分、本部ビルと同じ敷地にある “旗艦店” だ。生鮮食品、惣菜、和菓子に地元の味が詰まっている。12月は例年、地元産の柑橘類が地方発送セールで、人気の紅まどんなや真穴みかんを箱買いできる。

 

●<マルヨシセンター茜町店/香川県・高松市>

 

 県内中心に34店舗を展開。「原料調達から販売まで」を実現する自社生産工場を持ち、PB「オリジナルBOX」名で、讃岐うどんの製法を再現した各種うどんや、だし、サイドメニューの定番特上天ぷらなどを各店で販売。自家製の国産親どりモモガーリックは、うどんに迫るご当地食である骨付鳥を、食べやすい惣菜にしたヒット商品だ。

 

●<末広ショッピングセンター本店/高知県・土佐町>

 

 高知市内から車で1時間、ゆずの産地で知られる山の中に2店舗構えるスーパー。こんにゃくの煮物や山菜を具にした郷土料理である自家製の田舎寿司や、オリジナルのすえひろおばちゃんのはいからケーキ(ゆず)にも、地元のゆずが香る。無農薬、有機肥料で同社の相談役が育てる自家栽培米の藁を使い、自社で藁焼きする鰹のタタキは薫りがよく香ばしい。

 

●<歩危(ぼけ)マート/徳島県・三好市>

 

 名勝の大歩危、小歩危や「祖谷(いや)のかずら橋」で知られる奥祖谷の玄関口、大歩危駅前から始まる急峻な坂道に向かい合う1号店と2号店。元気な声が聞こえたなら、それが「20歳で嫁に来て、看板娘歴60年」という女将だ。

 

 1号店には、近隣の生産者から届く地場の野菜や名産品の祖谷こんにゃくや祖谷そばなどが並ぶ。なかでも巨大な油揚げは、同店オリジナルの名物、ぼけあげ。そして山の中にある豆腐店が作る祖谷とうふは、 “岩豆腐” とも呼ばれる伝統食。昔は豆腐を縄でなって山道を運んだと、女将は投げても崩れない様子を見せることもある。

 

 2号店ではそれらの調理品を味わえる。とくに、名物がひと通り入った特製のぼけ祖谷汁は、そば粉やゆず酢で味変が楽しめる。

 

 菅原さんの研究家への道を開いたのは、「せみ餃子」との出会いだーー。(以下、菅原さん)

 

 きっかけは約30年前。夫の転勤で、東京を離れて暮らした愛知で見た光景でした。

 

 後にこれこそが “ご当地感” だとわかったのですが、関東人好みの醤油せんべいは1種類のみ、あとは通路一列、全面がえびせんべいだったのです。

 

 同じころ、旅先で手にした「せみ餃子」。関西人なら誰もが知る商品でも、当時「せみ」の由来は知られていませんでした。

 

 そこで京都のメーカーに問い合わせてみると「うちー、珉珉(みんみん)食品いいますねん」。このときの「こんなおもしろい話、みんなに教えなきゃ!」という思いが、 “スーパーマーケット研究家” となるきっかけでした。

 

 現在までに、47都道府県、800店以上のスーパーを訪ねました。そして新聞や雑誌、テレビなどを通して、全国のスーパーや、そこで買える地元食の魅力を発信しています。

 

 財布の紐が堅くなる昨今ですが、各店の弁当、惣菜のレベルアップはすさまじく、「スーパーの惣菜でごめんね」の時代から、今では「あのスーパーの○○が食べたい」と、その地域の押しも押されもせぬ名物になっています。

 

 私のように、わざわざ遠くのスーパーを訪れるファンは少なくありません。

 

 たとえば、スズキヤ(神奈川)のお茶漬けも楽しめる「鮭と彩り野菜の茶々のり弁」や、主婦の店さいち(宮城)の、毎日、町の人口を上回る数が売れる「おはぎ」。そんな名物を手にしたときの喜びは、地元の人以上かも。

 

菅原佳己
スーパーマーケット研究家。執筆やテレビ出演、講演活動をこなしながら、自腹で全国のご当地スーパーを行脚。日常食を発掘し、魅力を伝えている。「朝日新聞」の『be』(土曜別刷り)で「お宝発見 ご当地食」を連載中。新刊に『47都道府県 日本全国地元食図鑑』(平凡社)

 

※今回紹介するご当地商品には、限定品や季節限定品など、現在は店頭にないものも一部含まれます。スーパーの独自商品以外の特定の商品やブランドを紹介する場合、メーカー名を明記しています。価格は取材当時のものです。

 

写真・菅原佳己(一部、スーパー運営会社より提供)

( 週刊FLASH 2022年12月20日号 )

続きを見る

今、あなたにおすすめの記事

ライフ・マネー一覧をもっと見る