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樺沢紫苑の『読む!エナジードリンク』私が「大麻の解禁」に絶対反対する理由

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2023.02.13 06:00 最終更新日:2023.02.13 06:00

樺沢紫苑の『読む!エナジードリンク』私が「大麻の解禁」に絶対反対する理由

夜のカオサンロード

 

■(4)タイの物価は安くない

 

 昔からタイを訪れている日本人は、口をそろえて「最近はバーツが高くなった」と言います。現在の円とバーツの交換レートは「1バーツ=約4円」で、たとえば1000バーツであれば約4000円と計算できます。しかし、ひと昔前は「約3円」で計算していた。つまり、3割以上もバーツの価値が上がったのです。そのぶん、円が安くなっているわけです。

 

 経済産業省が昨年発表した「未来人材ビジョン」の中で、日本企業の部長職の平均年収がタイのそれを下回ることが明らかになりました。日本に住んでいると、「日本が衰退している」とリアルに実感することはありませんが、海外に出てみると、日本の状況は本当にヤバいと感じます。

 

 昨年末からの冬休みシーズンに関して言えば、日本からタイを訪れた観光客よりも、タイから日本を訪れた観光客のほうが多かったそうです。

 

 昔「タイは物価が安いから」と日本人が大挙して押し寄せていましたが、いまや世界中の人たちが「日本は物価が安いから」と言ってやって来る。日本は観光地としての人気が上がっていますが、それは「日本という国が魅力的になった」ということ以上に「なんでも安く買える」から。つまり、経済的に低く見られているとあらためて思うのです。

 

■(5)日本と中国の戦いは始まっている

 

 今回の旅行は、遊びではなくビジネス視察です。不動産業、水産業、自動車メーカー、塗料メーカー、木炭販売業、飲食業、健康用品販売業、人材紹介業、速読ファシリテーター、マスコミ関連などの職業で、タイを拠点に活躍する日本人と会い、タイの経済やビジネスの現状を教えてもらいました。

 

 話のなかで興味深かったのは、タイでの自動車売上のシェアについてです。現在、日本メーカーが優勢ですが、中国メーカーの電気自動車の普及にともない、ジリ貧の状態とのこと。

 

 数年以内に中国の大手自動車メーカー2社がタイに工場をつくることが決まっており、早晩日本のシェアが中国に抜かれるというのが、業界のほぼ確実な予想だそうです。

 

 ただ、中国メーカーと新規に契約を結ぶべく交渉している日本人によると「中国人は、中国語しか話さない」ということ。英語も話せるはずだけど、英語で話すと無視される。「我々と交渉したければ、中国語を話せ」という態度なのだそうです。だから、日本語、中国語、タイ語の3カ国語を話せる通訳を雇わないと、まったく話が進まないというのです。

 

 最近、台湾や尖閣諸島をめぐって日本と中国との間で軋轢(あつれき)が強まっています。そんななか、ビジネス、経済の分野においては、すでに日本と中国は世界各地で激しく火花を散らしている。日本と中国の「戦い」が始まっていることを実感しました。

 

■(6)大麻合法化の波紋

 

 2022年6月、タイで大麻が合法化されたため、バンコクの街では大麻マークの看板を掲げる店(大麻ショップ)をたくさん見かけました。大麻の合法化といっても、医療目的に限定され、娯楽目的での吸引は禁止されています。

 

 しかし現状としては、娯楽目的で吸引する人が大部分。法律上は、20歳未満の者や妊婦などへの販売は禁止されているものの、実際は未成年者の吸引もかなり広がっているのです。

 

 ドイツなどの世界各国で大麻解禁の動きがありますが、私は精神科医として解禁には大反対です。なぜならば、大麻を吸引すると統合失調症などの精神疾患の発症率が爆発的に増えるからです。大麻使用で精神疾患の発症リスクが3倍に、強い大麻を使用すると5倍にはね上がるというデータがあります。統合失調症発症リスクは5・2倍です。

 

 また、吸い始めの年齢が低いほど、精神疾患発症のリスク、脳への後遺症のリスクが高まります。

 

 大麻の吸引は「絶対ダメ」! 海外で吸えるからといって、おもしろ半分で体験するのも危険です。今後、タイでも精神疾患を新規に発症する人が急に増えてくるのではないかと懸念します。

 

 久しぶりの海外旅行&視察。4日間ですが、たくさんの人に会い、多くの情報をもらい、美味しいものもたくさん食べて、また私からもいろいろとアドバイスをして、インプットとアウトプットのサイクルを回すことができました。

 

 この気づきを、当連載や本の執筆、YouTubeの発信に活かしていきたいと思います。

 

かばさわ・しおん
樺沢心理学研究所代表。1965年、北海道札幌市生まれ。札幌医科大学医学部卒。YouTubeチャンネル「樺沢紫苑の樺チャンネル」やメルマガで、累計60万人以上に精神医学や心理学、脳科学の知識・情報をわかりやすく伝える、「日本一アウトプットする精神科医」として活動

 

イラスト・浜本ひろし

( 週刊FLASH 2023年2月21日号 )

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